第1 わが国の司法の現状
わが国の司法を見ると,違憲立法審査権はほとんど行使されず,行政訴訟では国や地方公共団体の責任を追及することが極めて困難であり,また,刑事訴訟手続では捜査の結果を安易に認める傾向が顕著であり,民事裁判の内容は当事者を十分納得させるものとは言えず,裁判が長期化する等,国民の期待に応えていない現状にある。
司法は,国民の権利を保障し,豊かな民主主義生活を維持,発展するために存在する。
しかし,現状では,司法の機能が著しく低下していると言わざるを得ない。
その主な原因の一つに,判事補制度を中心とする裁判官のキャリアシステムと,その上に成り立ってきた最高裁判所を頂点とする官僚的な司法行政とがある。
第2 法曹一元制度の理念
この現状を打破し,市民の市民のための司法を確立すべきである。 そのためには,市民が自ら裁判手続に参加する陪審制や参審制を導入するとともに,「法曹一元制度」を採用することが最も効果的である。 法曹一元制度は,市民社会のなかで培われた健全な良識と人権感覚をもつ弁護士を中心とする法律家の中から裁判官を選任する制度である。法曹一元制度の採用によって,裁判官を官僚的な司法行政から解放し,国民の期待する司法,市民による市民のための司法を確立することが期待できる。 法曹一元制度の実現は,戦前・戦後を通じてわが国の弁護士と弁護士会が求めてきた司法制度改革の柱である。
第3 法曹一元制度の実現
昨年11月,「法曹一元制度」をテーマとする第17回日弁連司法シンポジウムが開催され,弁護士会のみならず,学者,経済界,政界からも法曹一元制度の実現を求める声が高まった。今,司法改革の時代を迎え,弁護士会は,法曹一元制度の実現に向かって,全国的な運動を展開していくことが期待されている。
本年6月,国会において,司法制度改革審議会が発足し,法曹一元制度も,その重要議題となっている。関東弁護士会連合会は,この状況を踏まえ,法曹一元制度の実現に向かって,日本弁護士連合会と協力して,市民に広く理解を求めるとともに,司法制度改革審議会に対し積極的に働きかけ,行動する決意である。
以上の通り決議する。
1999年(平成11年)9月17日
関東弁護士会連合会
よって,本提案をするものである。
以上