首都圏では,マグニチュード7程度の直下型地震がこの30年内に70%の確率で発生すると,予測されている。このほかに,わが関東弁護士会連合会管内には,一昨年の新潟県中越地震をはじめ,東海地震の対象地域である静岡・東京・神奈川・山梨・長野など多くの地震発生の危険地域を抱えている。人口が密集した都市での震災は,建物の倒壊・火災等による甚大な被害が発生し,長期間の都市機能の麻痺が予想され,被災者は苦難に満ちた生活を強いられる。
とりわけ,阪神・淡路大震災以後,「災害弱者」と呼ばれる人々が存在すること,これらの人々は,緊急時の避難行動およびその後の避難所等での生活において,周囲の支援なくしては,自らの生命・身体・財産の安全は保持できず,その尊厳さえも踏みにじられるおそれがあることが確認された。そこで,国および自治体は,高齢者・障がい者,乳幼児等特に配慮を要するもの(以下「災害時要援護者」と総称する)に対して,防災上必要な措置を講じるように努める義務が課せられた(災害対策基本法第8条第2項14号)。さらに,自治体が策定する地域防災計画において特別な配慮が求められたり,福祉避難所及び福祉仮設住宅などの設置を行うことが定められたり,内閣府において「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を発表するなどの進展がみられる。
我々弁護士及び弁護士会は,基本的人権の擁護と社会正義を実現する使命を負うものとして,大規模災害時,被災者の人権を擁護し,特に配慮を要する災害時要援護者の人権侵害を防止するという重要な役割を担わなければならない。
災害時要援護者とは,高齢者・障がい者などの避難行動を取れないという「行動弱者」のみならず,自ら災害情報を適切に把握できない「情報弱者」をも含むものであり,発災後の状況に応じて,段階的に捉えていくべきものである。特に高齢者・障がい者については,発災直後から復旧復興という過程で,配慮される施策が段階的に異なること,及び外国人の人権を保障したうえで,災害時要援護者として明確に把えること,並びに心身の発展途上にあり,大規模災害により心理面への影響を受けやすい子どもについても,災害時要援護者としての位置づけを明確にすることなどが重要である。
関東弁護士会連合会は,高齢者・障がい者,外国人,子どもも含めあらゆる災害時に援護を要するひとの人権を守ることを目的として,次のとおり提言する。
以上のとおり宣言する。
2006年 (平成18年) 9月22日
関東弁護士会連合会
以上の理由により,平成18年度関東弁護士会連合会定期弁護士大会宣言「『大規模災害に備える』-大規模災害発生時における被災者の人権を守るために-」をここに提案する。
以上