シリーズ6

女優・若村麻由美さんを囲んで
出席者
女優 若村麻由美さん
関東弁護士会連合会 森田 武男理事長
同 小池振一郎常務理事
第一東京弁護士会 大澤 孝征副会長
と き:平成12年1月17日
ところ:第一東京弁護士会応接室
 シリーズ「わたしと司法」の第6回は,女優・若村麻由美さんを囲んでの「新春放談」です。
 若村さんの活躍ぶりは,別掲「プロフィール」のとおりです。3回シリーズで行われたNHKの「ヒマラヤトレッキング紀行」(1999年3月・総合テレビで放映)に出演していた若村さんに,ロケ地であるネパールの高度4,000mをこえるパンポテエでお会いしたのが理事長。これを御縁にと,弁護士会館における「新春放談」となりました。若村さんにはテレビ撮影や舞台でお忙しい合間を縫って来ていただきました。
対談は,終始,なごやかに,さわやかに,間断なく笑いを交えて,ミレニアムにふさわしい「わたしと司法」になりました。
陪審制について
森田若村さんは,NHKテレビの「アリーmyラブ2」(放映中)で,女性弁護士アリー役の吹き替えをやっておられますね。役を通じて,弁護士という職業に対してどんなイメージをおもちでしょうか。
若村いま,やっているドラマは,アメリカの弁護士役で,陪審制ということもあって,日本の弁護士さんに対してのイメージとはかなり違うと思います。それに,ドラマはラブコメディーになっているので,アメリカでも「あんな弁護士はいないよ」というところがあるようですね。
森田日本ですと例えば,「仕掛人梅安」とか,若村さんが出演された「御家人斬九郎(フジテレビ)」だとかのように勧善懲悪的にバッサリ裁いて整理してしまう。そういうのが日本人的感覚なのかも知れませんが,アメリカはそうではありませんね。そんな違いを感じたことはありませんか。
若村アメリカの裁判でよく耳にするのは,「ファーストフード店でコーヒーが熱かった」というので会社を訴えたりとか,なんでも裁判になってしまいますよね。そういうのはどんなものなのかな,と疑問に思うので,アメリカのやり方がすべて良くてそうなってしまうんだったら,これはどうなんでしょう……。
いま,やっているドラマに関して言いますと,弁護士が正義のために戦うというときもあるのですが,ビジネスのためにというところもあって,いかに自分が勝つかという点ではあらゆる手段を講じても勝訴する弁護士なんですね。でも,面白いのは,弁護士が鬼気迫る演技で役者のように陪審員を説得して,視聴者も陪審員と同じように「そうよね」と思わせられてしまうような台本になっているところなんです。
陪審制を採用したらいいのかどうかについてはよく分からないんですが,いま,日本でもどうしようか,ということになってきているのですか。
小池私は,会報・広報委員会の担当常務理事ですが,「わたしと司法」シリーズで,各界で活躍する著名人に登場していただいて司法についていろんなことを語ってもらっているんですよ。たまたま私が,日本テレビの「ザ・ワイド」という番組で5年近くコメンテーターをやっていたものですから,そのつながりを活用したりして,コーディネートしています。そこで皆さん言われることは,「陪審制に関しては分からない」,若村さんが言われるような感想なんですね。法曹一元を弁護士会が提案しているんですが,それはどうか,というと皆さん異口同音に「ぜひ,実現してほしい」と言われるんですが……。
弁護士に対するイメージは
森田若村さんは,いままで法廷にも行ったこともないし,裁判を起こしたことも起こされたこともないということですが,例えば,弁護士というのは,黒を白といいくるめたり,或いは非常にお金がかかる,裁判も時間がかかるといった具合で,だから弁護士ににはなるべくお世話になりたくないといったイメージもあるようですが,いかがでしょう。
若村そういうイメージは持っていませんが,いままでは,縁がなかったというか,遠い存在という感じです。それでも,その分野でのプロであるという意味では,私達の分からないことをしっかりと把握なさっていて,何かがおこったときに,いつお世話になるか分からない,というふうには思っていますけど……。
