従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが,このたび司法の枠にとらわれず,様々な分野で活躍される方の人となり,お考え等を伺うために,会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。
川崎ブレイブサンダース
藤井 祐眞さん
今月号の「関弁連がゆく」は、藤井祐眞選手です。藤井選手は現在日本のプロバスケットリーグであるB.LEAGUEの川崎ブレイブサンダースに所属されています。ポジションはポイントガード/シューティングガード(PG/SG)です。昨シーズン(2021-22シーズン)は、レギュラーシーズンのMVP、また、天皇杯ではチームを二連覇に導きこちらもMVPを獲得するなどリーグを代表する選手として活躍されています。今回は、新シーズン(2022-23シーズン)直前の多忙なタイミングに時間をいただき、Bリーグの魅力、プロフェッショナルとしてのあり方などについてうかがいました。
― 昨シーズンの天皇杯、レギュラーシーズンの2つのMVPおめでとうございます。まずは天皇杯MVPの感想を教えていただけますか。
藤井さん 天皇杯の決勝戦はとても気持ちが入っていて、昨年優勝した時よりも僕自身が活躍できて、MVPに選出されてめちゃくちゃ嬉しかったです。
― レギュラーシーズンのMVPについてのご感想も教えていただけますか。
藤井さん 個人的には別の選手(島根スサノオマジックの安藤誓哉選手)が選ばれるのかなと思っていたんですが、僅差で選ばれて嬉しかったです。昨シーズンは初めてシーズンを通してメインのポイントガードとして試合に出て、チームを引っ張る立場だったし、責任が重くなったシーズンだと感じていたので、そういうシーズンに最終的にMVPを貰えてすごくありがたいことだなと思っています。
― 藤井選手といえば個人賞をこれまでも多数獲得されていて、昨シーズンもMVPだけではなく複数の個人賞(ベスト5、ベストディフェンダー賞)を獲得されましたが、今シーズンも個人賞をたくさん獲得したいという思いはあるのでしょうか。
藤井さん いえ、個人賞に関しては狙っていきたいというか、それくらいの活躍はしたいという思いはありますが、それよりもチームのリーグ制覇というところが目標です。そのうえで結果的に周りに認められるプレーをして、最終的に個人としても評価されれば良いと思っています。まずはチームが1番です。
― 昨シーズンの最後のゲーム(レギュラーシーズン後のチャンピオンを決めるトーナメントの準決勝・宇都宮ブレックス戦。ホームゲームであったが、川崎ブレイブサンダースは敗退)のあとの藤井選手の挨拶でファンに対して「申し訳ない」とおっしゃったのがとても印象に残っています。あれはどのような気持ちからの発言だったのですか。
藤井さん 自分自身、宇都宮戦でレギュラーシーズンほどのパフォーマンスができなかったですし、普段通りのパフォーマンスができていたら宇都宮にも勝てた可能性が十分にありました。そう考えたら、自分のパフォーマンスへの後悔や悔しさが1番に出てきました。また、昨シーズン、チームを自分がキャプテンとして引っ張ってきたなかで、チームやファンを決勝まで連れて行きたいと思っていたのに、連れて行けなくて申し訳なかったという気持ちもありました。
― 話を幼少期に移します。藤井選手は小学校の時に近所のバスケットを始められたということですね。
藤井さん はい。
― 藤井選手といえば負けず嫌いだとよく言われていますが、小学生の頃から負けず嫌いだったのですか。
藤井さん 4つ上の兄がいて、子供の頃から何をするにも勝てませんでした。でも負けるのが悔しくて何度も挑んで、例えばテレビゲームも勝つまで挑み続けて、最後は兄が手加減して折れてくれるくらいでした。それくらい負けず嫌いでしたね。
― 中学時代の思い出を教えてもらえますか?
