大賀 祥大(第一東京弁護士会)
春の花というと,多くの方が真っ先に思い浮かべるのはやはり桜でしょうか。この桜の花によく似た花をつける木に「アーモンド」があります。アーモンドは,アメリカ,ヨーロッパなど世界各地で栽培されており,桜の開花時期よりもほんの少しだけ早く,桜とよく似た淡いピンク色の花を咲かせます(アーモンドの花の適当な画像が手元になかったので,ご興味のある方は「アーモンド 花」などで検索してみてください。)。
桜
アーモンドの和名は,あめんどう,扁桃など。子どものころ,よく扁桃腺を腫らして母親に病院に連れて行かれた記憶がありますが,扁桃(腺)とは,アーモンドの種に形が似ているから,その名が付けられたのですね。
旧約聖書にも登場していることから,アーモンドは古くから人には馴染みのある木だったのでしょう。ただ,桜とよく似た花ではありますが,日本では,アーモンドの木が海外から持ち込まれた後も,その花を愛でて楽しむためにお花見に出かけるという習慣が広く普及することはなかったようです。
オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホの1890年2月の作品に「Amandelbloesem(花咲くアーモンドの枝)」という油彩画があります(アムステルダム・ゴッホ美術館蔵)。彼が滞在した南フランスでは,2月にはアーモンドが一斉に開花し,春を告げるといいます。新しく生まれた甥っ子のために描かれたというこの絵からは,驚くほど優しく清んだ透明感が感じられます。浮世絵の影響を強く受けたゴッホが,この絵のモチーフにアーモンドを選んだのは,日本の桜から得た着想によるものだろうか,などと思いをめぐらせながら,春の夜に酒盃を傾けるのも風雅なものです。というわけで,陽気に誘われて酒量が度を越す前に,このあたりで勘弁れん!
(2015年04月23日)