関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成11年度 宣言

ダイオキシン…今何が問題か

 史上最強の毒性を有し,世代間にわたって影響を与え続けると言われているダイオキシンによる汚染が,今我が国で深刻な社会問題となっている。
 関東弁護士会連合会は,この問題につき,我が国の現状を分析して,対策のあり方を検証し,次の通り宣言する。

第1 ダイオキシン対策の理念と方法について
 ダイオキシン対策は,広く廃棄物対策の一環として位置づけられるべきであり,その基本は,大量生産・大量消費・大量廃棄の経済杜会構造それ自体を変革することにある。
 すなわち,生産者責任を明確化し,経済的手法を導入して,あらゆる有害物質管理を可能にするシステムを構築するとともに,廃棄物の発生自体の抑制・焼却量自体の削減を実現することである。

第2 国に対する意見

  1. 国による対策は,ダイオキシン類だけに着目した排煙中の濃度規制などの排出規制に偏っているが,発生抑制対策と比べて,このような規制的手法は補助的手段に過ぎないことを認識すべきである。
  2. 国が耐容一日摂取量(TDI)を基準として設定した排出基準は,ダイオキシン類に関する知見が必ずしも科学的に十分得られていない現状においては,その値が安全性を保障するものではなく,当面の暫定目標に過ぎないことを明確にすべきである。
  3. 国による焼却施設の大型化・連続化及び処理の広域化の政策は,中央集権的行政手法により,各地の廃棄物処理の実態を無視し,地方公共団体に財政面を含め多大な負担を与えることが明らかであるから,速やかに政策転換すべきである。また,高温溶融炉については,更に,技術的に未熟であることも明白であるから,その導入には慎重であるべきである。
  4. 各地方公共団体が,市民の声に裏付けられ,各地の実状に応じた独自の廃棄物対策を十分立案,実施できるように,国は,生産者責任を明確化し,調整的・サービス機能を行い,地方公共団体の政策立案実施並びに市民及び市民団体の主体的活動に関して,支障となる様々な立法・行政上の問題を早急に解消すべきである。

第3 地方公共団体に対する意見

  1. 地方公共団体なかんずく市町村は,ダイオキシン対策を廃棄物問題の一環として位置づけ,廃棄物自体の発生抑制を理念として,国に対する関係で,地方公共団体の権限拡大及び条例制定権の拡大を目指しつつ,主体的,積極的に当該地方の実状に応じた対策の立案実施を行うべきである。
  2. 地方公共団体は,市民と対立する存在ではなく,市民とともにあることを自覚して,対策を立案実施すべきである。
    地方公共団体は,ダイオキシン問題及び廃棄物問題に関する政策立案実施及びその監視の過程において,実質的に市民の意見・提言が反映する参画制度を,法的な裏づけのもとに積極的に導入すべきである。
    また,地方公共団体は,廃棄物対策の一環としてのダイオキシン対策において,市民及ぴ市民団体を,地方公共団体とともに政策立案実施に参画する主体として尊重し,その活動の発展に財政面を含めて協力すべきである。
  3. 地方公共団体は,ダイオキシン及び廃棄物処理,特に発生抑制に関する行政及び生産者の惰報を積極的に公開すべきである。

第4 市民及び市民団体への期待
 発生抑制を理念とするダイオキシン対策及び廃棄物対策は,それが市町村を主体として行われるにしても,各地の実状に適合したものとなるためには,地域に密着した市民及ぴ市民団体の積極的な参画が不可欠である。
 われわれは,今後とも,市民及び市民団体が,当該地域の環境問題について,自らの地域の実状を知り,対策を考え,行動する意識のもとに,地方公共団体の政策立案実施及び監視に積極的に参画し,活動することを大いに期待するものである。

第5 弁護士の使命
 われわれ弁護士は,ダイオキシン問題及び廃棄物問題に'積極的な関心を持ち,地方公共団体並びに市民及ぴ市民団体の活動を視野に置きつつ,各地の紛争への関与,市民相談への対応などを通じて,市民の声を真しに受け止め,廃棄物問題に関し.て提言し,あるいは地方公共団体等の政策立案実施過程に関与するなどして,廃棄物の発生抑制及びダイオキシン発生防止の実現に向け,法律家の立場から,市民とともに積極的に活動することを誓うものである。

