従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。
北海道日本ハムファイターズ 投手
斎藤 佑樹さん
今月号の「関弁連がゆく」は,「ハンカチ王子」の愛称でおなじみの斎藤佑樹さんです。斎藤佑樹さんは,早稲田実業高校に入学,2006年には夏の甲子園でエースとして登板してチーム優勝され,その後早稲田大学に進学して,2010年には大学リーグ戦でエースとして登板して優勝されました。大学卒業後は北海道日本ハムファーターズに入団し,現在も同球団で現役のプロ野球選手としてご活躍をされています。今回のインタビューでは,斎藤佑樹さんの野球人生について,お話を伺いました。
― 野球人生は何年になりますか。
斎藤さん 小1からなので,22~23年です。
― 他のスポーツはやられたことはないのですか。
斎藤さん 小さいときは水泳や空手もやっていましたよ。
― いつ頃からプロ野球選手を目指されていたのですか。
斎藤さん 小学校で野球を始めたときに,親から「プロ野球選手になるつもりで」と言われていました。まさか無理だろうと思ってたんですけど(笑)。本気でなろうと思ったのは,高校1,2年生ぐらいのときですかね。
― 甲子園で活躍された頃からだったのですね。
斎藤さん そうですね。高校に入ったときに,プロ注目の選手が先輩達にいるわけですよ。こういう感じだったらプロ野球選手になれるんだなって,イメージが湧いたので,まずそこを目指すという感じでしたね。
― 甲子園での優勝に辿り着くまでは野球漬けの高校生活だったと思いますが,お休みはありましたか。
斎藤さん 年末年始に5日間ぐらいあった以外はないですね。あとはずっと練習です。でも僕の高校は文武両道がテーマとしてあったので,野球部の練習は夕方から19時ぐらいまでで終わるんですよ。その後は自主練習になります。だから遅くても22時には家に帰れていました。
― 高校時代,お勉強は得意でしたか。
斎藤さん 苦手でした(笑)。僕はスポーツ推薦で高校入学して,周りは一般入試で入った生徒ばかりだったんで,ついていくのがやっとでしたね。
― 甲子園に出られたときに,ポケットから出した青いハンカチで汗を拭いていたお姿が印象的で,「ハンカチ王子」というニックネームがついて大人気でしたよね。そのニックネームは気に入っていましたか。
斎藤さん 当時は,「ハンカチ王子」なんて自分の名前とは全然違う名前をつけられてちょっと嫌だなって思っていたんですけど,今はすごく有難いと感じています。今でも「斎藤佑樹」という名前よりも「ハンカチ王子」として知ってもらっている方が多いので,その名前に助けられたことはありますね。
― 私も当時の爽やかなお姿とともに「ハンカチ王子」の愛称は印象として強く残っていますので,斎藤さんとお呼びするのはなんだか違和感がありますね。「ハンカチ王子」とお呼びしてもいいですか(笑)。
斎藤さん 全然いいですよ(笑)。ちなみに,略すなら「ハンカチ」よりは「王子」のほうがいいです(笑)。
― では,「王子」と呼ばせていただきます!練習中も汗を拭くときはハンカチだったのですか。
斎藤さん そうですね。僕らのチームは大体みんなポケットにハンカチを入れていましたよ。ですから本当はみんなハンカチ王子だったんです(笑)。
― ハンカチが青色だったのは意味があったのですか。
斎藤さん たまたま最初の試合に使ったのが青色のハンカチで,それで試合に勝ったので,縁起がいいから使い続けただけです。1枚を洗って使い,洗って使いってしていました。
― 王子とともに甲子園優勝まで経験したその縁起のいいハンカチは今どこにありますか。
斎藤さん どっかにはあると思うんですけど,今どこにあるか分かりません(笑)。
― 高校卒業後の選択肢として,プロ入りするか,それとも大学進学するか,というのは迷われましたか。
斎藤さん 少し迷いましたが,元々僕は大学行きたいっていう気持ちが強かったんです。プロからのお誘いはありましたが,それは僕がたまたま甲子園で優勝したからこその流れなんです。ですから,今ちょっと調子がいいからすぐプロ入りするという選択肢ではなく,元々考えていた大学進学という選択肢を選びました。
― 大学進学のお気持ちが強かったのはどうしてですか。
斎藤さん 早稲田のユニフォームを着てプレーしたいっていう思いが強かったんです。僕が中3の時かな。鳥谷さん(鳥谷敬選手)とか青木さん(青木宣親選手)とかが大学4年生でプレーしているのを観に行ったんですよ。そのとき早稲田のユニフォームかっこいいなと思って。
