従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。
政治学者
舛添要一さん
シリーズ第15回の「わたしと司法」のわたしは,政治学者の舛添要一さんです。舛添さんは,東京大学法学部政治学科助手,パリ大学現代国際関係史研究所客員研究員,ジュネーブ高等国際政治研究所客員研究員,東京大学法学部政治学科助教授を経て,現在は舛添政治経済研究所所長として論壇,テレビ等でご活躍中です。最近では政治問題にとどまらず,介護の分野でも多数の著作を発表されています。
―現在司法改革がさかんに議論されていますが,舛添さんからみて,司法の改善すべき点としてどのようなものがありますか。
舛添さん 今最も大きな時代の変化として,IT,グローバル化,介護など少子高齢化問題が挙げられます。これらの変化にあらゆる制度が対応しないといけないが,政治も霞ヶ関の行政システムも,そして司法も全く対応できていない。例えばITに関していえば,インターネットで仕事ができる時代に,司法の世界では未だに難解な専門用語やら書面の様式などを堅持している。内容証明など,メールでできるようになればいいのに,と思います。
―グローバル化という点についてはいかがですか。
舛添さん 裁判官など公務員についていえば,政治や行政同様,日本国籍という盾があるために改革が難しい。資格や国籍条項にあぐらをかくのはそろそろ止めるべきだと思います。また,陪審制度をどうするかという問題も,要は世界で最もいいものを取る,という発想で議論すべきです。
個々の法曹にしても制度にしても,司法の世界には競争的な部分が欠けていると思います。
―弁護士会内部では,法曹人口の増加によって弁護士も競争の時代になるといわれていますが。
舛添さん それでも数が限られているのに変わりはないし,何より料金体系が不透明だから,利用者は比較ができないですよね。
私は一時期自分の馬を持っていて,競走馬の調教師の世界に接したことがあるんですが,調教師と弁護士と,共通するところがあると思います。調教師も,そもそも数が限られている。自由競争がなく,価格が不透明。ギルドで,外国人を入れない。誰の責任で勝ったか負けたか曖昧で,したがって勝負に勝とうというインセンティブがない。
―非常に耳の痛い話ですが……。そのような状況を変えていくには,どのようなことが必要だと思われますか。
舛添さん やはり先に話したIT,情報通信が風穴を開けると思います。すべての弁護士事務所がホームページに活動内容を出し,公明正大な賃料体系を作って,利用者がネットで見積りが取れるようになれば,自由競争が生まれます。
また,弁護士業務の多様化という点でも,ITは大いに活用できると思います。例えば私のホームページには,1年で1万件のアクセスがあります。情報の受発信がこのように変化をする中で,全国,全世界の人が見ることができる「店」を開けているというのは,非常に意味があること。弁護士業務がバーチャルでできるようになれば,事務所のスペースがいらなくなって費用も安くできるはずだし,業務の幅も広がるでしょう。
―具体的には,今後の弁護士の活動にどのようなことを期待されますか。
舛添さん 現在行われているボランタリーな法律相談等と,本来の業務である訴訟活動との中間的なもの,予防法務や,問題提起型の活動が増えればいいと思います。
予防法務については,企業の予防法務を扱う弁護士は多いかもしれないですが,一般の人も,紛争になる前に気軽に弁護士に相談できるようになるといい。
それから,問題提起型の活動というのは,例えば,法律の不備を指摘したり,システムの批判をするなど,改革のてこになるような活動。家庭内暴力やセクハラなどの新しい問題に対しては,特にこのような問題提起型の活動が重要になってくると思います。
今は本当に新しい問題がどんどん出てきています。例えば,これから電子決裁の時代になれば,そこにおけるトラブルが問題になってくる。弁護士の皆さんにとっても,おもしろい時代になるんじゃないかと思います。
―お忙しいところありがとうございました。