平成13年度
    「地方議会と住民投票」
       〜21世紀、地方自治の前進をめざして〜




あ ら ま し
 定期大会に先立ち当日の午前9時30分から午後12時45分まで,恒例のシンポジウムが甲府富士屋ホテルにて開催された。以下に委員会の活動経過,当日のシンポの様子などを報告致する。

1 テーマの設定 
 私たちシンポジウム委員会に当初与えられたテーマは「地方自治」でした。この漠 然として広がりのあるテーマから委員による議論や勉強会を経て,結局「地方議会と 住民投票」へとテーマを絞り込むのに約5ヶ月を要しました。
 間接民主制の代表機関である地方議会と直接民主制の雄である住民投票をセットで取り上げたのは,地方議会の現行法上,制度上,運用上の問題点を調査検討し,それと対立し,あるいは補完しあう住民投票を調査検討することで,地方自治の前進のための方向と提言を探ろうというのがねらいでした。とはいえ両者をどのようにマッチングさせて提言に持っていくか,ということは正直なところ当初から不安の種でした。
 全体の委員会の他に,委員を議会部会と住民投票部会の2つに分けて検討に入ったのは平成13年になってからでした。

2 委員会の活動
 委員会は,関本立美委員長(山梨県弁)を中心に,各単位会から選出された委員の他に山梨からバックアップ委員として10名が加わり,1年4ケ月間,勉強会,討議等を重ねた。
 全体としては委員会14回,全体合宿3回,正副委員長会議4回を行った。議会部会は関弁連管内全都県区市町村議会へのアンケート調査,岩手県,大分県,三重県,東京都,山梨県,愛媛県,神奈川県などの県・区・市・町・村の12地方議会調査に 出向いた。住民投票部会は新潟県,千葉県,岐阜県,沖縄県,徳島県,兵庫県に8件の住民投票運動の実態調査を行った。山梨においても数回の委員会と勉強会を行った。 
 全体会の勉強会には,池上洋通氏(月刊「住民と自治」編集長),新藤宗幸氏(立教大学教授),小川明雄氏(ジャーナリスト),今井一氏(ジャーナリスト)を,又,議会部会では加藤幸雄氏(全国市議会議長会調査広報部部長)と岡本光雄氏(全国町村議長会議事調査部副部長)をお招きして有益な,示唆に富むお話を頂いた。

3 報告書
 報告書は423頁と厚いものになったが,その構成は,地方自治の現状と問題提起に始まり,地方議会の変遷,地方分権一括法との関連,直接民主制の諸制度の検討を経て,アンケート及び多くの地方議会での聞き取り調査を踏まえて地方議会の現状と問題点を分析したうえで,議会に関する地方自治法の疑問点を浮き彫りし,続いてもう一つの柱である住民投票に関し,実態調査に基づき現状と問題点,又,住民投票の法律的問題点を理論的な面と技術的な面で検討し,制度化についての提言に結びつけている。

