関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

関東弁護士会連合会ブログ「調子に乗って勘弁れん」関東弁護士会連合会ブログ「調子に乗って勘弁れん」

方言

石井 庸久(埼玉弁護士会)

 

 私の故郷は,広島県福山市です。

 

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 東京に憧れ,大学進学を機に,福山を離れました。意気揚々と乗り込みましたよ。「わしが福山の石井じゃ」と。しかし,方言を使用する私は,同級生から,田舎者扱いされました。くやしゅうてしょうがなかった私は,必死になって,言葉を直しました。「要するに,語尾に『さ~』をつければええんじゃろが。簡単よ~」と楽観視。試練はここからでした。友達から「それとってよ」と言われた私は,こう答えます。「たわん」と。その場が,軽く静寂に包まれます。皆が「???」の状態です。私にはその状況が全く理解できません。そして,こう指摘されるのです。「いまなんて言ったの?」「『たわん』てどういう意味?」と。私が全国共通標準語だと思っていた言葉が方言だったとはつゆ知らず。はずかしい。その後も,何度となく指摘され続けました。結局,1年くらいは,田舎者のレッテルを貼られたままでした。

 

 あれから約20年が経過しました。数年前に父が他界し,実家は空き家に。そのため,ここ最近は,福山に頻繁に帰っています。必然的に,地元の人と話す機会も増えました。もちろん,私も広島弁(備後弁と言った方が正確なのかな)で話します。19の頃,あれほど敬遠していた備後弁も,小気味よく,何でもない会話も人情味にあふれかえります。早速,備後弁を仕事で使ってみることにしました。特に,警察署で使用することが多いですね。私よりも年配の人からは,必ず聞かれます。「先生は西の人ですか?」と。私の気持ちが伝わりやすいのでしょうか,以前よりも増して,心を開いてくれる人が多くなったような気がします。あと,お説教するときは,備後弁だと迫力が増しますね。

 

 というわけで,ここにきて初めて,方言の良さに気付くに至ったのですが,先日,尋問で,備後弁を多用したところ,書記官さんから,「録反(※録音反訳)しづらいので,少し控えて頂けると...」と気まずそうに言われました。でも,味気ない法廷が,それとなく盛り上がったじゃないですか。書記官さん,それくらいは勘弁れん!

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