関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

写真

キャスター
勝 恵子さん

とき
平成11年11月9日(火)
ところ
松本楼(日比谷公園)
インタビュアー
和田希志子会報・広報委員

 シリーズ第5回は,キャスターの勝恵子さんです。
 勝さんは,テレビ朝日「ニュースステーション」のお天気キャスターとして人気を博し,テレビ朝日「驚きももの木20世紀」の司会,ドラマ出演等を経て,この4月まで3年間日本テレビ「ザ・ワイド」の司会を担当され,現在はテレビ朝日「スーパーJチャンネル」にレギュラー出演されています。
 イタリアに留学して料理,ワイン等を学んで帰国したばかりという勝さんから,新鮮な視点で司法について語っていただきました。

勝さんは,弁護士に対してどういう印象を持っておられますか。

勝さん 「ザ・ワイド」の仕事などを通して,何人かの弁護士さんと一緒にお仕事をした感想ですが,皆さん話術が巧みですね。

現在,弁護士の数が足りない,ということが問題になっていますが。

勝さん 数が足りないという実感はないのですが,現状では,まだまだ弁護士さんに相談するというのは敷居が高いように感じます。私のような自由業の者からすれば,身近に何でも気軽に相談できる弁護士さんがいるというのは理想的なので,そのためにも数が増えるというのは良いことだと思います。ただ,単純な数の問題ではなくて,社会経験のある方など,色々な方が増えればいいな,と思います。

数の問題のほか,弁護士広告の自由化も議論されています。

勝さん そうですね。ある程度情報公開をしていただくことはいいことですね。
最近よく感じることなんですが,日本人は何でも人任せで自分で判断しないことに慣れて,そのくせ何かあるとすぐ責任転稼しがちですよね。私は,自分の生活に関わることは,自分でもある程度調べて判断しないといけないと思います。だから,弁護士さんに頼むにしても,どういう方を選ぶかという責任は選ぶ側にある。そういう意味で,情報公開はもっとしていただいたほうが,お互いフェアな立場で,選び,選ばれる関係になると思います。

法曹一元ということで,弁護士などを経験した者の中から裁判官を選ぶ制度が議論されていますが,どう思われますか。

勝さん どの仕事も,どの業界も,一つの世界にとどまってしまうと発展がない。必ず異種のものがぶつかったり融合したりしないといけないと思うので,そのような議論は,開かれた司法を目指すという意味では必要じゃないかと思います。

裁判に対する感想は何かありますか。

勝さん やはり,どうしてそんなに時間がかかるのか,という思いがありますね。ワイドショーの仕事では,未解決の事件については世の中の関心が高く,よく取上げるんですが,逮捕,裁判ということになると,とたんに関心が薄れてしまう。これには,裁判が長いということが関係していると思います。

裁判に対する関心を高めるという点で,陪審制の導入が議論されていますが。

勝さん 参加意識が芽生えるという効果はあるのでしょうが,人選の仕方とか,余計に時間がかからないか,とか色々問題はあるように思います。
意識を高めるということに関連して,裁判を傍聴できる人数が限られている点,法廷の画像を撮影できない点なども,問題なのではないでしょうか。

裁判官が判決でタクシー運転手を「雲助まがい」と表現して問題になったことがありますが。

勝さん その事件に限らない感想なんですが,言葉というものはずっと残って,自分の意思とは違う力を持ってしまったりします。特に,裁判官というのは,市民からすれば権力を持っている人なんですよね。そういう人の言葉は生きて変化しながらいろんな影響を及ぼす。裁判所には,そういう意識があまりないのかもしれませんね。

刑事事件について,何か感じるところはありますか。

勝さん 被害者が女性の場合,特に性的な事件のときなど,被害者が裁判に出ることによって二次的な精神的被害を被るということがありますよね。報道する側でも,女性の被害者の事件ばかり取り上げるという問題があるんですが。こういうことについて,もっとケアがなされていいんじゃないかと思います。
また,刑事事件に限らないんですが,裁判の場で発言するということだけで腰がひけてしまって,司法を利用しないということもあると思います。弁護士さんに頼むのは敷居が高いという話をしましたが,これは司法界全体についていえることだと思います。

司法を市民にとって身近なものにしよう,という議論がなされていますが。

勝さん そういう方向は賛成ですが,先ほどもお話したように,日本人,特に戦後世代は,自分で決断したり選択することに慣れていないので,司法が身近なものとして動き出すと,利用する側に混乱が生じるのでは,という危惧はあります。
いずれにしても,10年,20年後は,司法界はもっと生活レベルで語られるようにはなっていると思いますね。そうでないと,利用する側,される側のいい関係も育っていかないと思います。

本日はどうもありがとうございました。

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