「法教育」を進めています
住田裕子(第一東京弁護士会)
1 行列のできる法律相談所の人気の秘密とは?
 私の出演するテレビ番組「行列のできる法律相談所」は,毎週放送するテレビ番組の中で,昨年第3位の人気番組となりました。放送8年目に入りましたが,その人気はますます上昇中で現在第2位。
 その人気の秘密は?いろいろありますが,弁護士が4人いて,4人の答えが一致しない,答えは同じでも,理由や考え方などが違う,など意見の違うのが面白いんだとか。
 今の日本の価値観・世界観の多様性を反映しているようです。

2 「法」は縁遠いもの?むずかしいもの?人を罰するもの?
 もう1つの理由。考え方や価値観が人によってさまざまになった社会で,多くの人が集まるときに,最初に必要なもの・・・それは,法律であり,身近なところでは,ルール・規則といわれるものです。それらの重要性に関心が寄せられるようになった,ということもいえるのではないでしょうか。
 法律・ルールは,たくさんの人たちの異なった立場や人権などを尊重しつつ,利害を調整するものなのです。法律は,「縁遠いもの」でも,「こわいもの」でもない,生きていく上で,社会生活を送る上で,欠くことのできないものなのです。

3 法律やルールとはどんなもの?
 まず,人と人との間の調整のルール・・・私法(民法・商法)・・・があります。その中心的なルールに,契約内容などをお互いの取り決めで自由にできる「契約自由の原則」というのがあります。しかし,情報力や交渉力に格段の差のある「事業者と消費者」,経済的力に格段の差のある「貸金業者と資金需要者」,また,雇い入れて人を使用することのできる雇用主と仕事がないと生きていけない労働者,など,社会の各分野ではさまざまな力の差があり,契約自由の原則だけでは,不公平・不平等が生じます。そのためには,力の差を補う「消費者保護法・金利の規制法・労働法」などの法律があるのです。
 次に,集団(国)と一般の国民人との間の調整のルール・・公法(刑法・行政法)があります。個々人の行為を社会全体を見据え,公益目的・全体の利益のために,規制します。特に,必要なものについては,刑罰や行政罰をもって,禁止します。この力は,極めて強大です。「法律は,こわいもの」というのはこの刑法のイメージでしょう。
 このように国は圧倒的な力(権力)を持っていますから,横暴だったり独善的だったりしては困ります。この国の力を抑制し,正しく行使することを求めるのが,憲法です。民主主義・基本的人権の尊重を大きな柱としています。

4 ルール違反のときの責任の取り方とは?
  交通事故を例に考えてみましょう。 
 1)民事責任・・・制裁ではなく,損害の賠償です。加害者は,被害者がけがをしたときに,その治療費を,治療のために仕事を休んだときに休業補償を,自動車の修理のための修理代を,けがの痛みについては慰謝料を払わなくてはなりません。
 2)刑事責任・・・懲役・禁錮・罰金などの刑罰です。飲酒運転や赤色信号無視などの悪質な運転態度かどうか,けがの程度が重いか,被害者にも不注意な運転をするなど落ち度があったか,などの情状により,刑罰の重さが決まります。
 3)行政責任・・・免許取消・停止・反則金など,公安委員会が,運転免許に関して課す制裁です。刑事責任と同じく,運転態度の悪質さなどで重さが決まりますが,特に,これまでの行政処分の結果(点数)が重要です。

5 ルール・規則・法律はだれが作る?どうやって作る?なぜ守らなくてはいけない?
 集団を構成する人たちがつくります。すなわち,法律は,国民(の代表者)がつくるのです。これが,〜民主主義〜です。法律やルールは,基本的人権が尊重されることが大前提・必須です。
 それでは,なぜルールを守らなければならないのでしょうか?守らないと罰せられるからでしょうか?答えは・・・自分たちがつくったのだから,みんなで守ろう!守らなければ,安心して暮らせない・・・。上から命じられたから,守るのではなく,「自分たちがつくったから守る」のです。

6 自由・公正・平等な社会の実現のために
 国民ひとり一人が法意識・人権意識をもって,各人の立場や権利をそれぞれが尊重しつつ譲り合い,相互理解を深め,自立的に生活を送ることができること,社会を成り立たせるための基本です。法教育は,このような基本を身につけ,新たな時代の自由で公正な社会の担い手をはぐくむためのものです。
 司法改革の一環として,裁判員制度が始まります!そのためにも,法教育の普及・実践は急務です。
 今,弁護士会と教育関係者との連携により,法教育を進めています。
 ぜひとも,みなさまのご協力をお願いします!