関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

女優
戸田恵梨香さん

とき
平成24年4月5日
ところ
ANAインターコンチネンタルホテル東京(港区)
インタビュアー
会報広報委員会副委員長 西岡毅

 今回の「わたしと司法」は,映画,ドラマでご活躍中の女優,戸田恵梨香さんです。現在,毎週月曜夜9時から放送中のフジテレビ系のドラマ「鍵のかかった部屋」で弁護士役を演じられているということで,弁護士のイメージや役作りについて色々と語っていただくとともに,合わせて,女優業についても色々お話を伺って参りました。

まずは,女優業一般についてお尋ねします。作品の中で色々な役を演じられているわけですが,撮影が終わったら,役の中の気持ちをすぐリセットできるものなんですか。

戸田さん そうですね,リセットできていると思います。

相手を好きになったり憎んだりする役でも,撮影が終わった後は普通に接することができるんですね。

戸田さん 全く普通です(笑)。でも,撮影中に相手の役者さんとあんまりコミュ二ケーションをとっていなくて,その相手の役が嫌な役だったら,「あぁ,嫌な人なんだな。」って思うかもしれませんけど(笑),基本的にはそういうことはないですね。
 昔,面白いと思った話があるんですけど,例えばラブシーンがあるとするじゃないですか。女性は役が終わるとすぐに切り替えることができて,相手の人に恋をするわけじゃなくて,よくも悪くも撮影が終わった瞬間に切り替えるんですけど,男性の役者さんはすごく引きずるという話を聞いたことがあります(笑)。女性はその辺りはドライですね(笑)。

勉強になります(笑)。演じるときに,素の自分に近い役とそうでない役とでは,どちらの方が演じやすいというのはありますか。

戸田さん 自分に近い,近くないという点ではあまり差がないですね。でも,キャラクター性が強い役の方がやりやすいというのはあります。日常の普通の女性を演じることの方が難しいというか,お芝居をしていながらお芝居をしていないように見せるというお芝居が究極で難しいと思います。

戸田さんの場合,どうやって役作りをしていくんですか。

戸田さん 監督,プロデューサー,その他のスタッフの方や共演者の方とも話し合いをしながら,自分の役のことだけでなく,作品全体のことも考えながら役を作り上げていきます。皆で話し合った上で実際にやってみて,動いてみて,全体を見て,という感じですね。

戸田さんは,ご自分の作品をご覧になりますか。

戸田さん 私は必ず見るようにしています。自分のシーンだけでなく,作品全体の世界観を知っておきたいし,自分の役がどのように映っているのか,自分のお芝居がどうだったのかも確認するようにしているんです。
 でも,役者さんの中には,自分の作品は絶対見たくないという人もいますね。共演者の方に,「あのシーン,すごく面白かったですね。」と言っても,「見てないから分からない。」と言われることがあります(笑)。

女優業では台詞を覚えるのが大変かと思うんですが,いかがですか。

戸田さん 実は,自分が一方的に喋るのはすごく覚えやすいんです。
 でも,掛け合いだと結構難しくて,自分の台詞が多いわけではなくても苦労します。相手の台詞を聞いているうちに,自分の台詞をふと忘れてしまうこともありますし,そもそも相手の台詞も完璧に覚えていないと掛け合いはできないわけですし。

戸田さんの場合,台詞はどうやって覚えるんですか。

戸田さん 独りでぶつぶつと言いながら覚えてます(笑)。でも,「よし,覚えた!」と思っていても,実際に現場に立つと忘れちゃったということもありますね(笑)。

そういうときはどうするんですか。アドリブで言ったりすることもあるんでしょうか。 

戸田さん アドリブで言うことはないです。撮影の合間に台詞をチェックしながらやっています。

ドラマや映画の撮影のときはどのくらい拘束されるんですか。

戸田さん その時の現場にもよりますけど,大体連続ドラマだと3か月半,映画だと1か月から2か月程度で終わることが多いです。撮影期間中は,ほぼ一日中,現場で拘束されていると思います。

そういう撮影のときは,睡眠不足というか睡眠なしということですか。

戸田さん 撮影の合間に失神するように寝ていますね。でも,私以上にスタッフの方々は大変です。私より先に来ていて,撮影が終わってからも片付けや次の準備をしているわけで,スタッフの方々は本当にすごいなと頭が上がらないです。
 本当に尊敬しています。

共演者やスタッフのみなさんで食事に行くことはあるんですか。

戸田さん ありますね。食事会をすると,皆さんそれぞれが何を考えているのかとか,どういう方だとかいうことも知ることができます。それによって,チームが強くなる気がします。