1999年(平成11年)9月17日
関東弁護士会連合会

提案理由

第1 今なぜダイオキシン問題か
  1.  ダイオキシンによる環境汚染の問題は,廃棄物処理施設の周辺住民の運動を端緒として,現在我が国社会においてエポックな環境問題となっている。関東弁護士会連合会は,1998年9月25日,長野市における定期大会において,ダイオキシン問題をテーマとして取り組むことを決議したが,以後この一年の間に,我が国におけるダイオキシン問題は,その対策の基本的理念と実現への道筋の点において,喫緊の課題となっていることが更に強く認識されるに至った。
  2. 国による対策は,1997年12月1日,廃棄物の処理及び清掃に関する法律・大気汚染防止法の改正施行令・規則の施行,1999年3月30日,政府による「ダイオキシン対策推進基本方針」の決定,そして,同年7月12日,ダイオキシン類対策特別措置法の成立をもって臨み,これらによって・ダイオキシン問題は解決するかの論調も一部にみられるところである。
     また,国は,ダイオキシン問題の高まりのなかで,その対策として,現在,廃棄物の焼却を広域化・大型化し,高温溶融炉を導入しようとしている。
  3.  しかし,これらの対策では,我が国の大量生産・大量消費・大量投棄の社会システムそのものは維持されたままとなり,根本的な解決を見ないのではないだろうか。対策の基本的な方向に誤りはないだろうか。
     未だ我が国の大気,土壌,河川,湖沼,海域は,ダイオキシンで高濃度に汚染されている。緊急に対策をとらなければならない地域もある。今後の健康被害や焼却炉,最終処理施設に対する周辺住民の不安はぬぐえていない。廃棄物処理施設の建設・操業に対する住民の反対運動は依然として続いている。
  4.  我が国のダイオキシン問題は,今何を問題にすべきなのか,あるべき対策の理念と具体的な道筋は何であるかを改めて検討し,その対策の立案及び実施を速やかに行うことが求められているのである。

