山本 祐輝(千葉県弁護士会)
私は歴史が好きで、中でも謎に包まれた古い文明が大好きです。
数百年、数千年前に作られた見事な建築物や芸術品などが、何故当時の技術をもって作られたのかが分からないとなると、とても興味をそそられるのです。
その謎を解き明かす(ことはできないけれど、現地で見て感じて思いを馳せる)ため、行ってきました。地球の裏側に。
今回の旅で私が行ったのは、かつてインカ帝国(15世紀から16世紀頃にペルーを中心に栄えた国家)の首都であった、ペルー共和国のクスコという都市と空中都市マチュピチュです。
クスコは標高3400mにある高山都市で、インカ帝国時代の建造物と、スペイン統治時代の建物が混在する歴史ある街です。
クスコ市街には早速不思議なものがありました。それがこの「12角の石」です。
インカ帝国時代の石組の一部なのですが、12角もある石がパズルのように完璧に綺麗にフィットして組まれているのです。レーザーカッターがあったわけでもないのに、ここまで完璧な直線で、しかも隙間なく石組までしてしまう技術、本当に驚きました。宇宙人が切断したのでしょうか?
同じようにインカ帝国時代に建立された太陽信仰をつかさどる宮殿「太陽神殿」では、その壁の石組がまた完璧なんです。
どうですかこれ。3つの石の接点、本当に隙間がないんです。隙間に何かを埋め込んでいるというわけでもなく、石の表面がしっかりとフィットしているのです。インカ帝国の時代では、石の加工に使用する道具もまた石を使用していたそうです(金属製の道具を使用していたという説もあるようですが、遺跡からはそういった道具は一切見つかっておらず、裏付けはありません。)。本当に信じられません。やはり宇宙人が切断したのでしょうか?
わざわざ大西洋をわたってきて中南米を侵略できてしまうほどの技術力を持つスペインでも、この石組をまねることはできなかったようです。
写真を撮り忘れてしまったのですが、上記写真の壁の向かい側には、スペイン統治時代の石組の壁があるのですが、見るからに作った時代が違うと分かるほどに隙間がたくさんあってガタガタな石組でした(スペイン統治時代の方が最近なんですけどね...)。
インカ帝国の石組の技術の高さが良くわかります。
クスコ市街の石組に驚嘆した後は、ついにあの空中都市マチュピチュです。マチュピチュはクスコ市街から車と電車を乗り継いで4時間~5時間ほどかかります。標高は約2400mですが、気候は熱帯雨林気候に近く、アマゾンの入り口とも呼ばれています。周囲は4000m級の山々に囲まれており、こんな辺鄙な高い山の頂上に都市?があるなんて本当に信じられません。しかも建造は1420年頃とされています。600年前...。
宇宙人の仕業じゃなければ一体どうやって・・・?
何故クスコ(当時の首都)から遠く離れた山間の山頂部にこんな立派な都市がつくられたのか。マチュピチュがつくられた理由は今も分かっていません。また誰がこの場所に住んでいたのかも判然としていません。現在も研究が続けられているようですが、謎が解ける日は来るのか。
ちなみに、インカ帝国では文字を使用していなかったそうです。そのため、当時の出来事や文化、生活の様子など、文書で残されていないことから謎が多いようです。
マチュピチュの遺跡内も、様々な石造の建築物が見られます。特に印象的だったのはこちら。
コンドルの神殿と呼ばれる施設です。
下の石が胴体と頭、後方の立体的な石組が翼です。どうですか、コンドルに見えますよね?遺跡内にはこういった石の加工、石組みの技術を遺憾なく発揮した建築物が随所に存在します。遺跡を上から眺めるのもいいですが、遺跡内の散策も非常に面白かったです。
ちなみに、マチュピチュの名称は間違っているという説があります。20世紀初頭、現代ではマチュピチュと呼ばれているこの遺跡がある場所を、その当時地図帳ではワイナピチュという名称で記載がされていたそうです。(このワイナピチュという名称は、現代では上記写真の背後に写る尖った小高い山を指す名称として知られています。)しかし、1911年頃にある探検家がこの遺跡を発見した際、探検家が地元民にこの遺跡の名前を尋ねたところ、地元民は今立っている山(現代のワイナピチュ)のことを聞いているものと思い、「ここはマチュピチュです。」と答えたことで、ワイナピチュとマチュピチュの名称が入れ替わってしまった(地元民の間ではマチュピチュ=遺跡後方の尖った小高い山、ワイナピチュが遺跡のある場所だったものが入れ替わってしまった)とされています。また、マチュピチュという名称が世界に広がっていますが、ケチュア語(インカ帝国時代の言語)で発音すると、マチュビヒチュが近いようです。当時の人からしたら何故マチュピチュという名前になったんだという感じでしょうね。
少し脱線しましたが、インカ帝国に思いを馳せる旅、総じて非常に満足でした。マチュピチュはその遠さ(日本から直接向かったとしても30時間はかかります。現代でもこれだけの時間がかかるのに飛行機、電車、自動車がない時代にいったいどうやってあんな山奥に作ったのか...。)も相まって、いざ目の前にすると言葉が出ないほどに感動します。ぜひ、多くの皆様にもインカ帝国の謎に触れていただき、古代文明に思いを馳せていただきたいと思います。
私の旅はこれからもまだ続きます。
次回は古代エジプト文明に思いを馳せてきた旅をご紹介しようと思います。とかかっこよく締めようとしていますが、基本は海外ひとり旅が多く、話を共有する人もいないので本ブログで皆様に共有したいだけなのです。私のただの旅行記につきあってもらってしまって、勘弁れん!
(2025年02月21日)