現在放映中のドラマ「鍵のかかった部屋」についてお尋ねします。今回の共演者は大野智さんと佐藤浩市さんですが,チームの雰囲気はどんな感じなんですか。

戸田さん 穏やかな雰囲気です。すごく喋る人がいるわけではないし,かといって喋らない人達でもないので,のほほんとした雰囲気ですね。
 あとは,ゲストの方によって雰囲気が変わります。例えば,第2話で中村獅童さんが現場に来て下さったときは,獅童さんは本当に面白い方なので,笑いの絶えない雰囲気でしたね。

ドラマで弁護士を演じられるにあたって,台詞の難しさといったご苦労はありませんでしたか。

戸田さん 惜しいことに,弁護士の役とはいっても,法廷のシーンはないですし,依頼者から法律相談を受けるシーンもないんです。ですから,法律の専門用語とかは必要なくて,その点では大丈夫でした。

弁護士役ということで意識されたことはありますか。

戸田さん 例えば法律事務所にいるときの立ち振舞いとして,姿勢を正すことを意識しました。あとは,弁護士さんというのは,すごく勉強し続けて,コツコツやってきた方々だという印象なので,相当真面目だし,ちょっとお堅いところも少なからずあるんじゃないのかなと思って,椅子の上で正座したりしてます(笑)。真面目すぎてちょっと変というキャラクター設定なんです(笑)。

元々は,弁護士に対してどういうイメージをお持ちでしたか。

戸田さん 私が描いていたイメージというのは,ストレートでタイトなスーツを着てピシッとして,いわゆる格好いいというイメージです。

ありがとうございます,それ,書いておきますね(笑)。今回の役でも,衣装選びはそのイメージを意識されたのでしょうか。

戸田さん 今回の私の衣装は,タイトなスーツではなく,かなりオーバーサイズなんです。ちょっとぽっちゃり体型用の服を着ているんです。パンツのウエストだけは詰めてもらっているんですけど,足回り,腰回り,腕回りなどもボテッとしているんです。
 このドラマの監督に,今回の弁護士役についてのイメージをお尋ねしたら,就職活動で一生懸命色々な所をまわっているんだけれども,どうすればいいのか分からなくって,おしゃれもしたいけどどうしたらいいのか分からなくて,何となく着てみた感じで,可愛いのに惜しいという感じだとのことだったんです(笑)。

なるほど(笑)。

戸田さん あと,クラスの端っこの方にいてずっと独りで読書をしているんだけど,実は顔だけ見ると可愛いとか,そういった地味な女の子のイメージがあって,こういう衣装になったんです(*本紙掲載のお写真の衣装です)。このベージュの色身を選んだことで柔らかさが表現されているので,私はこの衣装を着ると気持ちが緩くなります。衣装合わせは面白かったですね。

衣装一つとっても,そんな意味が込められているんですね。ところで,弁護士には大きく分けて,今回のドラマのように企業法務を主に扱う弁護士と,一般民事事件を主に取り扱っている弁護士がいますが,もし戸田さんが弁護士をするとしたらどちらを希望しますか。

戸田さん 企業法務系の方でしょうか。一般民事事件の方だと,結構精神的に疲れる気がします。人の汚いところとか聞いたりすると精神的にダメージを受けるタイプの人間なので,私にはちょっと合わない気がします。

刑事事件はいかがですか。今回のドラマの役では,刑事事件に巻き込まれていくわけですが。

戸田さん 刑事事件にはなるべく携わりたくないですね(笑)。怖くて勇気がないです。

裁判員裁判が始まって約3年になりますが,裁判員に選ばれたらどうですか。

戸田さん 私によって何かが変わる,私の一つの決断によって日本国という島が変わるかもしれない,というのはちょっと荷が重いですね。
 もちろん,女優という仕事をしている以上,誰かしらの人生を変えていることはあると思うんです。昔,お手紙をもらったことがあって,自殺を何度も図った方が,その当時私がやっていた役に励まされて生きようと思いましたと,そういうお手紙がきたことがあります。そのときは,本当に,私たちのやっている仕事というのは,誰かの人生を左右する仕事なんだなって思いました。

話しは変わりますが,街中を歩かれるときに変装をされたりはしますか。

戸田さん 帽子,サングラス,眼鏡とかで変装したりすることもありますが,何もしないときもあります。

大丈夫なんですか。

戸田さん あんまりバレないんですよ,私(笑)。

今度,街中でお探ししてみますね(笑)。今日はどうもありがとうございました。

PAGE TOP