シリーズ61


プロ野球解説者
金村義明さん
と き:平成17年11月22日
ところ:新高輪プリンスホテル
聞き手:
会報広報委員会委員長   東條正人

 今回の「わたし」は元プロ野球選手の金村義明さんです。金村さんは、甲子園の優勝投手であり、その後近鉄などでサードのレギュラーとして活躍された選手で、現在、プロ野球解説者をされています。

○金村さんというと、報徳学園の4番でエースとして夏の選抜優勝投手ですよね。甲子園での思い出はありますか。
金村さん  3年の春に初めて甲子園に出たのです。1回戦で負けたのですが、そのとき、その後巨人に入団した槙原投手のいる大府高校と対戦したのです。当時の槙原はすでに147キロの剛速球を投げており、私としては初めてあんなすごい球を見て、「上には上がいる、ピッチャーやめよう」と思ったくらいなのです。私も当時球速としては137キロくらいあったのですが、春のときは、負けず嫌いなもんで(笑)、槙原に対抗して、まっすぐばかりで押して敗れたことから、夏は、ムキになって投げないことにしたのがうまくいったのかもしれません。
○報徳卒業後、ドラフト1位で近鉄に入るわけですが、希望球団だったのですか?
金村さん  いいえ、当時生意気にも阪急を逆指名していたのです。12球団からスカウトが来てくれていたのですが、私は宝塚の川っぺりで育って、地元人気球団の阪急以外目になかったのです。なにせ小さいころ、高台には阪急の選手の豪邸が立ち並び、玄関のチャイムをピンポンと押しては逃げるというようないたずらをしたり(笑)、小学校の作文にも「阪急ブレーブスに行って、母親に家を建ってやる」なんて書いてたくらいですから。
○それで1981年に近鉄に入団された後、サードに転向されたわけですね、現役時代なにか印象に残る試合がありましたか。
金村さん  当時、長嶋さんの現役最後のころで非常に印象が強くサードしかないと思いました。しかし、当時近鉄では羽田選手28歳がサードのレギュラーだったので、結局レギュラーをとるまでに5年かかりました。現役中一番印象に残った試合は88年10月19日、川崎球場での対ロッテのダブルヘッターです。近鉄が2勝すればリーグ優勝という試合でした。そして私はなんとその試合の3試合前に骨折して試合に出れなかったのです。このときのダブルヘッターは球界に伝説を残す死闘といわれていて、先輩、同僚、後輩が泣きながら試合をしていたのを覚えています。自分も試合に出れないくやしさもあり、ひそかにベンチ入りし同様泣いていました。しかし、結果は1勝1分けで優勝できなかったわけです。
 あとは自分の引退試合ですね。近鉄の後、中日、西武と移籍したわけですが、1999年西武は優勝争いしていたのですが、私はといえば夏のくそ暑いなか2軍で調整を強いられていました。そんなときです、たしか8月30日にボクシングの辰吉丈一郎の世界選手権を見たのですが、彼がリングに立ってるのがやっとで、ぼこぼこにやられている姿を見て、自分とダブらせてしまって、9月1日には球団に自分からやめると言いに行ったのです。そして最終戦にスタメンで一打席だけ立って引退セレモニーをしてもらい、自分の現役生活にピリオドをうったわけです。プロ野球選手の権利というのは、統一契約書を見ても、自分からやめるという権利しかないのですね。自分もやめるときは自分から言おうと思ってましたから。
○プロ野球選手の権利というお話が出ましたが、プロ野球選手は個人事業主でありながら労働組合があるということですね。ここがよくわからないのですが。
金村さん  球団と選手が対等でないということなんです。事業主といわれながら対等な立場ではなく、トレードがいやならやめるほかない、球団からいらないといわれれば首です。ばらばらに交渉していてもらちがあかず、待遇改善のために、選手が一体となって力をつけるしかないということで、労組を結成したわけです。
○プロ野球選手と球団の契約交渉の実態はどのようなものですか。
金村さん  たとえばパリーグはご存知のように赤字球団も多く、年俸がなかなかあがらないのです。19歳のとき、自分だけで契約交渉に行ったのですが、「入団のときの契約と違うから親と相談する」と言いましたら、「おまえプロなんやから親々言うな」と言われたり、2軍でそれなりに成績残せるようになったのでその点主張すると、「2軍でなんぼやっても2軍はファーム言うて農場って意味や、1軍で活躍して給料上げてくれと言え」とか、それで初めて1軍で活躍できた年に、「上げてくれ」言ったら、「1軍で3年連続やって1人前や」と言われてしまう(笑)。「はんこを忘れたからまた次考えてください」というと会社が三文判用意してきて「押せ」言われてね(笑)。こちらも「子供が2人目生まれたからミルク代だけでも上げてくれ」と泣き落とししたりですね。
○最近は弁護士が代理人となる代理人交渉というのがはやっていますね。
金村さん  そうですね。私も、もう少し生まれるのが遅かったら弁護士さんに相談したり、代理人になってもらいたかったですね。契約はプロにおまかせして、練習に専念したいということなんです。選手会の登録弁護士になることが前提なようですが、私が現役のころはありませんでした。
○一昨年でしたか、球団再編問題でオリックスと近鉄の合併差止の仮処分という裁判にまでなったケースがありましたね。
金村さん  はい、悲しい話ですよね。選手のことを考えないフロントの体質が露呈したと思います。選手が試合やっている最中に、選手になんの相談もなく合併を発表するわけですから。コミッショナー含め、フロントの人は野球の素人の人ばかりなんです。
○選手会側はストライキまで起こしましたね。
金村さん  よくやったと思います。そうでなかったら間違いなく球界は1リーグ制の縮小へと向かったと思いますね。コミッショナーは法曹界のトップだった人ですが、アメリカのコミッショナーはもっと権威を持っています。各球団オーナーと対等むしろそれ以上に話ができ、もっと野球界、選手全体のことも考えるようなコミッショナーであってほしいですね。そして、球団のオーナーももっとステータスを持ったらいいと思います。野球で儲けようという話でなくてね。
○最近IT企業などが参入してきていますね。また球団の上場なんていう話も出ています。どのように思われますか。
金村さん  私は昔電鉄各社が球団を経営していたように、ノッている企業がどんどん参入したらいいと思います。ただ、もうけだけで球団経営を考えないでほしいということなんですね。1年やって儲からないから、優勝できないから、やめるというのでなしにね。上場に関しても、その球団のファンが反対していても、マネーゲームでどんどん経営主体が変わるような可能性もあるわけでしょう、反対です。球団のことを愛してくれるオーナーが必要です。プロ野球人気が低迷していると言われますが、BSなんかの大リーグ中継を見る人や、CS、ネット配信なんかでひいき球団を見る人も増えています。今年はロッテファンが増えるなど間違いなく野球界は全体的には盛り上がっていると思いますよ。
○本日はお忙しい中どうもありがとうございました。




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