佐渡満喫計画遂行中(平成18年度) |
新潟県弁護士会 冨田 さとこ |
T 今回は,佐渡での生活っぷりを書きます ひまわりの原稿のお話しをいただいたちょうど同時期に,自由と正義にも寄稿しました。そちらでは,もっぱらスタッフ弁護士としてどうあるべきかなど真面目な話に終始したので,今回は,いま佐渡でどのような生活をしているのか書いてみようと思います。 U 市役所支所の中で (1) 海・海・海! 法テラス佐渡法律事務所は,佐渡市役所の佐和田支所の2階にあります。佐和田支所は,佐渡島のくびれ南側の真ん中海沿いに位置します。支所の前数十メートル先は海岸で,執務室の窓からこそ見えませんが,廊下に出ると海が一望できます。海の近くで仕事をしたくて佐渡赴任を希望した私には最高の環境です。ちょうどいまころ,海岸では桜貝の貝殻がたくさん見つかるそうです。朝,早起きして海岸を歩いてみようと思っています(未だ早起きならず)。 (2) 道場破りをしたくなる看板 支所の正面には,ぶっとい筆で「法テラス佐渡法律事務所」と書いた一枚板の立派な看板が掲げてあります(誰が発注したものかは謎です)。これを見ると,「頼もう!!」と,道場破りをしたくなるはずです。 (3) 心配な面 独立した建物でないためプライバシーに問題があるのではと心配されたことがありますが,建物自体には様々な人の出入りがあるので,「住民票を取りにきたの」「ちょっと水道課に」という顔をして建物に入ってくることができます。それでも…という方には,職員用の玄関から階段近くの相談室に直接入っていただいています。 一方で,市役所の中にあることがかえって相談者を安心させているという面もあるようです。相談者の多くが,市の広報,市のケーブルテレビを見て来た人です。市の機関だという誤解を招いていないかも心配でしたが,幸か不幸か,市を相手方とする相談も複数寄せられています。 (4) 便利な面 支所内で住民票などがとれるのは,仕事上とても便利です。 相談中に,相続関係,財産関係が不明な時は,1階に行って戸籍謄本や不動産の名寄せをとって来てもらうことができます。不安そうなお年寄りがいると,一緒に1階におりて申請することもあります。また,離婚を求めている相手方と話をしている際に,「いますぐ離婚届を書きます!」と言うので,慌てて離婚届をもらいに行ったこともあります。「離婚届下さい!…あ,私じゃありません」というと,笑って「分かっています」と渡されました。 (5) 温かい人に囲まれて また,支所の中にあるために,同僚(?)がたくさんいて寂しくなることもありません。 職員の方は,皆さん可愛がってくださいます。日当たりのいい庶務課のソファは,昼休み最高の昼寝場所で,隣接する図書館は気分転換に最適です。 年末にひどい風邪をひいた時にはアイスクリームをもらい,二日酔いでヨロヨロしている時には胃薬をもらったこともあります。山で取れたというアケビや柿を分けてくれた方もいます。 夜は当直さん(2人1組)がいます。22時過ぎまで残業するのは支所内で私くらいなので,私が帰る頃には,当直さん達は布団を敷いて寝る用意万端です。時には明かりを消していることさえあります。私が帰るまでは起きていなくてはならず毎日申し訳ないと思っていたので,ある日謝ったところ,「いや,それより俺は先生の体が心配だ。ちゃんと食ってるのか?!」と言われてしまいました。 V 生活の様子 (1) 不便?いや,便利!! 生活自体は,佐渡に来る前に住んでいた目黒よりも便利になったような気がします。 ホームセンターで買ったいろいろなものを車に積みながら,目黒に住んでいた頃は自転車のカゴに入るだけのものを買って,権之助坂をえっちらおっちら上っていたことを思い出しました。重いものが買えることに加えて部屋が広くなったことで,ビールを箱買いできるようになりました。晩酌の幸せ。 (2) 自炊する日々 大学1年から始めた一人暮らしは,まもなく8年目を迎えます。これまで,大学の寮,多摩,大阪,目黒と住処を移すたびに「よし,今度こそ!」と,決意する自炊は,毎回長くは続きませんでした。 今回は途切れながらも続いています!初めて5キロのお米をひと月で食べ切りました。お弁当も作ります。朝昼晩と外食していた頃に比べて,エンゲル係数は格段に下がりました。 お昼ご飯は,おかずも揃ったまともなお弁当の日が4割,オカズもご飯という日が4割,出前やコンビニに頼る日が2割です。 残念なのは,人に食べさせることを目標にしないためか,一向に上達が見られないことです。以前,魚をさばけないことを漁師さんに馬鹿にされたので,ひそかに魚を3枚に捌く練習をしていますが,なかなか上手くいきません。 (3) 島外での買い物 佐渡で買えないのは,洋服くらいです。東京にいたころは,ストレスが溜まると裁判所から渋谷の事務所に帰る途中でマークシティや東急によって洋服を買うという暴挙に出ていました。いまは必要な洋服を,東京や新潟に出た時にまとめて買うようになりました。 