従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが,このたび司法の枠にとらわれず,様々な分野で活躍される方の人となり,お考え等を伺うために,会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。
androp ギタリスト
佐藤 拓也さん
今回の「関弁連がゆく」は,ロックバンドandrop(アンドロップ)のギタリスト,佐藤拓也さんです。
andropは,テレビのCMソングやドラマの主題歌などでもお馴染みですが,今年結成10周年ということで,これまでより一層精力的に活動されています。
そんな佐藤さんに,バンド結成までのこと,ギターやギタリストのあれこれなど,色々とお聞きしてきました。(androp:vocal&guita 内澤崇仁/guitar&keyboard 佐藤拓也/bass 前田恭介/drums 伊藤彬彦)
― バンド結成はいつですか。
佐藤さん 明確な結成日というのはなくて,今のメンバー4人が揃ったのが2008年末になります。andropは,元々ボーカルの内澤君がそれまでやっていたバンドを解散した後に一人で始めて,サポートメンバーを入れて活動していたんですが,サポートではなく固定のバンドとしてやりたいということで,メンバーを集めてできたバンドなんです。最初に僕が入って,次にベースの前田君が入って,ドラムの伊藤君が入りました。
― andropのメンバー募集はどうやって知ったんですか。
佐藤さん 僕も元々バンドをやっていて,下北沢にあるライブハウスに出ていたんですが,そのとき内澤君が当時やっていたバンドと対バン(*複数のバンドでライブを行うこと)したり,CDの交換をしたりしていて,そのなかで声がかかったというのがきっかけです。
― 佐藤さんのandropに入るまでの音楽活動について教えてください。
佐藤さん バンドは中学生の時に学園祭に出るために初めて結成しました。それまでは,小学生の時からピアノを習っていました。ギターは,中学生の時に父親がギターを教えてくれたのがきっかけで,一人でポロポロ弾いていて,それで,バンドやりたいってなって,学園祭に出るかってなって,始めました。曲はコブクロの「YELL〜エール〜」という曲と,ビートルズの「Let It Be」をやりました。
― 学園祭で結成したバンドはその後も続いたんですか。
佐藤さん
そのバンドは学園祭用だったので,それで終わりました。ただ高校2年生の1年間は,他校の人たちに誘われてバンドを組んで,そこからのめり込んでいきました。そのバンドに入ってから洋楽のロックを聞くようになって,オリジナル曲もやるようになりました。
岡崎市(愛知県)にある「岡崎CAM HALL」というライブハウスで,月に2回くらいのペースで定期的に演奏してたんですが,2000円のチケットを毎回友達に買ってもらうわけにもいかず,少ないときは3人,多いときでも20人位しかお客さんがいなかったです。
― そんなに活動していたバンドを1年で辞めたのはどうしてですか。
佐藤さん 僕は元々東京へのあこがれが強かったので,東京の大学に行くために高校3年生のときは受験勉強するって決めてたんです。バンドメンバーにも3年になったら辞めるって言っていて。それでバンド辞めて高校3年生の時は受験勉強をしていました。
― 東京に出た後は音楽だけをやるとか考えていたんですか。
佐藤さん いや,何も考えてなかったです。とりあえず大学に入ろうと。
― 意外ですね,高校で音楽にハマった人は「プロになるんだ!」と意気込んで東京に出ていく人が多いのかと思っていましたが。
佐藤さん 音楽は好きでしたけど,当時はこれで食っていけるとまでは思っていなかったので。その後結局は埼玉にある大学に入って,バンドサークルに入りました。そこで先輩にバンドに誘われて,ライブハウスに出るようになって,そこから本気で外に向けて活動を始めたという感じです。そのバンドは5年くらい,大学卒業しても続けていて,そのバンドで内澤君のバンドと対バンするようになったんです。
― そこでandropにつながるんですね。大学卒業後は就職しなかったんですか。
佐藤さん しなかったですね。バンドで稼げているレベルではないですけど,バイトをしながらやっていました。
