わが国は,戦後急激な経済成長を遂げ,それに伴い都市に人口と産業が集中し,さまざまな都市問題が起こった。これに対処するため,昭和43年6月に都市計画法が,翌44年6月に都市再開発法がそれぞれ制定された。これまでに都市再開発法による再開発事業が各地で多数実施され,不燃化や公共施設整備,大規模小売店の進出による便益の提供など一定の成果をあげた。
しかし,このような再開発事業は,さまざまな問題を発生させた。まず,従前の権利者の転出率が高く,従来の生活や営業が保障されない結果となっている。また,大規模小売店等の進出により,従来の地域経済を破壊することが少なくない。
さらに,新たな環境問題を引き起こしている。すなわち,周辺環境には,高層ビルによる日照被害や風害,電波障害などの環境被害を与えていること,車の集中に対応する周辺の道路整備がされないままの拠点開発のため,交通渋滞や大気汚染を悪化させていること,建設や事業運営により多量の廃棄物や都市排水を排出させていること等自然環境に過剰な負荷を増大させている。また,無秩序な高層化による景観の破壊も無視できなくなっている。
このような,都市再開発の問題点を認識したうえ,われわれは,国および地方自治体に対し,都市環境の保全,回復ならびに創造の見地に立った住民のための街づくりをするために,次の提案をする。
平成4年(1992年)9月26日
関東弁護士会連合会