第2 国の廃棄物行政に対する警鐘
 国のダイオキシン対策を現実的な視点で検証した結果,われわれは次のような結論に達した。
  1.  ダイオキシン対策はダイオキシンだけに着目した規制であってはならない。
     国のダイオキシン対策の問題点の一つは,ダイオキシン類の濃度規制など,ダイオキシン類だけに着目したものになってしまっていることである。
     廃棄物の焼却処分によって発生する有害物質は,ダイオキシン類以外にも数多くあることが既に指摘されており,それらの対策をも急がねばならないところ,このような個別の排出規制は,有害物質対策.としては,管理面・技術面ともに不十分であることは明らかである。
     したがって,ダイオキシン対策は,発生抑制を理念とした対策,すなわち,廃棄物対策の一環として,廃棄物の焼却量の低減を目指し,有害物質を燃焼物から排除するなどの廃棄物の質の整備,そして,必然的に廃棄物の発生のもととなる場面にまで着目した対策こそ基本とすべきである。
  2.  第1の2で述べた,国の法規改正あるいは新立法は,いずれもダイオキシンの生じる場面に着目した出口規制の手法によっている。
     1に関連するが,出口規制は,発生した汚染物質を出口(焼却設備等)で規制するものであるから,汚染の発生自体を抑制しようとするものではなく,発生したものを出口に至るまでにどう処理するかという後始末的規制手法である。
     しかし,これは,焼却設備等の出口からは,監視不能な形でダイオキシン等の様々な有害物質が排出されており,濃度調査における操作が容易であるために規制の意味が乏しいなど,規制手法として根本的欠陥がある。
     更に,有害物質の管理手法としても,排出段階での規制というもっとも管理困難な段階での対処であるという点で拙劣であり,また,ダイオキシンについては,検査測定に多額の費用を要し,データ操作が容易であるなど,種々弊害がある。
     出口規制は,あるべき発生抑制を理念とする対策における補助的手段以上のなにものでもない。
     したがって,このような出口規制のみでダイオキシン問題が解決するかのような論調は完全に誤りである。
  3.  焼却施設の大型化・連続化・処理の広域化は,大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を維持強化してしまう。
     濃度規制と並んで,国のダイオキシン対策の特徴となっているのが,廃棄物処理の広域化及び焼却炉の大型化と連続燃焼炉への切り換えである。
     しかし,ダイオキシン対策において「大型連続炉」が優れているという科学的根拠はない。また,「大型連続炉」は,必然的に大量の廃棄物を必要とし,更に「高温溶融炉」導入促進は,高カロリーの廃棄物を必要とし,技術的にも未熟なものである。
     つまり,これら焼却施設の設置及び廃棄物処理の広域化は,分別回収処理などの焼却する廃棄物の質の面からも,ゴミ減量など焼却する廃棄物の量の面からも,あるべき廃棄物対策に全く逆行する結果を招き,大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を維持強化するものとなってしまうのである。
  4. 国は,上記焼却施設切り換えを,国庫補助金等の政策によって,各地方公共団体へ押し付けている。
     廃棄物問題は,各地の地理的条件・人口や市民の協力等と密接に関連している。ところが,国から一律に焼却炉の大型化・連続化・処理の広域化方針を押しつけられた各市町村は,実状に合わない押しつけに,過大な設備投資を迫られるなど財政面を含め困惑している。
     このような中央集権的廃棄物行政は,地方公共団体への押しつけと地域住民の反対運動などの市民及び市氏団体の積極的活動を封じ込めることにつながり,各地の実状に応じた,あるべき廃棄物対策の実現を困難させてしまっている。
     廃棄物対策においてこそ,憲法・地方自治法に謳われている地方自治が尊重されるべきものであり,国の関与は調整的・サービス的機能に限定されるべきである。
  5.  ダイオキシンによるリスクは無数の有害物質によるリスクの氷山の一角である。今般成立したダイオキシン類対策特別措置法は,あらゆる規制基準のもととなる耐容一日摂取量を(TDI)を4pg以下とした。しかし,その数値設定は,現状追認の値でしかなく,発ガン性や複合汚染的リスクの検討がほとんど手付かずの現段階においては,このような数値を定めることは,これらのリスク評価を度外視したものに他ならず,時期尚早である。
     したがって。TDIについては,ダイオキシン類に関する知見が,必ずしも科学的に集積されていないことに鑑みても,当面「限りなくゼロに近づける」という暫定目標としての位置づけ以外には妥当性を見いだすことはできないというべきである。
第3 あるべき対策の理念と方策