藤井さん バスケットがすごく好きでしたね。中学校の部活の先生には単純にバスケットの面白さを1番に教わった気がします。
― その後、藤枝明誠高等学校に進学されて、2年時のウインターカップでは、2回戦で個人最多得点記録を更新する79得点を記録されましたね。試合前には監督には「80点を取ってこい」と言われたとか。そのときのことを思い返すことはありますか。
藤井さん 今考えると無茶なことを言われたなと思いますね(笑)。高校のチームのスタイルがどんどん相手のボールを奪ってガンガン点を取るようなスタイルだったので、3点を狙うというより2点のシュートをどんどん入れるといった感じでした。
― ここからは藤井選手のプロフェッショナル性という点に焦点をあててお話をうかがいます。藤井選手は現在は主力のポイントガードという立ち位置ですが、以前は別の選手がメインのポイントガードで藤井選手は交替で出てくる選手という立ち位置でした。途中から出てもフルスロットルでプレーをされていて、実際過去に何度もベストシックスマン賞(ベンチから出場して好成績を残す「シックスマン」の中で最も活躍した選手に贈られる賞)を獲得されています。そのように途中から試合に出るときの気持ちのもっていき方というのはどのようにしていたのですか。
藤井さん
その当時は悪い流れの試合では、自分が流れを変えたいという気持ちでコートに立っていました。川崎ブレイブサンダースはディフェンスのチームと言われていましたので、控えのメンバーがディフェンスを頑張ってリズムを作ろう、流れを変えようというゲームチェンジャーとしての役目に注力していました。ベンチにいるときに、相手のプレーを見て、「どういうプレーが良いか。自分が出るときはこうしよう。」とか、そういう感覚でいました。
気持ちの問題としては、ずっと試合に出続ける選手の場合、常に100%、120%のプレーをするというのは難しいと思うのですけど、逆に交代で出ていたときは、「全部出し切ろう。休んでも別の選手が出てくるから大丈夫だ。」という気持ちでした。僕がチャンスを作って疲れてもまた次がいる、というマインドでやっていました。
― 藤井選手はいつも全力でプレーされていて、その結果、コートの周りで見ている観客やボードに突っ込むプレーをよく目にします。観客としては怖い気持ちにもなるのですが、藤井選手に怖さなどはないのですか。
藤井さん 怖さはないですね。僕の考えなんですけど、「怪我した時はした時だな」と思っています。もし怪我をしたとしてもその時に考えればいいと思っています。今この時全力でやっていて怪我したとしても、それは僕の人生なんだ、運命だったと思うようにしています。怪我するまでは全力でという気持ちでいますね。
― 昨シーズン、試合中の接触で脳震盪の疑いで一時期試合を休んでおられたことがありましたが、休み明けなどでも怖さはないのでしょうか。
藤井さん 怖くはありませんでしたが、脳震盪の疑いということで、ほぼ1週間くらい練習できなかったので、復帰の試合では体力的にきつかったですね。
― 藤井選手のような方でも1週間休むだけで体力きつくなるのですね。驚きました。
藤井さん そうですね、やっぱり1週間練習していないだけで体力的にはきつかったです。
― 次は気持ちの切り替えについておうかがいしたいと思います。昨シーズン、チームが大逆転負けをした試合(2022年4月10日 秋田ノーザンハピネッツ戦)の後のファンとのオンラインミーティングで藤井選手の落ち込む姿は見られなかったとうかがいました。そのようなときの気持ちの切り替えはどのようにしているのですか。
藤井さん
正直内心メンタルにきましたよ。本来は勝っている試合でしたし、悔しさがいつも以上でしたし・・・。ただ勝負事ですし、絶対はないです。対戦相手チームの最後のシュートはスーパーショットでしたし、相手を褒め称えるくらいの素晴らしいシュートだったと思います。悔しかったですけど、前を向いていくしかないと思いました。逆にああいう試合があるからチームとしてまとまることができたり、こういう負けは二度と無くそうということで団結した部分はあります。