実は,一昨年松本清張の「霧の旗」というテレビドラマの桐子役をやりました。桐子は,殺人罪に問われている兄を救おうと,高名な弁護士に,兄の弁護を依頼しますが,多忙と費用の高額を理由に弁護を断られ,結局,兄は死刑判決を受けます。それを「この弁護士が引き受けていれば死刑にならなかった」と思い込み,弁護士に対して復讐するというドラマでした。
演じる自分が本当に桐子の立場にたてば,「お金がないと,無罪と分かっていても弁護してくれないのか」という思いは持つのではないでしょうか。「お金がかかる」「時間がかかる」「仕事は忙しい」,そういうことはあると思いますが,そんな状況でもちゃんとした結果が得られるという司法制度になっていればいいんですが。
弁護士を増やすことについて
森田身近に弁護士がいて,何かあったときにすぐに相談でき,トラブルがスムーズに解決できるのではないか,ということから,日本の弁護士の数が増えるということについてはどんな風に考えられますか。
若村優秀な弁護士さんが増えるんだったらいいと思います。(笑い)
私の中では,弁護士さんって,教師とかと同じように,聖職的なイメージがあります。だから,いまやっているドラマのように,ビジネスライクに「いらっしゃいませ,ありがとうございました」というような商人的な感じになると,それもちょっとどうかな,という感じがします。
教師とかお医者さんとか,裁判官とか検察官とかもそうでしょうけど,人の命にかかわるようなこと,人の生活に直接かかわってくるような仕事をしている人は,清潔で,神聖であってほしい,という思いがあります。なかには悪徳弁護士といわれる方もいるんでしょうが,本来は,そうでない仕事なのに,立場を利用してそうなっている,という認識を持っています。弁護士という仕事は大変な仕事なのですから,良い方向で才能を発揮してもらえれば素晴らしいのですが,間違った方向に使われると大変な事が起きてしまう。それほど弁護士という仕事は,人間の精神性というか,人間性というのが問われてくる仕事なのでしょうね。
大澤弁護士という仕事は,個人にとっても社会にとっても相当影響が大きい仕事であるし,そうであるからこそ,人間としても社会人としてもそれ相応の人物でないと困るということなんでしょうね。
森田聖職なのかビジネスなのか,この辺の限界がいま問われているわけですね。
大澤弁護士は,社会的な公益活動をしなくてはならないと,損得にかかわらずやらなくてはならないんだということで,弁護士会の自治或いは自浄作用として,弁護士の公的業務の義務化ということも決めたりしています。
小池弁護士会には,いろいろな委員会があります。例えば,公害・環境問題や消費者問題に,委員会が無報酬で取り組んでいます。
大澤関弁連や弁護士会の役員の仕事も一切報酬はゼロなんですよ。これは,他の職種にはみられないことだと思います。
若村そういう面は,私は知りませんでした。弁護士さんというと,お金が儲かるというイメージがありますから,もっとアピールされた方がいいと思います。
このお話をうかがえて,今日は本当に良かったと思います。それと,司法制度がいま変わろうとしているときだとか,陪審制が採用されることになるのだろうかということなど,これからは,この方面にアンテナを張って,どうなっていくのだろうかを,ちゃんと見つめていこうと思います。いろいろ勉強になるお話をうかがうことができましたが,自分たちは,一体,どの舟に乗せられて,どこに行こうとしているのだろうか,を知ろうとする努力をしなくてはいけないと思いました。
森田そうですか。今日は少なくとも1人,弁護士会のファンを獲得したということで,有意義な対談になったと思います。(笑い)
プロフィール
出身地 東京都
1985年 無名塾 入塾
1987年 NHK朝の連続テレビ小説『はっさい先生』のヒロイン役でデビュー
1988年 エランドール新人賞受賞
1999年 第33回紀伊國屋演劇賞個人賞受賞
2000年 第23回日本アカデミー賞助演女優賞受賞(金融腐蝕列島[呪縛]・東映系)

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