「子どもとインターネットの関わりの適正化をめざして」
- 近年の情報技術革新や一般家庭への通信回線の普及に伴い,子ども達の間でも,パソコンや携帯を利用したインターネット上のサイトやネットワークサービスの利用が急速に普及する一方,インターネット上の有害な情報に子ども達がアクセスし,事件やトラブルになる事案も急増している。
- かかる現状を懸念し,昨今は,子ども達を有害情報から守ることに主眼をおいて,情報の発信・受信を規制する動きが加速している。とりわけ,各自治体で条例によって有害情報を規制するなど,行政による規制を設ける動きが活発化しており,平成20年6月には,未成年が契約する携帯のフィルタリングサービス加入の原則化をうたった「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(略称;青少年ネット規制法)が制定されるに至った。こうしたフィルタリング等のインターネットへのアクセスに一定の制約を設ける取り組みは,子ども達を有害情報から守るために有用であるといえる。
- しかし,公権力によるインターネット上の情報の受発信に対する規制の導入は,慎重に検討されるべきである。
すなわち,本来子どもは,自らの意思で多様な情報にアクセスして取捨選択し,インターネット上で自己表現し,こうした経験から成長する権利があり,規制の導入にはこの権利に対する十分な配慮が必要である。また過度な規制が,逆に子ども達から,ネット上の情報の受発信の危険性を知り,メディアリテラシー*1を身につける機会を奪うおそれがある。有害情報からの保護は家庭,学校,地域等の自主的な取り組みによって図られていくことが重要であり,規制は行うとしても子どもの発達段階に応じて柔軟かつきめ細やかになされるべきものである。
- そのためには,子ども達とインターネットの関わりの現状を十分に把握するとともに,インターネットというツールの有用性を活かしつつその有害性を克服するためにはいかなる取り組みがなされるべきかについて,より多角的な検討がなされる必要がある。
- そこで,関東弁護士会連合会は,子ども達とインターネットの関わりの現状を研究するとともに,子ども達の基本的人権を尊重しつつ,インターネットの有害な側面を克服するために民間と行政においていかなる取り組みがなされるべきか,具体的に提言したいと考える。そして,法律専門家として,関東弁護士会連合会・弁護士会・弁護士がかかる取り組みに積極的に参画していくことを決意し,ここに決議する。
*1 メディアリテラシー:〔media literacy〕多義的に用いられるがここでは,主体的に情報通信機器を使って,インターネットにおいて流通する情報を適切に取捨選択して利用し,適切にインターネットによる情報発信を行う能力のこと。
2008年 (平成20年) 9月26日
関東弁護士会連合会