シリーズ7

俳優 辰巳琢郎さん
と き:平成12年1月26日(水)
ところ:松本楼(日比谷公園)
聞き手:平沢郁子会報・広報委員会委員
 シリーズ第7回は,俳優の辰巳琢郎(たつみ・たくろう)さんです。
 辰巳さんは,高校時代から演劇を始められ,京都大学在学中から「劇団そとばこまち」を主宰された根っからの舞台人です。84年,NHKの朝の連続テレビ小説「ロマンス」で全国的にデビューし,その後は「くいしん坊! 万才」「平成教育委員会」平成の名探偵「浅見光彦シリーズ」,昨年はNHKの「元禄繚乱」の大高源五(おおたか・げんご)役等でテレビでもお馴染みかと存じます。テレビのドラマの中では何度も弁護士役をこなされた経験があるが,ご自身では裁判の当事者になられた経験はないとか。言葉を選びながらの丁寧なお話し振りでしたが,司法問題に関しては,徴兵制の意義などという話題も飛び出すなどリラックスした雰囲気の中で率直な意見をうかがうことが出来ました。
○裁判制度について一番問題だと思っているのはどんなことですか
辰巳さん裁判に時間がかかりすぎることです。みんな思っていることだと思いますが,何でそんな簡単なことが出来ないのかという気がします。他には,裁判というのは時間もかかり弁護士費用などの費用もかかるらしいという点です。だからだどうしても裁判にならないように話し合いなどで解決しようとするのだと思います。
○裁判で決めるという解決方法についてどういう印象を持っていますか
辰巳さん日本は,今のところまだ法的解決になじまない社会だと思います。例えば,テレビに出るときもNHKは契約書を交わしますが,通常民放は契約書を交わしません。どちらがいいかというと,一概には言えないんじゃないでしょうか。以前は契約した方がいいと思っていましたが,最近は,逆にそうではない方が良い場合もあると感じています。何か予定しないことが起きたとき,話し合って解決した方が良い結果になる感じがします。この種のあいまいさは,日本人のいい部分でもあると思っているんです。もっともアメリカのような多民族国家では,価値観の違いが著しいのでどうしても分厚い契約書を交わすことになるんでしょうね。
○陪審制についてどう思いますか
辰巳さん子供の頃に見た映画の「12人の怒れる男」には感動しました。でも,本当に日本で陪審制が根付くんだろうかという懸念を持っています。陪審制では,一般の人が裁判官として判断するのだから,一般の人が裁判に関心をもっていなければならないし,仕事を休んで裁判所に行かなければならないのだから,陪審に出るために会社を休むことを良しとする風潮がなければならないので,社会にある種の余裕がないと出来ないんじゃないかと感じています。僕がもう40過ぎてトシだから思うのかもしれないけれど,今の20歳くらい若い人を見ていると,とても国や社会のことなんか考えていない人が多いように感じるんですよ。極端な話ですが,徴兵制でも採って,その中で国のことや社会のことを考えるような制度を作ったほうが良いんじゃないかと思うことがあるくらいですよ(大笑い)。
○弁護士会では今法曹一元というのが問題になっているのですが,裁判官についてどんな印象を持っていますか
辰巳さんあまりに閉ざされた世界であり,知らな過ぎる世界なので,良くわかりません。良く分からないから,なお更裁判になったら大変だという感覚になるのだと思います。
○検察官についてはどんな印象を持っていますか
辰巳さんロッキード事件で有名になった吉永検事のような人が頭に浮かびます。特捜部のイメージですね。ただ,人を刑に服させる仕事だからしょっちゅう他人に恨まれているんじゃないでしょうか。
○弁護士についての印象はどうですか
辰巳さん間違っている裁判を正すという役目と,法律的知識のない弱者を救済する立場というダブるイメージです。ただ,弱者の救済をしながら片方では大企業をクライアントして大企業の利益のために働くという面もあるわけで,その相反する仕事の双方をやるのは何となくアンバランスな感じがします。この二つは職種自体が違うような印象です。それから法律の解釈で勝負する特殊な仕事ですが,ある種のサービス業であることは確かなのですから,もっと競争があっても面白いんじゃないかという気がします。
(辰巳さんから,弁護士は裁判官や検察官よりも収入が多く裕福なのではないかという逆取材も受けてしまいました。そんなことはないことを説明して納得していただきましたが,イメージと違ったらしくいささか意外そうでした。)
○弁護士の数が少なすぎると思いますか
辰巳さん弁護士の数が多いか少ないかは分かりませんが,裁判官と検察官の数は絶対少ないと思います。少ないから裁判に時間がかかるのだと思うんですが。
○司法改革について一言
辰巳さん裁判に時間がかかる点の改革は急いで欲しいですね。陪審制や法曹一元の問題などでは,議論を簡潔にしようという大づかみでもいいから分かりやすく議論しようという方向にならないと,国民全体で考えにくいと思います。
○本日は貴重なお話をありがとうございました。

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