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平成14年度 | ![]() |
決議 |
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自然環境保全の視点から見るダム問題の解決について (ダムに代わる総合的水循環社会の実現に向けて) わが国では,かつては,ダム建設の主目的は電力開発であり,発電用ダムが国策事業として多数建設されてきたが,高度成長期前後からは都市工業地帯に工業用水・生活用水等を供給しつつ洪水調節を図るという治水・利水の両面を目的とする多目的ダムが多数建設されてきた。 他方,ダム建設事業により,河川の生態系・自然環境は回復不可能なダメージを受け,豊かな自然環境の中で平穏に暮していたダム建設予定地周辺の山村住民の生活も一変させられた。 また,公共事業としてのダム建設は,基本高水流量・水需要予測・堆砂量予測に基づき,市民の関与や監視の手続のないまま,いわば密室で計画され,実施されてきた。しかし,近年,これらの数値の多くが,治水ダムについては科学的根拠に乏しく,また利水ダムについてはミスマッチしたものであり,むしろダム建設自体を目的とし,ダム建設正当化の為にする数値であったことが,専門家による検討の結果明らかになってきている。 そうなると,公共事業としてのダム建設により,一方で税金を無駄遣いし,他方で河川の生態系・自然環境や生活環境を破壊するという二重の弊害が生じていることになる。 従前のダム建設事業では,河川の生態系・自然環境は,ともすれば等閑視され矮小化された価値しか認められていなかったが,ヒトは,良好な自然・生活環境と生物多様性のネットワーク中でしか生存していけないのであるから,河川の生態系・自然環境は開発利益よりも優先すべき公益として捉えるべきである。 そこで,われわれは次のように提言する。
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2002年(平成14年)9月27日 関東弁護士会連合会 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
提案理由 第1 関東弁護士会連合会(以下「関弁連」という)は,過去のシンポジウムにおいて,「飲み水の危機――あなたはこの水を飲めますか」(1991年),「水資源の今日的課題(ダム建設を検証する)」(1992年)等,水に関わる問題を環境保全の視点から論じてきた。 我が国では,戦前・戦後は産業の基盤である電力開発を目的としたダムが各地に建設されてきたが,火力発電が主流となると,利水機能と治水機能を組み合わせた所謂多目的ダムが全国各地に計画・建設され,各地でその弊害としてのダム問題を引き起こしてきた。 現在,関弁連管内の各地でもダム事業が多数進められているが,同時に,各地で自然生態系がダムにより破壊される等として,ダム建設反対の市民運動が起きている。 ダム問題は多角的な側面を有するが,関弁連は,(1)実体的問題の面(2)手続的問題の面(法制度や争訟を前提とした法的手続の面を含む)の2点からダム問題にアプローチし,ここに法制度の問題点の指摘・改善に関わる提言を行うものである。 第2 ダムに関する実体的問題
第3 手続的問題
第4 結論 上記の視点に加え,我々は,関弁連が過去に調査し資料等の情報を有している北欧諸国や外国の法制度とも比較参照しつつ,(ア)人口の減少・産業構造の変化・水需要の変化を見込んだ公共事業一般に通じる「逆開発の手法」を更に明確にし,(イ)今後のダム建設事業に対する歯止めとしての(a)ダム建設事業見直しの具体的な手続・実体法(b)節水法(条例)等の立法提言,(ウ)既に建設されたダムにより現実に失われた自然環境を回復するために,ダム撤去のプログラムについて具体的な提言,更には(エ)ダム問題に苦しむ市民に対して効果的な法的手段の採り方,弁護士へのアプローチ方法等について,助言,援助できる体制の構築などについても,今後さらに研究提言を続けることを決意して,この『決議』を行うものである。 以 上 |