平成21年度 ケータイ世代の子どもたち
    ―子どもとインターネットの関わりの適正化をめざして―


シンポジウム報告書籍紹介

シンポジウム報告
平成21年度シンポジウムについて
平成21年度シンポジウム委員会
一由貴史(長野県)

 平成21年9月25日(金)午前10時より,長野市内のホテル国際21にて,「ケータイ世代の子どもたち−子どもとインターネットの関わりの適正化をめざして−」をテーマとして平成21年度関弁連シンポジウムが開催され,シンポジウム委員による基調報告及びパネリスト4名によるパネルディスカッションが行われました。

2 基調報告
 まず,「子どもにとってケータイとは」というテーマで安藤雅樹副委員長より報告がありました。この問題を論じる際には,まず子どもの目線になって出発しよう,子どもの意見を聴いてみよう,実態を知ることから始めよう,という意図から,横浜弁護士会のご協力を得て子どもたちにインタビューした映像を用いたり,文科省による最新のアンケート調査を用いての報告がなされました。
 次に,「弁護士関与事例の報告」というテーマで掛川亜季委員より,関弁連管内の弁護士に対して行ったアンケート調査の結果が報告されました。子ども,保護者ともにケータイ・ネットの危険性についての認識が乏しいこと,ネット上の書き込みをめぐるトラブルの際に,現行法上発信者の特定が困難で解決が難しい場合があること,などが指摘されました。
 その後,「ケータイとフィルタリング」というテーマで,大谷惣一副委員長より,フィルタリングシステム及びケータイにおけるフィルタリングについての説明とその問題点に関する報告がなされました。実際にフィルタリングソフトを試用してみた場合の状況など,具体的で非常にわかりやすい報告がなされ,子どもの成長発達段階に応じたきめ細かいシステムを準備することの必要性等が指摘されました。
 最後に,齋藤泰史副委員長より「ケータイへの現在の対応とその問題点」というテーマで報告がなされました。家庭における対応については,子どもと保護者との間で,利用ルールの設定についての認識にズレがあること,子どものケータイ利用の実態を保護者が把握していないことという問題点があることが指摘されルール作りの実践例が紹介されました。学校における対応については,文部科学省の「持ち込み禁止通知」が紹介され,大切なことは,ケータイの持込,使用を制限することではなく,学校においても,ケータイの正しい利用方法を教えることが必要である,という視点が示された上で,本格的なメディアリテラシー教育の必要性が指摘されました。

3 パネルディスカッション
 パネルディスカッションでは,研究者の立場から千葉大学教育学部准教授の藤川大祐氏,行政の立場から総務省総合通信基盤局の大内康次氏,教育者の立場から大阪府寝屋川市教育委員会教育指導課指導主事の竹内和雄氏,弁護士の立場から野田美穂子副委員長にご参加いただき,緑川由香委員のコーディネイトのもと,活発な議論をしていただきました。
 子どもとケータイの現状につき,元中学校教諭として現場の実態に詳しい竹内氏からは,ケータイの出現による子どもたちのコミュニケーションの変容についてのお話があり,根本的には子どもたちの心の問題であることが踏まえられなければならないことが指摘されました。
 また,平成20年6月に成立したいわゆる青少年ネット規制法(又は青少年インターネット環境整備法)については,大内氏から,当初規制色の強かった自民党原案が,他政党の意見,各界の意見を取り入れて規制色の薄まった「環境整備法」として成立したこと,附則において3年後の見直しが規定されていることとの関係上,これ以上規制が強まることを回避するためにも,事業者,行政,家庭等においてさらなる取組が求められることなどが指摘されました。
 藤川氏からは,子どもたちがネットの危険性を知り,安全に利用することができるためには,教育を充実させることが必要であること,ご自身が取り組んでおられるメディアリテラシー教育の内容等についてお話ししていただきました。
 野田副委員長からは,付添人活動等の経験に鑑み,子どもたちは,考える機会を与えられれば,ネットの危険性や問題点について考え学ぶことができること,子どもの発達成長権や知る権利を最大限尊重すべきであることなどが指摘されました。

 今回のシンポジウムでは,子どもたちにとって「宝物」になりつつあるケータイを奪うことなく,かつ,子どもたちが犯罪被害等に遭わないためにはどうしたらよいだろうかという難しいテーマを取り上げました。子どもにケータイなど持たせるべきでない,との声もあるところですが,私たち大人が第一になすべきことは,子ども自身が学ぶ環境を整えること,万が一被害にあったときに子どもたちが気軽に相談できる環境をつくることが大切であるということを自信を持って確認することができたシンポジウムでした。
 ご出席者及びご協力いただきました関係者の皆様にあつく御礼申し上げます。