  1. 発生抑制の理念=入口規制
     ダイオキシン類は,我々を取り巻く有害物質の一つである。このような有害物質については,国の対策のような,当該物質の排出後に規制する方法ではなく,入口規制,つまり,「もの」の生産→流通→消費→排出→処分の過程において,できる限り上流から取り除いてしまう方法が環境対策として有用であることは明らかである。
     そして,更に大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済構造から天然資源の消費を減らし,持続可能な環境保全の社会経済構造とするために,ダイオキシン対策を廃棄物対策の一環として位置づけ,有害物質管理を十分なものとし,廃棄物自体の発生抑制,焼却量自体の低減化に視点を置いた政策を採るべきである。これが,あるべき発生抑制の理念である。
  2. ダイオキシンの発生源
     ダイオキシンの発生の科学的メカニズムについては,現在までの知見によって相当に明らかになったとはいえ,必ずしも全てが明確になったどは言い難い。特に塩素あるいは塩素系化合物が焼却対象となる場合にダイオキシンが大量に発生するのか否か,.その発生抑制の一環として,かかる関連製品の生産者の責任を間うべきか否かについては議論のあるところである。
     しかしながら,有害物質管理の観点から,このダイオキシン問題を契機とし,我が国においても生産者責任を明確化すべきである。
  3. リサイクル政策の位置づけ
     我が国においても,各立法によるリサイクル政策が打ち出され,一般的にも,リサイクル=環境保全というイメージが広がっている。
     しかし,リサイクルは,大量生産・大量消費を許容あるいは推進する危険が認められるのであって,決して過大評価はできない。すなわち,リサイクル可能なものと不可能なものとがあり,しかもその前段階での対策を講.じなければ,リサイクルの過程自体で大きな環境負荷を与える場合があるのである。リサイクルは,焼却や埋立よりは優れた方策であるが,更に「もの」自体の生産,消費を減らすことの方がはるかに優れた方策である。
     したがって,リサイクル政策は,発生抑制対策より劣後した方策であることを認識したうえで政策策定を行うべきである。
  4. 生産者責任の原則の確率
     発生抑制は,明確な生産者責任の政策立案実施によって実現すべきである。
     生産者責任の考え方は,廃棄物処理の費用負担を,市町村及び納税者ではなく,製品の生産者,流通業者,排出者等になさしめるというものである。
     市町村及び納税者が一律に廃棄物処理の費用を負担する従来の方法では,費用負担において製品等を使用した人と使用しない人との区別を問わないため,両者問における不公平が生じ,また,使用者・排出者に,使用や排出の回避を動機付けることができない。
     したがって,市町村ではなく,製品に関わる者が廃棄物を処理する費用を負担すべきである。
     更に,廃棄物処理の責任は,第一次的には生産者が負うべきである。生産者こそが,製品及び有害物質の特徴をもっとも知り,もっとも目的にそった活用のノウハウを開発できる立場にあるからである。そこで,環境負荷を与える製品を生みだした生産者は,その分の責任を負うことにより,技術的にもリユース・リサイクル・安全な処理の方策を開発する動機付けともなるのである。
     諸外国の実践例などに学びながら,生産者責任の具体的内容を綿密に検討しつつ早急に立案実施すべきである。
  5. 経済的手法の導入
     ダイオキシンに象徴される有害物質の対策において,環境を保全する手法としては,規制的手法と経済的手法とがあるが,ダイオキシン対策の場合,これまで,ほとんど規制的手法が採られてきた。
     しかし,あるべき発生抑制あるいは入口規制の理念実現のためには,大量生産・大量消費・大量廃棄の経済システムそのものを,環境保全の費用を考慮に入れること(環境コストの内部化)が必然とされる経済システムに変革していくことが求められる。
     生産者責任を明確にする政策立案実施だけでは,ダイオキシン発生に関わるあらゆる場面に対処することはできないゆえに,発生抑制の理念実現のためには,更に,経済的手法を導入した政策立案実施をなすべきである。
     そして,海外の諸策を参考としながら,デポジット制・環境税・課徴金制度・ゴミ有料化(なお家庭ゴミについては否定的である)などの経済的手法について,各地の実状に応じて綿密に検討し,有効に機能すると判断される手法は積極的に導入し,環境負荷を与えるあらゆる過程を抑制する経済的方策をとるべきである。
第4 実現への道筋
  1. 第2において,国のダイオキシン対策の誤りの根が中央集権的行政にあることを指摘したが,諸外国に比して,発生抑制の理念実現が我が国において立ち後れている原因は,大量生産・大量消費・大量廃棄の経済優先の政策立案実施のために最も適していた,いわゆる政官財癒着の構造及び国の中央集権的行政と縦割り行政という政策立案実施の過程そのものにあることは明らかである。