― 大学卒業後は他の道に進むこともお考えになっていましたか。
斎藤さん 他の道はほとんど考えてなかったです。やっぱり将来はプロ野球選手という目標が大前提としてあったんで。もし大学4年間を経てプロに行けないような選手だったら,高校卒業後プロに行ったとしても活躍できないだろうって思っていました。
― 当時は日本中の注目を受けている中で大学生になられましたよね。他の1年生と扱いが違うとか,そういうことはなかったですか。
斎藤さん 先輩はただの1年生として僕を平等に扱ってくれたので,特別に僕がいじめられたとか,特別にいい思いをしたりとかはなかったですね。
― 大学でも野球漬けの生活でしたか。
斎藤さん 高校時代に比べて大学時代の方が野球以外の時間はありました。練習を夜遅くまですることはなかったですね。
― 大学時代の1番の思い出は何ですか。
斎藤さん やっぱり野球で優勝したことですね。あと,早慶戦で自分が投げて勝ったことが嬉しかったですね。中学のときから観ていた舞台なので,自分が早稲田のユニフォームを着て投げてるときに,やっと早慶戦まで来れたんだなと思いました。スポーツ推薦で早稲田のチームに入ってもレギュラーとして出られない選手って沢山いるんですよ。もちろん厳しくて辞めちゃう選手もいて,早慶戦に選手として出るのは簡単じゃないんです。そう考えたらエースとしてマウンドに立っているということがすごく嬉しかったです。
― 観客全員が自分を見ている中で勝負を決める一球一球を投げていくというのは,とてつもない重責だと思いますが,緊張はされますか。
斎藤さん 慣れはありますけど緊張します。特に大学4年になってからはキャプテンでもあったので,ピッチャーとしてチームのみんなの最後の年をどうやって飾れるかというのを考えていましたね。
― 大学で日本一という結果を残して,いざプロになる時のお気持ちはどうでしたか。
斎藤さん 嬉しいという気持ちもありましたが,大学4年間を無事に終えてプロに入れたということにほっとしたという気持ちが強かったです。大学進学して,もしかしたらプロに入れないかもしれない,怪我するかもしれないというリスクもあったので。
― 怪我をしないように心がけていることはありますか。
斎藤さん ストレッチをちゃんとすることが大事ですね。18歳の頃は準備運動とかストレッチとかしなくても,最初からいきなりビュンって投げられましたけど,29歳になった今はちゃんと準備運動して,ストレッチしてからじゃないと動くのが怖いですね。
― 体調管理で気を付けていることは何ですか。
斎藤さん ちゃんと寝ることです。7時間は寝たいです。出来るならもっと寝たいです。キャンプ中は21時にはベッドに入っていますね。
― ベッドに入ったらすぐに眠りにつきますか。
斎藤さん ベッドに入ってすぐはYouTubeとかテレビでお笑いを観ています。でも15分くらい後にはだいたい眠っていますよ。
― お笑いを観ることでリラックスされているんですね。他にストレス解消のためにしていることはありますか。
斎藤さん ストレスはそんなに溜まらないんですよ。
― 有名な選手の宿命としてインターネットでいろいろ書かれることもあると思いますが,気になりませんか。
斎藤さん プロになって1,2年目ぐらいの時からインターネットは見ないようにしています。こんな記事を書いてくれたんだ,嬉しいな,と思うことはあるんですが,嫌な記事も沢山あるので,だったら両方見なきゃいいと思って。新聞は見ますけど。
― 人の評価はあまり気にしないタイプですか。
斎藤さん 気にしないようにしていますね。人の評価が大事なのは分かっているんですが,気にしても仕方がないと。
― プロ野球選手は,普段はどんな生活をされているのですか。
斎藤さん シーズン中は,2軍の選手だったら,朝9時,10時から練習が始まります。イースタンリーグって大体毎日あるんで,13時試合開始,15時,16時ぐらいに終わって,そこから自主練習して,ということの繰り返しです。月曜日は休みが多いですね。
― お休みの日は何をされていますか。
斎藤さん シーズン中はあまり外に出たりしないで,家でDVDを観たりしています。
― 普段は何を食べられていますか。
斎藤さん 朝ごはんは,玄米,味噌汁,納豆。自分で用意します。炭水化物はそんなに取らないですね。あとはタンパク質多めとか,鶏肉は胸肉の方がいいとか,意識しています。それとは別に,好きな食べ物は焼肉です!
