シリーズ89


俳優・水彩画家
榎木孝明さん
とき:平成21年7月10日
ところ:オフィス・タカ(渋谷区)
インタビュアー:関弁連会報広報委員会 田丸明子委員,東條正人委員長

 今回の「わたし」は,俳優・水彩画家として御活躍されている榎木孝明さんです。榎木さんは,武蔵野美術大学に学び,劇団四季を経てNHK「ロマンス」でテレビデビュー,以降は映画,舞台,テレビ,ラジオ等あらゆる分野で活躍されております。また,水彩画家として毎年全国各地で個展を開き,多数の画集を出版なさっています。

○本日はよろしく御願いします。さっそくですが,榎木さんは今まで様々な水彩画を描かれていますが,これらの水彩画は各所を旅されて描かれているのですか。
榎木さん そうですね。私は自分が描きたいと思った場所で,描きたいという気持のままに絵にしているため,旅先その場で構図から色まで全て仕上げています。
○九州,北海道に美術館があるということですが。
榎木さん 大分の飯田高原と北海道の美瑛町というところに2箇所あります。
○この場所を選ばれた理由はあるのですか。
榎木さん 大分の美術館は私が昔からお世話になっている方が作って下さいました。北海道の美瑛町の美術館は,美瑛町という町は丘陵地帯で景色が大変美しい場所なのですが,町興しの一環として町からお声がけいただき,廃校になった小学校の一部を利用させてもらい作品を展示しています。美術館開設にあたり,私が大切にしていたことは自分が心からその土地,その町を愛せるか,また,地元の方々と自分との間に心を通わせることができるのか,自然に溶け込んでいけるのかということでした。北海道美瑛町の景色は写真では見たことがあったのですが,実際に美瑛町へ行ったところ,至るところに描きたい風景が広がっていました。その後,この町に何度も通い地元の方々とバーベキュー等をしながら美術館を作ることについて話し合いを重ねました。その結果,最終的にはほぼ100パーセント,地元の方々の賛同を得られ美術館を作ることができました。
○一年に何点くらいの画を描かれるのですか。
榎木さん だいたい200点くらいですね。小さい作品も含めると300点くらい。外に出た際に10点くらいを一度に描くこともありますので。家でも暇があれば描くことがあります。
○次に俳優としてのお仕事のことをお聞きしたいのですが,榎木さんは初めから俳優志望だったのですか。
榎木さん 私は18歳の頃に鹿児島から東京に来ましたが,10代の後半で何か自分自身を探してみたいという年頃だったせいか大学に通いながら芝居を始めました。
○俳優として印象に残っているお仕事は何ですか。
榎木さん 舞台ですと「オンディーヌ」です。25歳のときに主役をもらい本格的に舞台デビューしました。映画では「天と地と」ですね。主役である上杉謙信役をやりました。テレビですとやっぱり「浅見光彦シリーズ」かな。真面目な印象があるのかテレビでは弁護士,検察官,裁判官,警察官等の役を演じることが多いです。
○演じる際はやはり感情移入されるのですか。
榎木さん いえ,まったく逆です。もちろん感情を表現しますが,感情移入しすぎるとかえって演技が白々しくなりがちなので演技をしている自分を俯瞰する自分がいるように心がけています。これは物事全般に共通することだと思うのですが感情的になりすぎると視野が狭くなり何らかの問題が生じることが多いと思います。俯瞰で見る気持ちというものがどのような場面においても人間には大切なことだと感じています。
○裁判員制度広報映画「評議」では裁判長役を演じられていましたがどうでしたか。
榎木さん 裁判官というのは中立でなければならず正に俯瞰で事実を見られるかということで大変な仕事だと思いました。裁判員制度自体は今まで縁遠い世界であった裁判,司法に関する国民の意識を高める手段としては良いものだと感じております。どの専門家にも共通する意識だと思うのですが専門分野については自分が一番理解していると思いがちですが,もしかすると一番鋭い感覚を持っているのは専門外の人ではないかと思います。そのことからも裁判員制度は良い制度だと思います。
○話は変わりますが古武術が特技であるという情報を得たのですが。
榎木さん はい。武術全般行っています。時代劇が好きなので立ち回りから入り総合武術と呼ばれる武術を行っていたのですが,膝や腰に負担がかかってしまい体に良くないと思い始め,原点に返ろうと古武術を始めました。古武術とは余計な力を排除し人間本来が有している力を活かして行う武術です。年齢や性別,身体能力は全く関係ありません。古武術は様々な分野にも応用できます。私のホームページで介護に活かす古武術を動画で紹介しているのですが,余計な力を使わないため身体を痛めることもありません。例えてみれば,ピンポン玉をはずませてその跳ね返るイメージを頭に描きながら寝たきりの要介護者を起き上がらせるといった介護術です。
○最後になりますが,これからの主なスケジュールを教えて下さい。
榎木さん 私が企画し主演する「半次郎」という映画がまもなく撮影を開始します。この映画は,明治維新という激動の時代に生きた中村半次郎を通じてかつて日本人が当たり前のように持っていた美徳と礼節を思い出してもらおうということが企画の意図です。現代では個人主義を追及した結果,無差別殺人や親殺し,子殺しが日常茶飯事となってきています。この映画を通して現代社会が忘れてしまった先義後利の精神を広め,一人ひとりが人に誠意を持って接することで世の中の流れを良い方向に導き,結果全ての人々が幸せに生きる世界が作られればと思っております。
○確かに最近では無差別殺人のニュースを耳にしても大して驚かなくなりました。この感覚もおかしなものですよね。古き良き時代の日本人の感覚を大切にしていきたいと思います。本日はお忙しい中お時間を頂きありがとうございました。




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