里山は、農村の自然環境を象徴し、「里山」という言葉は、人々にふるさとのイメージを喚起し郷愁を呼び起こす。自然と人間の相互作用により形成され維持されてきたのが里山であり、里山を保全するためには、人間が関わり続けていくことが必要とされる。
10年前に当連合会が里山保全を求める宣言をして以来、里山保全の重要性の認識は深まり、里山を保全する様々な取組みが行われた。しかし、その多くは代表的な里山を点として保全するためには有効であっても、名もなきありふれた里山を含む面的な保全に有効ではなかった。今求められている取組みは、一部の代表的な里山のみを守ることではなく、身近に存在するありふれた里山を可能な限り保全することであって、里山保全は里山が存在してきた社会システムの保全、再生の問題として捉える必要がある。
大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムが、里山を薪炭や堆肥の供給源として維持させてきた伝統的な循環型の社会経済システムを駆逐し、里山を荒廃させ、消失させてきた。したがって、里山全体の保全を図っていくためには、里山を再び経済に取り込んでいけるような、自然生態系における物質やエネルギーの循環に則した新たな社会経済システムへの転換が不可欠である。これは、地球環境の危機を克服し、持続可能な社会を構築するための方法論と一致し、持続可能な社会では、里山が里山として保全されることが必要とされ、里山は、単に農村の自然環境を象徴するだけではなく、私たちの社会の循環性、持続可能性の象徴とされる。
今後私たちが循環性の象徴として里山を保全し、持続可能な社会の構築を目指して行くために、少なくとも以下の具体的な課題への取組みが求められよう。
以上のとおり宣言する。
2004(平成16)年9月25日
関東弁護士会連合会