関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

「関弁連がゆく」(「わたしと司法」改め)

従前「わたしと司法」と題しインタビュー記事を掲載しておりましたが、このたび司法の枠にとらわれず、様々な分野で活躍される方の人となり、お考え等を伺うために、会報広報委員会が色々な場所へ出向くという新企画「関弁連がゆく」を始めることとなりました。

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シンガーソングライター
横井久美子さん

とき
平成12年1月31日(月)
ところ
松本楼(日比谷公園)
インタビュアー
椎野秀之会報・広報委員

 シリーズ第8回の「わたし」は,シンガーソングライターの横井久美子さんです。
 横井さんは,1969年,シンガーソングライターとしてソロ活動を開始して以来,世界各地に出かけ,「歌を必要とする人のために歌を届ける」活動を展開してきました。女性,母親の視点で社会を注視し,人生の途上で出会うさまざまな出来事を歌にし,世代を超える共感を得て,現在までに3,000ステージ,60万人以上の人々の前で歌い続けておられます。
 1993年,94年には,日本テレビ「ザ・ワイド」のコメンテーターもつとめました。
 1998年,アイルランド・ソマリック大学留学。
 2000年1月,「アイルランドの風に吹かれて」のライブCDをリリース。
 インタビューを終えた後も,女性弁護士の話や,ロースクールに入るためアメリカで勉強中という娘さんのことなど,話はつきませんでした。

「弁護士や弁護士会とはどのようなかかわりがありますか」

横井さん 各地の弁護士会の主催でコンサートをしたことがあるほか,1970年代にはスモン訴訟の歌を作って裁判所の前や集会で歌を歌いました。
 最近ではじん肺訴訟の歌を作っていろいろなところで歌ったり,日の出のゴミ処理場の問題で,裁判所に行ったり現地に行ったりしています。

「弁護士に対してどのような印象を持っていますか」

横井さん 私にとっては弁護士というのは正義の味方というイメージが続いていて,裏切られたことがありません。これを別の弁護士に言うと,「横井さんは質のいい弁護士としかつき合っていないからで,弁護士にもいろんな人がいるんだよ」と言われるんですけど…。
 弁護士という仕事は非常に尊敬しており,すばらしい仕事だと思っています。だから,娘にも弁護士になるように勧めているんです。
 また,弁護士は非常に高いスペシャリティをもっていて,それを社会に還元していく仕事で,そういう点では私たちも誰でも歌が歌えるわけではなく,共通していると思いますし,いろんな弁護士とつきあってきて,すばらしい仕事だと思っています。

「弁護士や弁護士会がもっと改善した方がいいと思うところはありますか」

横井さん たぶん一般的には弁護士は身近ではなく敷居が高く,何か相談すればすごくお金がかかるという印象があるのではないかと思います。
 例えば,法律相談にしても,最初の窓口は非常に安い値段か無料で話を聞いて,ある程度専門的な段階で料金がかかるというようにしてはどうでしょうか。
 もちろん,値段が安ければいいというのではなく,例えばコンサートでも料金が高ければ来ないかというと高くても見にきてくれるわけだから,要は敷居を高くなくするというのが大切なのだと思います。
 まだ日本の社会では,法律や社会の仕組み,政治の問題を暮らしのレベルで討議する習慣になっていないと思うので,弁護士会が法律を暮らしの中にいれていくというか教育していくという発想で,普通の人とコンタクトしていくような窓口があった方がよいのではないかと思います。

「裁判所や裁判官に対してはどのような印象を持っていますか」

横井さん 弁論の時に裁判官が法廷で眠っていて,非常に腹が立ったということがありました。また,丁寧に話を聞いてくださる裁判官もいれば,偉そうにしている裁判官もいました。
 法廷での裁判官の態度を見ていて,裁判官は現場の人と離れていて判決を下すときに必要な人間的な判断力をどのように構築するのだろうかと思います。
 その意味では,弁護士になって社会経験を積んだ上で裁判官になるという法曹一元の制度はよいと思います。

「陪審制についてはどのようにお考えですか」

横井さん 私はまだ早いと思います。陪審制を導入するには,まだ日本では個が確立されていないと思います。自分の感性で,自分の頭で考え,自分の言葉で表現するということが以前よりもますますできない時代になってきていて,社会が画一化してきていると思います。
 日本全体が,自分の主人公が自分だというような環境ができていないような状況では,陪審制のような制度は流されていく可能性を感じるので,時期尚早なのではないかと思います。

「ありがとうございました。」

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