平成17年度 決議

「大規模災害に備える」 我々の決議

 わが国は特有の自然環境を有し,地震,噴火,津波,台風などにより毎年のように各地で大きな被害が発生している。特に地震については,10年前の阪神・淡路大震災以後,新潟県中越地震,福岡県西方沖地震などが発生しており,その被害は甚大であった。
 関東弁護士会連合会管内においては,既発生の新潟県をはじめとして,東海地震の対象地域である静岡県全域と東京都・神奈川・山梨・長野の各県,直下型地震が予想される東京都・神奈川・千葉・埼玉の各県,プレート境界型地震が予想される茨城県など大地震の危険地域を多く抱えている。  
 我々弁護士は,一市民としてこのような大規模災害に備えた危機意識を持つだけではなく,基本的人権の擁護と社会正義を実現する使命を負うものとして,被災者が受ける重大な人権侵害を防止し,最小限に留めるための施策を平常時より研究し,大規模災害に備えるべきである。
 そこで,関東弁護士会連合会は,被災者の人権を守ることを目的として,国及び地方公共団体が大規模災害を想定して立案している施策に対する提言を行うとともに,法律専門家として,減災及び発災後の復興に向けて,関東弁護士会連合会・弁護士会・弁護士の市民に対する支援のあり方と支援体制の構築について具体的に提言する。
 以上のとおり決議する。
2005年(平成17年)9月30日
関東弁護士会連合会

提案理由

1.  戦後最大の大規模都市型災害といわれる阪神・淡路大震災は,6000名を超える死者を出すなど,神戸を中心とした地域に甚大な被害を及ぼし,都市機能は長期間に亘り完全に麻痺した。
 被災当初,家屋の損壊・焼失等により,多数の被災者が避難所での苦しい生活を長期間に亘って強いられた。水・食料・衣類・寝具等も十分に確保されず,トイレも不足するほか,施設・医療機器・医薬品が不十分なまま負傷者に対する治療が行われるなど,被災者の生活は過酷なものであった。その後,仮設住宅が整備されていくものの,絶対数が不足したほか,地域的に偏在する状況下において,被災者の苦難は続いた。
 これらは被災者の生存に関する権利,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が侵害された状況下にあったものといわざるをえない。
 また,平成16年に発生した新潟県中越地震は,過疎地・山間型大規模災害であり,被災地での生活継続自体を危ぶませるほどの重大な被害を与えた。さらに,平成17年3月に発生した福岡県西方沖地震は,過疎地と都市との複合災害であり,建物等への重大な被害を与えた。
2.  上記のとおり,わが国は地震の巣にあり,台風等の風水害,火山活動等を含めて考えれば,自然災害が発生しない地域はないと言わざるを得ない。特に,関東弁護士会連合会管内は,東海地震の対象地域である静岡県全域と東京都・神奈川・山梨・長野の各県,直下型地震が予想される東京都・神奈川・千葉・埼玉の各県,プレート境界型地震が予想される茨城県など大地震の危険地域を多く抱えている。
 阪神・淡路大震災から10年をむかえ,また平成16年に数々の大規模自然災害が発生したことなどから,我々弁護士を含めて市民の防災意識は高まりつつあるが,備えは必ずしも十分なものとは言い難い状況にある。
 弁護士及び弁護士会は,基本的人権の擁護と社会正義を実現する使命を負うものとして,大規模災害発生時における被災者の人権を守るため,予め何をすべきかを検討しておく必要がある。東京を中心とした地域にマグニチュード7程度の直下型地震が発生する確率はこの30年以内に70%と想定されていることを考えれば,備えるに十分な時間があるとはいえない。
 そこで,関東弁護士会連合会は,大規模災害発生時における被災者の人権を守るという見地から,国や地方公共団体が予定している施策について検証と提言を行うものである。特に,大規模災害時に最も大きな被害を受ける高齢者,障害者,子ども,外国人などに対する保護の視点を検証する必要がある。さらに,アスベストによる健康被害が深刻化している今日,都市型大規模災害により悪化する環境対策についても検証する必要がある。
 また,大規模災害発生時において,市民は様々な局面において多種多様な法律問題に直面することとなるが,混乱した状況の下においてこそ法の支配は貫徹されなければならない。そこで,関東弁護士会連合会は,大規模災害発生時における市民の法的ニーズに対応するため,発災後直ちに有効に機能しうるような緊急時の法律相談体制等を構築するとともに,市民向けの法律相談Q&A集の作成など市民への具体的支援策を準備し ておく必要がある。

 よって,本提案を行うものである。

  以上