平成9年度 宣言

市民のための情報公開…使いこなそう情報公開制度

1.行政情報は,主権者たる国民が国及び地方公共団体の行政に参加し,監視するために不可欠の要素であり,情報が十分に公開されている社会こそが民主主義社会と言いうる。
2.ところがわが国においては,すでに全ての都道府県で情報公開条例又は要綱が制定され,運用されているが,'惰報公開条例を制定している地方公共団体は,全国3,000余りのうち約1割に過ぎない。未だ条例を制定していない全ての地方公共団体は,早急に情報公開制度を導入すべきである。
3.すでに情報公開条例を制定している地方公共団体においても,制定以来の時間的経過を踏まえ,例えば議会や公安委員会,第三セクター等の情報を公開すること,何人に対しても公開請求権を認めること,文書に限らず磁気ディスク,光ディスク等新たな媒体に記録された情報の開示にも対応すること,文書管理の整備充実,救済手続の迅速化への工夫,手数料の低減等,改善すべき点も多くなっているので速やかに制度改正をすべきである。
4.国は情報公開法要綱案を作成し,平成9年度中の法制化にむけて検討中であるが,同要綱案には例えば次のような問題点がある。
(1)知る権利の明記がない
(2)特殊法人を除外している
(3)非開示理由が広範である
(4)応答拒否処分を広く認めている
(5)地方に裁判管轄を認めていない
したがって国は要綱案にとらわれることなく,真に国民の権利を保障する情報公開制度とすべく更に一層努力すべきである。
5.そこでわれわれは,以上のことを実現するために国民とともに関係方面に働きかけていく決意である。
 以上のとおり宣言する。
1997年(平成9年)9月19日
関東弁護士会連合会

提案理由
1.ジェームス・マディソンの有名な言葉「国民が情報を持たず,またそれを獲得する手段を持たぬ 国民の政治は,道化芝居の序幕か悲劇の序幕であり,或いはその双方以外の何ものでもない。」が示すように,行政情報が十分に公開されることは,主権者たる住民が地方公共団体の行政に参加するために不可欠の前提であり,民主主義杜会の根幹である。
2.我が国では昭和57年3月に山形県金山町で,同年10月に神奈川県で都道府県レベルで初めて情報公開条例が制定されて以来,今や全ての都道府県で情報公開条例または要綱が制定されるに至っているが,住民に最も身近な市町村まで見据えた場合,まだ自治体数において約1割強しか制度化されていない。したがって全ての地方公共団体は早急に情報公開制度を導入すべきである。
3.また既に制定されている惰報公開条例においても,様々な点で不備が指摘されて'いる。
(a)ほとんどの条例で議会や公安委員会,第三セクター等が実施機関とされていないが,何れも住 民に密接な関係を持つ組織であり,一律に公開対象から除外してしまうことに合理性はない。
(b)公開請求ができる者は住所や事業所を地方公共団体内に有するものに限定している条例がほとんどであるが,基本的人権たる「知る権利」によるものであることから何人に対しても公開請求権を認めるべきである。
(c)近年におけるコンピュータの活用等,電磁的・光学的・その他新たな技術を使用した行政情報の収集及び管理が進んでいる現実からすれば,未だ多くの地方公共団体が紙による文'書の公開に留まっている事態を改めるべきである。
(d)また我が国においては文書管理が不統一かつ不充分であり,住民が真に求める行政情報が果たしてどこに,どの様な形で存在するのかが容易には判明せず,更には安易な文書保存期限の短縮等を図れば情報公開制度を頭から否定する事態になってしまうことから,文書管理について整備充実を図るべきである。
(e)官官接待を明らかにした食糧費の文書公開請求をはじめ,ここ数年公開講求及び非公開処分に対する異議申立のケースが増加しているところ,ほとんどの地方公共団体で救済機関たる審議会の答申が遅れ,本来簡易迅速な救済制度である行政不服審査が機能不全に陥っている実態がある。したがって各地方公共団体は救済手続の迅速化へ向け十分な措置を講ずるべきである。
(f)更に,閲覧手数料を徴収する地方公共団体(東京都,静岡県,岡山県等)だけでなく,その他の地方公共団体においても謄写手数料を徴収しているが,これが制度の利用を事実上困難にしている。情報公開によって行政の無駄・不正が明らかになった現実のケースからしても,手数料を現状のように徴収する制度は改めるべきである。
以上の外にも条例改正を行うべき事項は多く,時代に即した真の公開制度とするべく地方公共団体は努力すべきである。
4.平成8年12月,行政改革委員会・情報公開部会は情報公開法要綱案を作成し,総理大臣に答申 を行った。政府はこれを受けて来年度での法制化に向けて検討中であり,国家公安委員会も実施機 関に入れたこと,対象文書から「決裁・供覧」という要件を外したこと,等評価すべき点もあるが同要綱案には例えば次のような問題点がある。
(1)知る権利の明記がない。
(2)特殊法人を除外している。
(3)非開示事由が広範である。
(4)応答拒否 処分を広く認めている。
(5)地方に裁判管轄を認めていない。
これ以外にも,公務員の個人情報公開にづいて一定の地位以上のものに限定していること等不十分 な点は多い。したがって国は要綱案にとらわれることなく,真に国氏の権利を保障する情報公開法 を制定すべく更に一層努力すべきである。
5.地方公共団体において官官接待,国においては動燃の核燃料事故,薬害エイズ等は,かつてないほど行政情報の公開が問われる時代となった。しかしながら今回の地方公共団体に対する調査を経て,惰報公開に関する予算が低額なこと,情報公開担当のスタッフが人数的にも地位の上でも十分でないこと等,現状では自治体が真に情報公開を推進する体制にないことも明らかとなった。われわれ弁護士は,充実した民主主義社会を実現するため,あるべき情報公開制度を求めて国民とともに関係方面に働きかけて行く決意を宣言するものである。