理事長 若林 茂雄(第一東京弁護士会)
2022年9月22日、長野市で開催された関東調停協会連合会調停委員大会に副理事長とともに招かれた。関東調停協会連合会は、東京高裁管内1都10県の地裁・家裁単位の調停協会をもって組織される連合会。当日は、東京高裁長官、長野地・家裁所長、日本調停協会連合会理事長も出席された。清永聡NHK解説委員室解説主幹による記念講演、調停功労者表彰が行われ、日本における調停の歴史などについて理解を深めることができた。
翌9月23日、JR長野駅近くの宿をチェックアウトして、副理事長と2人、長野市松代町の源泉かけ流し温泉を2軒訪ねた。
長野駅前でタクシーに乗り、松代町の松代温泉「黄金の湯、松代荘」へ。ここは長野市営の国民宿舎だが、全国有数の成分量の濃い源泉温泉かけ流しを売りにする温泉好きには有名な所で、日帰り入浴もできる。松代荘の玄関前でタクシーを降りてフロントロビーへ。祝日の秋分の日とはいえ、午前10時の日帰り入浴開始時刻を過ぎてもなお5~6人の入浴客が受付カウンターに並んでいて、人気の高さがうかがわれる。さっそく券売機でチケット(入浴料大人600円)を買って受付をし、男湯へ向かう。
脱衣所から浴室に入ると、かすかに硫黄臭を感じる温泉の香りと湿気に包まれる。既に約20人の先客。やはり人気があるなあ。内湯の湯船には茶褐色の温泉が溢れている。湯船の底が見えない。十分にかけ湯をして、手すりに掴まりながら足元を確かめつつ湯船に入る。柔らかい温泉湯。温度は41℃くらいか、ちょうどよい湯加減。
湯船に注ぎ込まれる湯口の源泉は無色透明だが、湯船のお湯よりも硫黄臭を強く感じる。やや塩からい。
源泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉。温泉法の規定成分19物質のうち10物質を含有する濃い温泉とのこと。pH6.7、源泉温度45.2℃(温泉分析書では43.8℃)、湧出量740ℓ/分。約300m離れた湯井の地下300mから自噴する源泉湯を空気に触れさせることなくパイプで敷地内のガス抜きタンクに入れて湯船に注ぐという源泉かけ流し。
湯船の茶褐色の「黄金の湯」の由来は、源泉湯中の鉄分が空気に触れて酸化し、茶褐色に変わったもの(兵庫県有馬温泉の「金泉」を想起させる)。茶褐色の温泉湯を手にとってよく見るとおびただしい微細な茶褐色粒子が湯の中を舞っている。湯船の底に沈殿しないような微細な粒子と思える。湯船の温泉を洗い桶に汲んで白い手拭を入れると、手拭が茶褐色になってしまう。
湯船は毎日お湯を抜いて清掃しているそう。そうしないと源泉湯に多く含まれる炭酸カルシウムが湯船に付着して1年で20cm以上の厚さになってしまうとのこと。また、掃除後の湯船に源泉を溜める際に、湯船の湯の表面に油膜のような炭酸カルシウムの被膜ができるそうで、とても濃い温泉という感じ。
内湯から屋外の露天風呂へ移動。こちらは7~8人の先客。湯船の中の温泉湯、湯口から注ぎ込まれる源泉とも、内湯と同じ印象。湯船の温度は内湯よりややぬるめだが、心地よい湯加減。
炭酸水素イオン含有量が多い塩化物温泉で、よく温まる。
黄金の湯を十分に堪能した。
!警告!:ここから先は本当に源泉温泉好きのマニアックな世界、普通の温泉とは一線を画するディープな異世界です。悪いことは言いません、普通がよい人はここまでにしましょう。先に進む方は、自己責任であることを確認してください。気の毒に副理事長は中毒してしまいました。何があっても当方は一切の責めを負いません。
松代荘から徒歩5分の「加賀井温泉、一陽館」へ向かう。