幸い,寒さに耐えるためのババシャツは佐渡でも買えます。おしゃれ腹巻きは東京にいたころから3枚持っていましたが,ここにきて更にババ一直線です。 W 遊び,息抜き 後述のとおり,事件は多く忙しいです。予想はしていましたが,やはり大変です。やる気を維持するために積極的に息抜きをしています(と,まずは言い訳)。 (1) 少なくなった移動時間の分… 東京では小菅の拘置所に行くために往復2時間かかりましたが,今は拘置所まで車で5分です。警察署は2つありますが,被疑者が拘束されている方の警察署には片道20分程度で行けます。また,東京にいたころは会議や研修に数多く参加していましたが,いまは時間的にも費用的にも新潟の本庁まで頻繁に出向くことができないため,委員会や研修に参加することがほとんどできません。 こういった時間が減った分,日中は濃厚な仕事時間を過ごすことになりました。疲れますが,その分,自宅で好きな本を読む時間を増やすことができました。子供の頃から本を与えられれば黙々と読んでいた私には,何よりの幸せで息抜きです。佐渡に来てすぐに手をつけたのが,東京にいたときに読めなかったハリーポッター最新刊一気読みでした。 (2) 温泉 温泉が近くにたくさんあることも幸せの一つです。100円ショップで買ったカゴにシャンプーなどを入れた「温泉セット」を車に積んで持ち歩き,気が向くと温泉に行きます。 佐渡は,平成16年に10市町村が合併して一島一市の佐渡市になりましたが,旧10市町村それぞれに温泉施設があります。この施設を対象にしたスタンプカードは,いっぱいになりました。 笑ってしまったのは,あるガラス張りの温泉施設が,恥ずかしがるのを忘れるほどに堂々と外から丸見えだったことです。ガラス張りなので当然フィルムが貼ってあるのだと思って窓から外を眺めながら温泉に浸かっていたのですが,いま思うと…。 また,温泉に入っていると,いろいろな人に話しかけられます。あるお婆ちゃん「どこから来たの〜?」私「東京です」婆「嫁に来たの?」私「いやいや,仕事です」婆「そう,いいお婿さんが見つかると良いわねえ」私「(?!)…かっこいい人2〜3人紹介して下さい」婆「ところで私いくつに見える?」(????)…続く。 知り合いにも会います。先日も洗い場で偶然知り合いに遭遇して飲み会の打合せ。まさに裸の付き合いです。 (3) ダイビング ダイビングにも行きます。海が透き通っていて,はるか下まで見通せるため,潜る前は怖く感じるほどでした。 11月には,エチゼンクラゲと一緒に泳ぎました。1匹が私の周りを回ってくれるので,見とれて一緒に浮き上がっていき,ふと気付くと,下から続々と浮き上がってくる大きなクラゲたち。途端に怖くなりクラゲを避けているうちに更にどんどん浮いてしまい…インストラクターに助けてもらうまで,パニックでした。 (4) お祭り 佐渡はお祭りがとても多く,これに出かけることも楽しみの一つです。12月までは毎週どこかで祭りが開かれていました。 新そばを食べるそば祭,寒ブリの収穫時に行なう寒ブリ祭に出かけました。そばも美味しかったのですが,出し物がとても面白く,寒ブリ祭はアラ汁が最高でした。 春に始まるお祭りシーズンが楽しみで仕方ありません。 (5) バドミントン 最近,地域の若者たちのバドミントンの練習に混ぜてもらうことがあります。すてきにスマッシュを決めている人たちの横で,空振りして顔にぶつけたり山手線ゲームをしたりしているのですが…。参加するほどに翌日の筋肉痛は軽減されます。運動不足は深刻な悩みなので,もっと積極的に運動しようと思います。 (6) アルコール 日本酒が美味しいです。事務所と自宅の間に馴染みの飲み屋ができて,よく事務員や飲み友達とその店で飲んでいるのですが,1人で行くこともあり,お客さん達も顔見知りになりました。 (7) 目指せ,観光ガイド 寂しさは覚悟していましたが,ご覧のとおり,毎日が楽しくて仕方がありません。次の目標は,佐渡の歴史をもっと勉強して,遊びに来てくれる友人達のガイドをできるようになることです。 X 仕事のこと 楽しさの勢い余って仕事のことを書くスペースがなくなりました。少しだけ仕事のことを。 とにかく相談が多いです。毎日法律相談センターに詰めているような気分で新規の相談を受けるのは,考えていた以上のプレッシャーでした。2006年10月に開所してから2007年1月末までを集計すると,相談件数は174件,受任件数は103件(うち,被告人国選が8件,被疑者国選が1件,債務整理が49件,破産管財人・再生委員が4件,過払い訴訟が31件,その他10件)になりました。 スーパーマンではないので,自分のキャパシティを超えて受任することのないように気をつけています。時には心を鬼にして,「急ぎであれば新潟に行ってください」と話しています。 Y せっかくの島生活,3年間満喫しようと企んでいます。是非お越し下さい。来いっちゃ,佐渡へ。 |