― その頃ギターの練習はどのくらいされていましたか。
佐藤さん 1日中弾いてることもありましたね。あとは,週に2,3回はメンバーとスタジオに入っていました。ライブも月に2,3本はやって,下北沢とか渋谷のライブハウスに出たりとか,みんなで買った中古のステップワゴンを運転しながら地方のツアーも回っていました。
― ちなみに,お一人でギターを練習する時は立って練習しますか。
佐藤さん 立ってやる時もありますし,座ってやる時もありますね。
― 毎回アンプには繋ぐんですか。
佐藤さん いえ,僕の場合,ギターをパソコンに繋いで,ヘッドフォンで音を確認しながらやりますね。
― 当時はどんな曲を演奏されていたんですか。
佐藤さん オリジナル曲で,ギターロック,ポップですね。
― andropの曲のほとんどはボーカルの内澤さんが作られているということですが,新しい曲ができたときはどういう形で受け取るんですか。
佐藤さん 結成当時はCD-Rでもらっていましたね。すでに完成したものが入っていて,最初は度肝を抜かれました。今もデモ音源のクオリティはかなり高いです。
― ギターのフレーズも内澤さんが作られているんですか,それとも佐藤さんのオリジナルで作るんですか。
佐藤さん 最初は内澤君から「このフレーズを弾いてくれ」と言われたので,それを耳コピ(*楽譜無しで,音源だけを聞いてフレーズをコピーすること)で完全に再現しました。結構難しいので死ぬほど練習しましたよ。最近は任せられることが多いです。
― ライブをやるときは,バンドでの練習はどのくらいされるんですか。
佐藤さん 今と昔で全然違いますが,一番最初は一本ライブをやるために,リハーサルに1年かけました。週6,7でスタジオで練習して。今だとリハーサル1,2回かな。内澤君がライブを意識してデモを作ってくるので,CDを作る段階である程度は固まっていますね。
― andropのライブを拝見したことが何度かありますが,とにかくクオリティが高いですよね。CDとほとんど同じだと感じました。
佐藤さん スタッフが優秀なので音のバランスとかうまくとってくれるんですよ(笑)。
― ロックフェスのように,1日に入れ替わり立ち替わりたくさんのバンドが出るイベントでは,リハーサルはどうやるんですか。
佐藤さん フェスでは,事前のリハーサルは無くて,出番の直前にステージに出て何曲か出だしの音を出して音の確認をするだけです。
― バンドメンバー間ではお互い意見を言い合ったりするんですか。
佐藤さん andropは内澤君の作ってきた曲を演奏するので,基本的には内澤君のやりたいことを尊重しますが,メンバーもここはこうしたほうがいいよとか,意見は言います。内澤君も柔軟なのでお互い意見を言い合って決めていくっていう感じですね。メンバーの仲は良いほうだと思いますし,地方でのライブ後にはメンバーで飲みに行きますよ。
― 使っているギターについて教えてください。メインはテレキャスター(*フェンダー社のエレキギター。同じくフェンダー社の代表的ギターであるストラトキャスター以前の機種で,エレキギターの原点と言われることもあるモデル)ですよね。その中でもヴィンテージというのは音が違うんですか。
佐藤さん 音が良いか悪いかというと好みの問題ですけど,僕は1967年のヴィンテージを使っていて,50年間使われてきたギターという点で,できたばっかりのギターとはモノが違うんですよ。今は使われていない木材・パーツが使われていたりとかしますし,長年使われたことで物質としてのカドと音のカドが取れて,いい感じになってきます。ギター自体が音を鳴らせば鳴らすほど,その振動に対していい状態になっていくんです。ですから,音が良いかどうかは好みとして,鳴らしたときに手に馴染むし,バンドの音にも馴染む,という感じです。もちろんジミヘンとかが活躍してた当時につくられたギターという意味で,気持ちも違ってきます。
― andropの曲で,このギターは難しい,というのはありますか。
佐藤さん 全部です。とくに内澤君が作ったフレーズっていっぱいあるんですけど,他人が作ったフレーズって自分の手癖じゃないので,完璧に弾くのって結構難しいんですよ。
― 佐藤さんが特に聴いてほしいギターソロが入った曲を教えてください。渾身のギターソロ。