4 シンポジウムの内容
 シンポジウムには管内の弁護士だけでなく,地方議会,大学,マスコミ関係者その他一般の方々を含めて約350名のご参加をいただいた。
 関一山梨県弁護士会副会長の総合司会で始まり,関本立美シンポジウム委員会委員長からテーマ選定の経緯,報告書の二つのキーワード(「地方議会の創造的発展」と「住民投票の制度化」)の説明をまじえた挨拶があり,続いて中津靖夫理事長が挨拶 をされ,今回が30回目の記念すべきシンポであること,21世紀に入り大きな転機を迎えた地方自治を取り上げた意義などについて話された。
 続いて,川崎真樹子シンポジウム委員会副委員長の司会へとバトンタッチされ,まず,地方議会部会から田邊護委員(山梨県弁)が,住民投票部会から吉澤宏治委員(山梨県弁)がそれぞれ約10分間で基調報告をした。報告のあと登壇したパネリストから,この報告だけで本日のシンポは終わりにしても良かったくらいだ,とのお褒めの言葉を頂くほど,お二人とも要領よく,かつシンポ委員会の問題意識が十分に参加者に伝わる報告をされた。
 田邊委員は,委員達自身が地方議会を傍聴したことがなかったこと,従って殆どの委員がその現実を知らなかったことから,1都10県の全地方議会へのアンケートを実施するとともに,先進的な議会運営をしている地方議会への訪問調査を行うことにより,単純な活性化では済まない問題のあることに気づいた。やりたくてもやりようのない地方議会の現実が分かり,地方自治法の議会編に法律家の目で取り組むこととなった経緯を述べた。なぜ,議会の開催回数が法律で一律に決められなければならないのか,議会の招集権がなぜ議長になく首長にあるのか,などの疑問点を踏まえ各地域のことは地域の状況に応じて決められても良いのではないか,との視点から議会の権限強化(合理性のない法規制の撤廃),議員構成の多様化と議論の公開,住民の自己責任へと話しが及び,「議会の創造的発展」へと報告を結んだ。
 吉澤委員は,住民投票が増えている現状の説明をし,相応しい場所でもっと活用されるべきであることを強調された。そして,民意を表示する手だてのなくなった住民が,住民投票へと動いた経緯と,結果として住民の熱意が行政を動かしたことなどを,現地調査に行った徳島市を例に生々しく語った。ただ,住民が熱意をもって運動に取り組んでも,議会の壁に阻まれて住民投票に至らなかった神戸市の例や,住民投票が実施され,民意が示されたのにも関わらず,首長が結果を尊重しなかった例(法的拘束力の問題)も紹介し,そこでの問題点を指摘した。又,住民投票への批判として「科学的,専門的な分野を知識のない住民に任せるのは危険」との意見については,住民投票をやろうとするような所では,住民は良く勉強しているとして,その批判は妥当ではない,との意見を述べた。
 シンポジウムは,江藤俊昭氏(山梨学院大学教授),上記の岡本光雄氏,笹口孝明氏(新潟県巻町町長),樽川通子氏(女性議員をふやすネットワーク「しなの」会長)の4名をパネリストとして迎え,清水勉(東弁)及び宮田隆男(横浜弁)の両シンポジウム委員会副委員長をコーディネーターとして行われた。
 江藤氏は「高度経済成長期には,中央が財源も権限も握っていたので結論が見えていた。その頃は地方議会の役割は狭かったし,審議会程度の役割で済んでいたが,今日では規制緩和,行財政改革,地方分権でその構造が崩れつつあり,地域のことは地域が担うことになりそれに見合う地方議会であることが要請される」とし,具体的には「議員の数など地方政府形態を自分達で決めても良いのではないか,答弁の方法など法律を変えなくてもできることと,法律を変えた方が良いこととを分けて検討すべ き」「今後は条例の果たす役割が重要になる」とした。
 岡本氏は「地方議会が評価されていないのは構造的に問題があるから」「議員の研修も系統だったものは行われておらず,議員の潜在能力を引き出せない」「質疑や討論をしっかりし,会議録にも賛成・反対の議員の名前を載せるなど議会や議員が住民 に責任を持つ必要がある」などの話しをされた。
 笹口氏は「住民投票実施当時,町民は一人ひとりが原発については3時間話せる,と言われるほど詳しい知識を持っていた。住民投票が住民の最高意思決定であると事前に位置づけてから行った」「住民投票のテーマについては聖域を設けるべきでなく,設けるくらいなら法制化は不要」「リコールの1年の制限や戸別訪問の禁止は見直して貰いたい」とした。
 樽川氏は16年間の議員生活に基づく経験として「地方議会は病んでいる。弁護士・弁護士会がこの問題を取り上げたことに大きな意義がある」「議会は閉ざされた世界で,男性の論理で都合のよいものが前例となり,男性は変化を好まない」「女性議員を増やすことが議会の改革につながる」などの話しをされた。
 シンポの総括は埴原一也シンポジウム委員会事務局長(山梨県弁)が行い,上記のパネリストの御発言を要約し,弁護士・弁護士会としても努力を重ねる,と締め括った。

平成13年度シンポジウム委員会
        副委員長 渡辺和廣(山梨県)