舗装道路から「加賀井温泉、湯元一陽館」の看板表示にしたがって、砂利道に入る。砂利道脇の駐車場を過ぎると、「この先は写真撮影禁止、見学はお断り」との表示があり、左右の木造建物に挟まれた一陽館の敷地と思える一角に入る。松代市街からいきなり山深い湯治宿の前に迷い込んだような印象。
右側の建物が湯殿棟。左側の建物が温泉の日帰り入浴受付棟で、建物前に湯浴み着をつけたマネキンが置かれ、その脇の建物入口に入浴料を入れる料金箱がある。入浴料は大人500円。
初めてのお客さんは、源泉と風呂(内湯と露天風呂)、そして入浴方法の説明を受けるのがマストで、それが終わってから入場する。この説明が大切で、ググッと乗り切る。
一陽館には源泉が2つ。
一号井源泉は、泉温36.4℃、湧出量200ℓ/分、pH6.3。泉質は含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(高張性中性温泉)。
三号井源泉は、泉温39.7℃、湧出量700ℓ/分、pH6.3。泉質は含二酸化炭素・鉄(Ⅱ)-ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉(高張性中性温泉)。
この2つの源泉を、内湯と露天風呂にそのままかけ流している。
湯殿棟の内湯は、男湯・女湯に分かれ、それぞれ縦横2m×7m程度の湯船があり、洗い場や水栓・シャワーはない。湯船の縁とそれに続く床には、源泉中の炭酸カルシウムが付着していて見事。
湯船の湯は少し緑がかった澄んだお湯で、ややぬるめながらゆっくり長湯ができる心地よい湯温。
この内湯には、三号井から600ℓ/分の源泉(男湯・女湯に半分ずつ)を流し込んであふれ出させている。露天風呂の湯と異なって濁っていないのは、源泉湯を湯船に流し込んでから流出するまで空気に触れる時間が短いためとのこと。
脱衣所は湯殿棟の靴脱ぎ場脇の小さな板の間。靴脱ぎ場の棚に突っかけサンダルが並んでいる。このサンダルを履いて湯殿棟外の露天風呂に行く。
湯殿棟の左側に隣接して三号井源泉がある。源泉湯に含まれる二酸化炭素を大気中に放出する泡(一見すると台所用洗剤の泡のよう)をたくさん出しながら大量の源泉湯がゴボゴボと勢いよく自然に湧出している。すごい!
三号井源泉の左側(湯殿棟の反対側)に隣接して露天風呂がある。露天風呂は湯船が二つ(いずれも縦横3.5m×4m程度)あり、ぬるめと温かめの湯船になっている。混浴で(女性は湯浴み着を着用して入浴するとのこと)、内湯同様に洗い場はない。
露天風呂のぬるめ湯船には泉温の低い一号井から100ℓ/分の源泉を、温かめ湯船には一号井から100ℓ/分の源泉と泉温の高い三号井から100ℓ/分の源泉を、それぞれ流し込んであふれ出させている。
湯船の湯は両湯船とも茶褐色の濁り湯だが、ぬるめの湯のほうが濁りが濃い。
ぬるめの湯は源泉温度が体温程度でぬるいというよりも風呂としては冷たいに近い感じ。温かめの湯はぬるい風呂で、じっくり長湯ができる。最初はぬるいが次第に体の中から暖まってくる感じを体感できる。先客もジックリ長湯に浸かる人が多く、湯治場のような雰囲気。
露天風呂の奥に一号井の源泉があるとのことだが、見ることはできない。
三号井源泉脇で入場前の説明を受けていた際に、手ぬぐいで前を隠したスッポンポンのお父さんがつっかけサンダル履きで湯殿棟から出てきて我々の後ろを通って露天風呂へ行くのに遭遇して仰天したが、20分後には自分達も同じように温泉棟から露天風呂に移動していた。写真撮影禁止、見学お断りの理由がわかりますね。副理事長は、露天風呂の暖かめの湯に浸かって忘我の境地を経験し、トリップしてしまった。私は湧出したての源泉が酸化する時間を置かずにかけ流されている内湯がいいなあ。柔らかい湯で温泉に入っている実感がわくホントにディープな世界!!!
ご覚悟のうえでお訪ねください。
(2022年12月06日)