平成19年7月16日に発生した平成19年新潟県中越沖地震(以下「中越沖地震」という。)は,新潟県内を中心に,8月23日現在で,死者11名,負傷者1950名以上,損壊家屋3万9000棟以上などの甚大な被害をもたらし,240名以上の被災者の方々が未だ避難所での生活を続けている。
中越沖地震は,平成16年10月23日に発生した新潟県中越大震災(以下「中越大震災」という。)からわずか3年にも満たない時期において,しかも,中越大震災で甚大な被害を受けた地域と重なり合う範囲の地域に再び甚大な被害をもたらした点で,未曾有の出来事である。関東弁護士会連合会(以下「関弁連」という)は,度重なる災害に苦しむ被災者の皆様に対し,心からお見舞いを申し上げる。
関弁連は,前回の中越大震災の後,速やかに支援統轄本部を立ち上げ,被災者の生活不安除去のために地元の新潟県弁護士会が実施する無料法律相談その他被災者の支援活動に対し,バックアップをし,より良き被災者支援のために立法措置や法令の適切な運用の働きかけを行ってきた。関弁連は,今回の中越沖地震による被災に対しても,中越大震災と同様,新潟県弁護士会の実施する無料法律相談等の支援体制を構築するとともに,被災者の生活不安の除去,より良き被災者支援のために立法措置や法令の適切な運用のための働きかけに総力をあげて取り組む決意である。
ところで,平成7年1月17日に阪神・淡路大震災が発生し,被災者の生活に対する甚大な被害の発生をきっかけに被災者生活再建支援法が制定された。関弁連は,中越大震災以降行ってきた被災者支援についての継続的な調査研究や被災者のための相談活動の中で,同法実施の現実を目の当たりにしてきた。その中で,同制度では支援金を生活の中心である住宅本体の改築・補修などに使うことができず,しかも,支援金の金額が生活再建のために十分な金額に満たないなど,被災者の再建支援策としては不十分な部分があることが明らかとなった。関弁連は,法律の専門家の立場から同法の改正の必要性を強く認識し,改善すべき点を検討してきた。内閣府も「被災者生活再建支援制度に関する検討会」を設置し,同法の改正を検討するに至っている。
生活の中心である住宅の再建がままならないとすれば,地域社会及び地域経済の復興はおぼつかない。国は,被災者個人の生活の再建はもちろんのこと,地域社会及び地域経済の復興のためにも,実効的な住宅再建支援を行わなければならない。そのために,国は被災者生活再建支援法及び政令を改正し,住宅本体の改築・補修などにも支援金を支給し,かつ,支援金額も増額すべきである。そして,国は,今回の中越沖地震の甚大な被害に対する救済の手を法改正が間に合わなかったことを理由としてこまねいてはならず,中越沖地震の被災者についても改正法を遡及適用しなければならない。
そこで,関弁連は,今後も被災者支援のための活動に総力を挙げることを決意すると共に,被災者生活再建支援制度について,支援金の住宅本体の改築・補修などへの支給範囲の拡大及び支援金額の増額を提言し,かつ,改正法については中越沖地震の被災者についても遡及適用すべきであるとの提言を行う。
以上のとおり決議する。
2007年(平成19年)9月21日
関東弁護士会連合会
以上