HN 蟹座のデスマスク(茨城県弁護士会)
みなさんは,6月にどのような印象をお持ちでしょうか。一般的な例年の気候によれば,梅雨入りし,湿度が高く,ジメジメして雨ばかりの憂鬱な季節でしょう。
しかし,それよりももっと人を憂鬱にさせる事実としては,4月末から始まるゴールデンウィークという大型連休が5月の上旬に惜しまれつつもその終わりを告げてから,6月をそのまま素通りして7月第3月曜の「海の日」まで祝日がないという絶望的なまでに過酷な期間の真っ最中であることが挙げられます。
今年から上記7月の「海の日」に対抗し,8月に新たな祝日として「山の日」が誕生したことで,もはや,祝日を有しない月は6月だけとなってしまいました。
8月は,もともと「夏休み」もしくは「お盆休み」という祝日の枠を超えた大型連休を有していた,いわば特権階級のような月ですから,8月には祝日などなくとも,他の月に劣等感を抱くことなく,むしろ,たった1日分の祝日を加えた3連休程度であれば鼻で笑い飛ばせるほどの地位にいます。
仮に各月に「祝日力」というものがあれば,8月の祝日力は少なく見積もって53万ぐらいあるかもしれません。一方で,6月の祝日力は0と思いきや,6月15日は千葉県民の日として,県内の公立学校は休みになるので5ぐらいはあります。
やや脱線しましたが,とにかく,8月に今さら「山の日」なる祝日が増えたところで,ありがたみが薄いのではないかと思うのです。大学生を含めた学生層にとって,8月はもともと夏休みなので,8月11日が「山の日」という祝日であることすら認識しないかもしれません。
そもそも,なぜ「海の日」があるのに「山の日」がないのだ,と山登り好きの方々がお怒りになっていたかどうかは知りませんが,祝日法改正の際の制定趣旨としては「山に親しむ機会を得て,山の恩恵に感謝する日」だそうです。
しかし,上記のとおり,学生らは「山の日」を「山の日」として認識しうるかどうか(山に親しみ,山の恩恵に感謝する機会となり得るかどうか)すら怪しく,お盆休みに「山の日」として休みが増えたからと言って,山に登ろうとはしないと思うのです。
おそらく,「山の日だから,山に登ってみようか」というような流れを作り出すことによって,潜在的な山需要を掘り起こすことが目的に含まれているのでしょうが,だとすると,その「山の日」を真夏の8月中旬に設定することは,かえって山登り初心者に対する山登りへの参入障壁になり得るとすら考えられます(決して夏の山の良さを否定するものではありません,個人的に夏の暑さが苦手なだけです)。
一方で,山登り好きの方々は,何月であろうと山に登り,山の日などなくとも,山に親しみ,山の恩恵に感謝なさっているので,山好きであればあるほど「山の日」を必要としないというパラドックスに陥ります。
何が言いたいかというと,なぜ,6月に祝日を作らないのかということです。8月なんて放っておいても休みだらけだし,みんな山登り放題です。感謝し放題です。
前述のように,ゴールデンウィークが終わったそのとき,もしくは終わりが近づいた際に,その後7月の第3月曜まで祝日がなく,これに加えて,だんだんと湿度が上がり,梅雨入りすれば毎日のように雨,これらの悪条件が重なる魔の6月を乗り越えなければならないという厳しい現実と直面させられることで,人は5月病に罹患するのではないかとすら思っています。
みなさん,6月には祝日が必要なのです。6月はどの月よりも祝日を欲しています。いや,「山の日」によって8月を制したこの段階においては,もはや全月制覇(グランドスラム)を目指し,祝日の方こそが6月を欲しているかもしれません。
この際,「雨の日」でもいいし「夏至の日」でもいいです。いっそのこと,全国のお父さんが立ち上がって「父の日」を6月の第3日曜ではなく,第3月曜として祝日化するというのはどうでしょうか。「父親に親しむ機会を得て,父親の恩恵に感謝する日」です。完璧じゃないですか。全国のお父さん大喜びですよ。
もちろん,一緒に「母の日」についても祝日化しましょう。「母親に親しむ機会を得て,母親の恩恵に感謝する日」です。全く文句ありませんね。誰も反対できません。
以上,極めて個人的に偏った意見を述べさせてもらいましたが,政治的な意図は1マイクロナノメートルもございませんので,勘弁れん!
(2016年06月27日)