― お酒は飲みますか。
斎藤さん 飲むときは飲みます。シーズン中はあんまり飲まないですね。飲むと眠れなくなるので。
― 高校野球と大学野球とプロ野球を比べて,違いはなんですか。
斎藤さん 高校野球はスポ根というか,熱くて,仲間のために頑張るという気持ちが強かったです。大学,プロになっていくと段々それがなくなります。その代わり,自分の技術の方に気持ちが移行してくるイメージです。
― チームメイトとの関係にも違いはありますか。
斎藤さん あります。高校だったらチームメイトと授業も一緒に受けるし,野球だけじゃないことを沢山するんですが,プロだとそういうことはないので。プロというのは自分自身が気持ちを強く持たないといけない世界なんだなと思います。
― 厳しい世界だと聞きます。ファンとの関係というのはどうですか。
斎藤さん ファンの存在というのは力になります。高校野球とプロ野球で違うのってそこだと思うんです。ファンとの距離,ファンの多さとかがすごく違うので,プロ野球選手はファンに支えられて成り立っていると思います。
― ファンからいただいて嬉しかった言葉はありますか。
斎藤さん 言葉として嬉しいことはいっぱいあり過ぎて,これというのはないんですが,2012年に肩を壊したんです。その時に,周りにいた色んな人達がサーッといなくなるということを感じたんです。でも,ずっと応援してくれているファンの方は,変わらず応援してくれていたので,それは僕にとって,まだまだ頑張らなくちゃいけないんだと思わせてくれた出来事でしたね。
― 長い野球人生で一番嬉しかったことは何ですか。
斎藤さん 振り返ってみると,それはやっぱり甲子園での優勝ですね。自分にとっては自信となる出来事でした。
― これまで,甲子園で優勝,早稲田のユニフォームを着て優勝,プロ野球選手になる,という目標を達成されてきていますが,次の目標は何ですか。
斎藤さん チームが優勝すること,そのチームの輪の中心にいることです。2ケタ勝利を目指しています。
― プロ野球選手になっていなかったら,どんな職業についていたと思いますか。
斎藤さん 実は中学生の時に弁護士になりたいと思っていたんです。あと救急救命士。本当は早稲田の法学部に入りたいと思っていたんですけど,成績が悪くてダメでした。
― 野球を辞めた後に司法試験というのもあり得るんじゃないですか。
斎藤さん あり得ないです(笑)。今からそんなに頑張れるかな。
― 弁護士になりたいと思われていた時期は弁護士にどんなイメージをお持ちだったのですか。
斎藤さん 人を助ける,かっこいい,口が達者,というイメージでしょうか。弁護士って,自分とはかけ離れた遠い存在に感じていました。
― 実際会ってみてイメージは変わりましたか。
斎藤さん イメージよりも柔らかいですし,話しやすいです。お堅い感じはないです。
― 女性弁護士は気が強そうとか,口喧嘩したら負けそうとか,男性から言われることが多いのですが,そんなマイナスイメージないですか。
斎藤さん マイナスなんてないですよ。僕も口は達者ですし,気も強い方なんで(笑)。
― 嬉しいお言葉をありがとうございます!ついでに好きな女性のタイプを教えてください(笑)。
斎藤さん ちゃんとした人が好きですね。
― 将来野球選手を引退した後の夢はありますか。遠い将来の夢,ということで。
斎藤さん 野球選手を辞めた後のイメージはあんまりないんですよね。まず家を持ちたいかな。家族も持って。老後は富良野でブドウ畑やってワイン作りたいなとかでしょうか。
― のんびりしていて良さそうですね。本日はありがとうございました。今後のご活躍を期待しております!