試合後のファンとのオンラインミーティングについては、僕らが落ち込んでいる姿をファンの皆さんは見たいわけではないですし。負けてクヨクヨはしますけど、それは一人になったときにでも、静かなところで考えればいいことだと思います。ファンの皆さんは普段から一緒に戦ってくれています。そういう人たちに落ち込んだ顔を見せる必要はないと思ったので、切り替えて接しました。
― ファンとのつながりということについてもお聞きしたいのですが、川崎ブレイブサンダースはチームとしてファンサービスが積極的な印象があります。YouTubeのチャンネルでは色々な企画をしてみたり、また、先日は有名なYouTuberチームと試合を行い大きな話題にもなりました。そのような外部との活動について、休みたいと思われることはないですか。
藤井さん
体力的に休みたいときはありますし、スケジュール的に忙しい時もあるので、そういう時にはもちろん断ることもあります。でも自由な時間なら、チームの活動ですし、僕らがメインでプレーしていますが、裏方でやってくれている方がいないと成り立たないのがスポーツだと思うので。ファンをここまで増やせたのはスポンサーの方やスタッフなどみんなの頑張りがあって実現しているものだと思います。僕らだけのお陰ではないので。協力できることは協力しないといけないと思っています。
YouTubeの撮影も同じかなと思っています。僕らも楽しく撮影して、みんなにも楽しんでもらうのが1番だと思いますけど、なかには大変な撮影もたまにはあります。でも協力し合うのが1番だと思って協力しています。
― Bリーグについてですが、プロ野球やJリーグなどと比べるとまだ見たことがない人も多いかもしれません。改めて藤井選手からBリーグの魅力について教えて下さい。
藤井さん
Bリーグの魅力は、試合を見ていただけたら1番わかりやすいと思うのですけど、バスケットは攻守の切り替えが早いです。どんなスポーツでも得点が入るシーンが1番盛り上がると思うのですけど、その得点が入るシーンが多いところが魅力ですかね。
あとは、アリーナ(会場)ですね。この間沖縄にできたような1万人規模のアリーナがもっとできたら、もっとお客さんに入ってもらって直接生で見ていただけると、「面白い、もう一回行こう」というふうになるのではないかと。来ていただけたら絶対にバスケットの楽しさが伝わると思っています。
― このインタビューを読んでいる中には、中高生の親御さんも多数いらっしゃると思いますが、今の中高生の中には新型コロナウイルス感染症の影響でなかなか満足に部活動ができない人もいると思うので、そういう中高生に向けてメッセージをお願いします。
藤井さん
今は本当に大変で、僕らの学生時代には想像もできなかったことです。試合がなくなる、練習できないというのは本当につらいと思いますし、可哀想だと思います。
ただ、その中でも自分にできることはあると思います。練習がなくなり、身体を動かす時間は減ったかもしれないですが、考える時間はその分増やすことができます。
あと今はSNSやYouTube、例えば日本のバスケットボールもプロ化して映像も増えたので、イメージトレーニングをしたり・・・。これはスポーツに限らず、勉強でも同じではないかと思います。得意不得意あると思いますが、得意なことを伸ばして行けば良い、自分に何が合うのかを探っていけばいいのかなと考えています。
あとは、部活動がなくなった時に、数人のメンバーで集まって、地域の体育館であったり、田舎なら屋外でリングがあることもあるので、遊び感覚でも良いので、何かしらの練習は絶対できます。何もしないよりは、何かをやるのが良いんじゃないかなと思います。
― 最後にお決まりの質問なのですが、弁護士の印象というのはありますか。契約の時などで関わりがあることはありますか。
藤井さん 僕自身は弁護士さんとの関わりはありませんね。契約の際もチーム側だけに弁護士がついている感じです。印象はただただ賢いというイメージです。あ、「リーガル・ハイ」というドラマは好きでしたね。あのドラマの印象で、かっこいいなというイメージはあります。
― 今シーズンも活躍を期待しています。
藤井さん 今シーズンは新しい外国籍の選手も入りましたし、その他の選手も加わって昨シーズンよりもさらに全力を出せるのではないかと思っています。