○現在のご活躍状況をお聞かせください。 |
金児さん |
38年間経理・財務でやって来て,2年間の金融監督庁顧問の任期中の99年に,経済評論家・大学教員になるには今がいいと考え,任期半ばでしたが取締役を辞任しました。現在早稲田の学部で会計学特論を,大学院では連結経営研究を担当しています。2004年春日本橋に早稲田の金融大学院ができる予定で,そこでは「国際連結経営の会計」の授業を担当しますが,実務的な側面が強い授業にしたいと思います。 |
○法律家に対するメッセージをお聞かせ下さい。 |
金児さん |
会計士も,弁護士も,実力のある人と実力のない人が歴然としています。例えば,アメリカの弁護士は企業のために働くことに徹底しています。それが需要と供給の関係において決まってますから,力のある弁護士の報酬が高いのも,私は必然的だと思います。力のある弁護士さんを,会社は尊敬します。
経営学者,会計学者は意思決定という言葉をよく使いますが,意思決定だけではだめですね。このことは実力のある弁護士さんはよくお分かりです。日本は意思決定すると会社の業務はもう終了したように言いますが,とんでもない話ですね。意思決定と実行とは全然別でしょ?それに関連して,取っていいリスクと,取っていけないリスクを区別が出来ない日本人が多いように思います。経営実務に本当に詳しい弁護士の方々と付き合って,事業を進めてきましたが,それでも弁護士の方たちは利益を追求する経営・事業を遂行していくことはできません。本当に能力のある弁護士の方々は,そのこともきちんと認識しています。 |
○今後日本の将来を担っていく若い弁護士に対して何かおっしゃりたいことがございますか。
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金児さん |
私は,会社の目的は法律を守りつつ,利益をあげて,税金を納めることであると思っています。個人でも会社でも,税金を納めないと国が成り立っていきません。1円でも利益を上げるのはどんなに大変かを,肌・体で理解していただきたいと思います。それが資本主義経済社会の全ての根本だからです。
先日,お役人300人位と民間人150人位の皆さんに講演をしました。国から見れば,企業や個人が納めた税金は売上ですから,会社や国民は,国にとって売上の代金をいただく大事なお客さんです。しかし,総理大臣,財務大臣,財務省のお役人,そういう関係の人たちは,そのお客さんに対して,税金を払っていただいたときに「どうもありがとうございます」という態度が全くないのが不思議です。そして代議士もお役人もそのいただいたお金を配分することばかりに権限を行使します。こんなおかしな話はないと,私は申したんです。会社はその外へ売上を上げて,代金をいただいて,お客さま第一で行動しています。それは社長も,第一線の社員も全く同じで,お客さんに対しては誠心誠意尽くします。若い弁護士の方々は,会社も国も「売上を上げることが大切である」ことをぜひ理解していただきたいと思います。
それから,法律家になって将来を背負って立つような若い人たちは,物事の礎を自分の頭で考えてみる力があると思います。が,それをもとに他人の業務や状況を“慮る力”をつけることがすごく大事です。全ての仕事に対してこのような“慮る力”を常に持とうという気持ちで仕事をしている人とそうでない人とでは,10年経ったら人間性も,業務推進力も,その人の持つ空間も全く違ってきます。 |
○今後の日本の将来についてどういう風にお考えですか。
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金児さん |
日本人は多かれ少なかれ,儒教の精神があるから,勤勉で非常にまじめです。会社でみれば,社長から第一線の人まで。これはものすごい財産だと思います。
ただ,一つ欧米のいいところを取り入れるべき事があります。それは,一朝有事の時に役立つ契約力を国民全体がつけていく必要があることです。簡単な学生的な言葉で言えば,ディベート力でしょうか。契約をベースにものを考える。その力はどうしてもつけなければならないですね。日本には,もともとのベースとしてはすばらしい儒教的な道徳の教えがあります。これは欧米にはないものです。そのうえに契約力をみんながつけていくと,例えば弁護士さんとお付き合いする時でもどうしたらよいのかがわかります。日常的な小さなところから契約,法律を守って,しかも折衝力をつけていくということが,日本の将来の発展にとってとても大事であると思います。 |
○本日はお忙しいところどうもありがとうございました。
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