     そこで,発生抑制を理念とする手法を中心としたダイオキシン対策は,一般廃棄物・産業廃棄物の如何を問わず,国ではなく,現実に現場に関与する地方公共団体,なかんずく最も地域に密着した行政単位である市町村が主体となって,各地の実状に合った独自の政策立案実施を積極的に行うべきである。
     そして,現実に生活し環境負荷に直面する市民こそが,非政府あるいは非営利の立場にあるものとして利害に縛られることなく,地域の実情に応じた環境政策の立案及び実施を成し遂げる有力な担い手であり,その市民と地域的にもっとも身近な市町村が市民の声を受けて,主体的にダイオキシン対策を講じて行くべきである。
  2. 市町村による対策
     地方公共団体のなかには,その対策のため,条例・要綱を独自に制定するなどあらゆる手法を駆使して,一定の効果をあげている所も現れている。
     今後ダイオキシンを含む有害物質及び廃棄物自体の発生抑制を実現していくためには,地方公共団体,特に地域に密着した市町村における条例制定等による対策立案実施が有力な方法である。条例制定による規制強化及び発生抑制促進こそが,中央集権的廃棄物処理行政が生み出すさまざまな弊害を解消し,あるべき対策を実現させる切り札である。また,市町村における条例・指導要綱・協定は,廃棄物行政法の欠陥を補い,地域の実状に合った政策を実現するよりどころである。
     これらの実現のために,市町村は,地方分権推進と条例制定権の拡大をはかりつつ,積極的な立案実施を行うべきである。
  3. 市民及び市民団体の役割
     ダイオキシン問題は,地域住民の告発が契機となっていることは明らかである。そして,市町村の重要な役割は,このような現場を知る市民及び市民団体に支えられて,初めて果たすことができるのであって,市民及ぴ市民団体がその具体的政策立案から実施及び監視までのあらゆる過程において参画を遂げれば,更に有効に機能するものである。
     したがって,市町村は,具体的政策立案から実施及び監視に至る過程において,市民及び市民団体の参画について,法的に裏付けられ,政策立案と実施に確実に反映されるべき会議の場の提供や勉強会あるいは環境教育システムを構築するなどに積極的に取り組むべきである。
     その前提として,行政及び関連企業などの有害物質及び廃棄物対策関連の情報は,徹底して市民に公開されなければならない。
     そして,市民及び市民団体は,ダイオキシン問題に象徴される我が国の環境問題対策について,問題告発のみならず,更に自らの地域に関する情報は自ら知り,自らが考え,自らが行動するという意識のもとに,地方公共団体への対策の提言,対策への意見表明,対策実施の監視,環境問題に関する市民意識の向上への貢献などの役割が大いに期待される。
     具体的には,情報公開制度の活用とその改善を求めていくこと,市民及び市民団体によるダイオキシン対策・廃棄物対策提言を政策立案過程に反映させる制度作りの提言・市民団体の組織強化・勉強会・他の関係組織とのネットワーク作りなどが重要である。
     我が国においても,種々の立法により,地方分権と非営利活動の両面の推進の萌芽がみられるようになった今こそ,実現への道筋として,市民及び市民団体の活動及びこれに支えられた市町村の主体的な対策立案と実施が期待される。
     市町村は,市民及び市民団体が,その活動を活性化し,協力関係をもって政策立案,実施及び監視に参画することが,あるべき環境保全社会の実現に直結する道であることを認織すべきである。
第5 弁護士の使命
 弁護士は市民と直接接触しながら,現場に触れて活動し,かつ,法律専門家として立法・行政・司法のあり方について研究し,基本的人権の擁護と社会正義の実現を目指して指導的役割を果たすべき職責がある。
 第4までの検討で明らかなように,ダイオキシン問題は,廃棄物問題として優れて地域的,現実的な環境問題であり,かつ,立法・行政・司法のあり方や杜会経済構造のあり方などとも密接不可分な問題であるゆえに,弁護士は,この問題に対し,決して無関心であってはならず,その果たすべき役割は重大であると言わねばならない。
 われわれ弁護士は,ダイオキシン問題に積極的な関心を持ち,地方公共団体並びに市民及ぴ市民団体の積極的活動を視野におきながら,各地の紛争への関与,市民相談などを通じて,市民の声を受け止め,市町村を中心とした諸機関の廃棄物問題に関する政策立案実施過程に関与するなど,あるべき廃棄物の発生抑制対策の実現へ向け,法律家の立場から,市民とともに積極的に活動することを誓うものである。

以上

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