今日,産業活動や家庭生活にともなって排出される廃棄物は,量的に増加の一途をたどり,質的にも処理困難物や有害廃棄物が増大している。その一方で,最終処分場の確保が困難となり,廃棄物の処理はもはや限界に達しようとしている。その結果,自治体の廃棄物処理行政に困難をきたすとともに,産業廃棄物について不法投棄が跡を絶たず,廃棄物による環境破壊や公害は深刻な社会問題となっている。
この事態は,現在の大量生産,大量消費,大量廃棄の社会経済システムに起因するものである。従って,廃棄物問題を抜本的に解決するためには,生産から廃棄までのすべての段階において,廃棄物の発生の抑制,減量化,再利用の徹底を図り,環境を保全するためのあらゆる具体的施策が採られることが必要不可欠である。また,廃棄物の再利用,再資源化を促進することは,貴重な地球資源の保全という面からもきわめて意義のあることである。
平成3年(1991年),深刻化する廃棄物問題に対処するため,「再生資源の利用の促進に関する法律」が制定され,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正が行われた。これらは,廃棄物の減量化,再利用,再資源化へ向けた法制度の第一歩と言えるものである。しかしながら,これらの法律においては,出発点ともいえる廃棄物の発生の抑制,減量化,再利用について法的義務の具体化に欠け,また事業者の責務については強制力を伴わない抽象的な責務にとどまるなど,法の運用面で多大の困難を来すことが予想される。
よって,われわれは,直面する廃棄物問題に真に実効ある具体的施策を検討し,その法制度化を関係機関に提言するなどの活動を推進するとともに,国及び自治体,事業者そして国民など廃棄物に係わるすべての関係者が,廃棄物問題の深刻さを自覚し,廃棄物の発生の抑制,減量化,再利用ならびに適正処理に向け最善の努力を尽くすよう求めるものである。
右決議する。
平成4年(1992年)9月26日
関東弁護士会連合会
法律扶助制度は,司法救済を求めながら,経済的社会的な障害により裁判を受けられない者に対し,司法救済の途を開き,憲法32条にもとづく国民の裁判をうける権利を実質的に保障するものである。 わが国の法律扶助制度は財団法人法律扶助協会によって実施されているが,国庫補助金の使える範囲が民事法律扶助に限られ法律相談や刑事事件も対象外である。しかしながら法律扶助を司法へのアクセスの場として考えるとき,それは単なる救貧事業ではなく弁護士を必要としながら弁護士に接しえないすべての人を対象とすべきであり,扶助の範囲も広く法律相談や刑事事件等にも及ぶべきものである。
扶助の範囲が限られ,補助金の金額も少ない中での現在の制度の運営は弁護士及び各地弁護士会の犠牲的な奉仕によって支えられており,あるべき役割を果たすには程遠いといわざるをえない。
とりわけ,今年度に入ってからの法律扶助協会の財政難は深刻である。その原因の1つには,当番弁護士制度の普及に伴う刑事被疑者弁護人援助制度利用者の激増があり,各地で予算をはるかに上まわる支出を余儀なくされている。さらに消費者金融事件の急増も同協会の財政を大きく圧迫している。
法律扶助制度の拡充,発展は憲法上の裁判をうける権利を国民に保障するためになすべき国の責任であり,右のような危機的財政状況に対しては,国は緊急に国庫補助金の使える範囲を刑事事件や法律相談等にも拡大し,国庫補助金を大巾に増額すべきである。
さらに,わが国では法律扶助に関して定める法律が存在しないが,欧米諸国の多くは法律扶助について立法措置を講じており,国庫負担金も多額にのぼっている。わが国においても法律扶助についての国の責任を明らかにし公的資金の裏付を伴う法律扶助に関する基本法を早急に制定することが求められる。
よって,われわれは,関係当局に対し,緊急に法律扶助関連予算を大幅に増額するなど法律扶助制度の飛躍的拡大をはかるとともに,国の責任を明らかにし公的資金の裏付を伴う法律扶助に関する基本法を早急に制定するためのとりくみを求めるものである。
右決議する。
平成4年(1992年)9月26日
関東弁護士会連合会