子どもとケータイ・インターネットとの関わりの適正化をめざして
当連合会は,子ども(この宣言では,18歳未満の者をいう。)はケータイ(携帯電話およびPHSの端末をいう。)によるコミュニケーションを適切かつ安全に使いこなす能力を身につけることができ,かつケータイを使う機会を十分与えられるべきであるという前提に立ちつつ,他方で,子どもが自由にケータイを利用することから生じる弊害が現に存在し,これが深刻な問題であることを認識したうえで,子どもとケータイを通じたインターネットとの関わりをより適正かつ安全なものにするため,次のとおり提言する。
第1 一律に規制することの是非
- 子どもがケータイを所持することを一律に禁止するといった規制は,法律および条例等形式の如何を問わず,認めるべきではない。
- 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(略称:「青少年ネット規制法」)」は,施行後3年以内に見直しをすることを定めているが,この見直しにあたっては,子どものケータイ所持を一律に禁止することや利用者のフィルタリング設置を義務づけたり,これに違反した場合の罰則の制定など,現行規定より規制を強める方向での改正をするべきではない。
- 学校は,学校外におけるケータイの所持ないし使用を禁止する校則,その他これに類するルールをつくるべきではないし,学校内におけるケータイの所持ないし使用に関する校則,その他これに類するルールを制定する場合には,子どもおよびその保護者の意見を聞いたうえ,子どもないしその家庭の個別事情に十分配慮しつつ,その実情に合った校則,その他これに類するルールをつくるべきである。
第2 教育のあり方
- 親および教育関係者をはじめとする大人は,互いに連携をとりつつ,子どもを取り巻く社会的状況,ケータイの持つ特性,子どものケータイ利用状況等を正確に把握し,子どもの成長過程に応じて,適切な指導・教育をするように努めるべきである。
行政は,これらの指導・教育が十分なされるように支援し,また,事業者は,親および子どもに対するケータイの適正かつ安全な利用に関する啓発活動を行うべきである。
- 小中学校の学習指導要領に新たに盛り込まれた情報モラル教育の質を一層高めるとともに,さらに,メディアリテラシー(*注)教育を学習指導要領に盛り込み,教育現場においてはメディアリテラシーの観点を重視した教育を行うべきである。
第3 家庭におけるルール作り
- 家庭内におけるケータイの利用については,子どもがケータイの利用によってトラブルに巻き込まれたり,ケータイ依存に陥って健康を害したり,生活習慣を乱すことを防ぐために,親と子どもが十分に話し合い,親と子どもが自主的にルール作りをすることが必要であり,また,行政,学校,事業者においても親子の自主的なルール作りを側面から支援するように努めるべきである。
- 事業者は,家庭内でのルールに実効性を持たせるために,家庭内でのコントロール(ペアレンタルコントロール)が容易になるような多様化したシステム作りおよびサービスの提供をしたうえで,これについて利用者が容易にサービスの内容を選択し,利用できるような説明の工夫と環境作りに努めるべきである。
第4 子どもの保護のための環境整備
- 事業者は,より細やかで実効性の高いフィルタリングサービスを提供するとともに,これについて利用者が容易にサービスの内容を選択し利用できるような説明の工夫と環境作りに努め,行政は,これに対する十分な支援を行うべきである。
- 立法府は,権利侵害情報による被害拡大を防ぐために,利用者がより利用しやすい発信情報の開示手続や権利侵害情報の削除手続を取ることができるように,「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(略称:プロバイダ責任制限法)」などの法改正も含めて検討すべきであり,また,事業者は,明らかに違法な情報がインターネット上に流れている場合には,この情報の削除を含む迅速かつ適切な対応方法を速やかに検討すべきである。
- 行政は,インターネットをめぐって生じたトラブルについて,心理学,教育学の専門家,弁護士などが協力して総合的に相談に応じ,かつ,子どもが安んじて相談できる相談窓口を設けるべきである。
- 弁護士会は,子どものケータイをめぐるトラブルについての相談窓口を設け,弁護士は,これらの相談について適切な対応ができるような知識を身につけるよう研鑽に努めるべきである。
第5 各所連携の仕組み作り
- 行政は,子どもとケータイをめぐる問題について,各府庁間の連絡をより一層密にし,統一的な施策を検討すべきである。
- 地域においては,行政,教育関係者,保護者,PTA,NPOなどの間で連絡協議会を立ち上げ,子どものケータイをめぐる問題について,協議を行う場を設けるべきである。
- 連絡協議会における協議においては,子どものケータイをめぐる地域のトラブルの解決策を話し合う他,家庭内や地域において居場所がない子どもが,ケータイに依存する実態があることに鑑み,地域において子どもの居場所を提供するように努めるべきである。
以上のとおり宣言する。
2009年(平成21年)9月25日
関東弁護士会連合会