佐藤さん 「Joker」という曲のギターソロは完全に任せられて作ったんですけど,最初どうしようかな,と思っていたときに,沖縄に一人旅に行ったんですね。それで沖縄のバーを回っていたときに,とあるバーになぜかエフェクター(*エレキギターの音色を変える装置)の「ファズ」(*ギターの音色を歪ませるエフェクター)が「ドリンク1杯付6000円」で売っていて,酔っぱらいながらもよく見せてもらったら,その「ファズ」がレアで超名器なことに気づいて。普通に買ったら何倍もの値段が付くようなやつですよ。「買います」と言って,それを手で持って次のバーに行きました(笑)。そのエフェクターを「Joker」のギターソロで使ったらばっちりハマって(笑)。道具は出会いですね。
― お仕事でギターを弾かれていますけど,今でもギターは好きですか。
佐藤さん ギター好きですよ!家でもポロポロ弾いてます。
― ちなみに弦の交換頻度はどのくらいですか。
佐藤さん ライブの時は毎回変えますね。
― 弦の交換直後はチューニング(*ギターの弦の調律)が不安定になりませんか。
佐藤さん そこは,弦を何度も引っ張って安定させてます。
― お話を戻して,佐藤さんの音楽のルーツを教えてください。
佐藤さん 大元は父親が聞いていたビートルズとか,吉田拓郎とかのフォークソングですね。その後ラウド系の音楽にハマり,洋楽にどっぷりハマり,ロックフェスにハマり,というようにいろんなジャンルの音楽を聴いてきましたね。
― ビートルズ好きの方には定番の質問ですが,メンバー4人の中では誰派ですか。あと,一枚好きなアルバムを選ぶとしたら何ですか。
佐藤さん ジョンが好きですけど,ポールもすごいなと思いますね。アルバムはラバーソウルかリボルバーだけどやっぱりリボルバーかな。なんか脂が乗りきっているというか,ロックンロールからポップスへの時代の変化を感じられるアルバムだと思います。
― ビートルズといえば,最近,ビートルズを誰も知らない世界で,初めてビートルズの曲を演奏して人気者になるという映画(*「イエスタディ」/ダニーボイル監督)がありましたけど,もし佐藤さんが映画の主人公と同じ立場だったら,最初にどの曲を演奏しますか。
佐藤さん 僕は「Here,There And Everywhere」ですね。あまりにも美しすぎるメロディーと誰も思いつかないようなコード進行なので聴いた人はびっくりするんじゃないかと思いますね。実はその映画のコメント依頼がきたので,映画の公式サイトに同じ内容のコメントが載っています(笑)。
― andropは今年結成10周年ですけど,この先20周年,30周年ということまで見据えていますか。
佐藤さん いつまで続けようとかそんな話はしていないですけど,今,続けるということの価値が分かるようになって,ほかのメンバーも同じようには思っていると思います。
― 10周年というと一つの節目ともいえると思えますが,これから新たな試みも考えていらっしゃいますか。
佐藤さん バンドとしてやりたいことでまだまだやれていないことはあるので,それはこれからやっていこうとメンバーで話はしています。また,これまで聴いてくれた方をこれまで以上に楽しんでもらいたいし,初めて聴いていただく方にも楽しんでもらいたいと考えています。
― では,私たちは今後もandropの活動を楽しみにしていますね。この記事の読者の中にはandropの曲を聴いたことがないという方もいると思いますので,そんな初めての方にまず聴いてもらいたい1曲というのを教えてください。
佐藤さん 最近の曲で言うと,「Hikari」かな。あと「Blue Nude」もいいと思います。
― 最後に,弁護士に対するイメージがあれば教えてください。
佐藤さん 一番は,お金をたくさん持っているというイメージです(笑)。どうしてかと言うと,子供の頃にやった人生ゲームか何かで,弁護士か医者になればゲーム上強いという設定があって,そのイメージがすごく強いです(笑)。あと,子供のころは堅苦しいイメージはありましたけど,今は友人として話すことも増えたので,そんなに堅苦しいイメージはなくなりました。
― どんな弁護士だったら依頼したいですか。
佐藤さん やっぱり話しやすい方がいいですね。
― ありがとうございます。これからツアーがあるんですよね。楽しみにしています!