実践例

埼玉弁護士会における法教育の活動について

弁護士 柘植 大樹

 埼玉弁護士会では,平成19年度より,さいたま市見沼区蓮沼小学校に弁護士が赴き,小学6年生の「悩み相談」という形で法教育を行っております。
 そして,平成20年12月11日(第2回目)には,埼玉弁護士会の法教育活動をする弁護士だけでなく,関東弁護士会連合会法教育委員会に所属される先生方のご協力も頂いて,総勢24名の弁護士が蓮沼小学校に赴いて大々的に開催されました。
 このように小学校で法教育を行うことになったのは,小学校における「特別活動」の時間内である程度自由な授業ができるようになったことや,近時の学習指導要領に「自分たちでルールを作って守る大切さを理解する」との内容が盛り込まれたことなどが背景にあります。
 これまで,弁護士が学生に対して行う法教育活動としては,グループに分かれてのルール作り,模擬裁判の指導,いわゆる出前授業などが中心でした。ただ,ルール作りや模擬裁判などは,一定の学力を備えていなければ,設定された事案に自分の身を置いて役割を演じること(ロールプレイング)ができません。そのため,かかる活動の大半は中学生以上を対象としたものとなり,小学生に対する法教育授業はほとんど行われていない状況でした。
 そのような中で,蓮沼小学校から埼玉弁護士会に対して,小学生の「生」の悩みを話し合わせたいとの要望が出されました。これは,現代の子どもが少子化の影響で周囲の人間と相談できる環境が少なくなっていることから,小学生が日頃抱えているトラブルを友達との間で話し合える場を設けた上で,同じ悩みを共有していることを知ったり,また,解決策が見つからなくてもそこに向けて努力することを通じ,身近な問題を題材にしてこれを解決する意欲や力を養いたい,との意向があったようです。
 蓮沼小学校で行われた法教育授業の形式を説明しますと,まず,4クラスある6年生の各クラスごとに,同じ悩みを持つ生徒同士5班から6班に分け(ひと班5〜7人),そこに弁護士が1〜2名同席します。そして,生徒に他人とのコミュニケーションをとらせるのが今回の法教育の主題であるため,生徒の中から司会役を決め,また生徒が中心となりトラブルの解決方法を20分ほど話し合います。これに対し,弁護士はアドバイザー役に徹することとし,例えば生徒の議論が煮詰まった時に,「このような視点から考えてみたらどうか」との助言をしたり,生徒の出した結論に対して「大人の実社会でも同じような問題ないし解決策がある」との価値付けをするなどにとどめました。
 ところで,生徒から出されるトラブルの例も実に様々で,クラス内でのいじめや友達関係の悩み,進学する中学校への不安などが多く見られましたが,なかには「ほかのクラスは楽しくやっているのに,自分のクラスは楽しくない。」「授業の時に○○先生の注意が長くなり,授業時間が潰れてしまう。」「小学校でシャープペンシルの使用が禁止されているのは納得できない。」など,よくぞ学校側が話し合うことを許してくれたと思われる議題も出されました。
 小学生が抱えるトラブルについて,実際には,弁護士のアドバイスを受けても解決できないものも多数ありましたが,授業終了後の生徒たちの感想は「意見が言えて自信になった。」「弁護士と解決方法について話し合えて良かった。」など概ね好評でした。
 ただ,他方で,弁護士の中から「生徒側から出る悩みの中には,法教育として議論するにはそぐわない題材がある。」「悩みを聞く弁護士の方に能力が無ければ,生徒を混乱させるだけ。」などの反省もありました。
 埼玉弁護士会の法教育活動をする弁護士の中では,今後,小学生に対する法教育としてはどのような方法を採れば最も良いのか,また,現在は蓮沼小学校1校に対してしか行えていない法教育授業を他の小学校にも拡大していくにはどうしたらよいか,などが課題として挙げられています。