BSE(狂牛病)問題をきっかけに噴出した食品関連のさまざまな不祥事は,私たちに深刻な「食の安全・安心」問題を突き付けました。2003年5月に「食品安全基本法」が成立し,食の安全に対する科学的評価を独立に行う食品安全委員会が内閣府に設けられましたが,消費者は,行政や事業者に対する不信感をぬぐい切れず,食の安心を強く求めています。
しかし,他方では,8億人を超える飢餓人口が存在する中で,溢れかえる食材を大量消費,廃棄する私たちがいます。しかも,わが国の食料自給率は年々低下し,現在ではカロリーベースでわずか40%にすぎず,OECD加盟国中の最低クラス,人口1億人以上の国としては最低水準となっています。
経済性や利便性にかたよった食料の生産や輸入により,消費者と生産現場とは場所的にも時間的にも著しく乖離し,人に,自然のめぐみである食べ物への畏敬を失わせ,環境破壊や南北問題を発生させています。「食の安全・安心」問題は,現在のゆがんだ生産と消費の裏返しですが,このような食のあり方は,21世紀の課題とされる持続可能型社会とは相容れないものです。世代内及び世代間の公平に配慮した持続可能な発展を求めるのであれば,まず,環境への負荷をできるだけ押えた生産,消費を進める必要があります。
また,食生産の広域化,技術化,複雑化により,食品事故も複雑化,広域化しており,簡易・迅速な被害救済制度の確立が求められます。
関東弁護士会連合会は,いま,食べることの意味を問いなおし,持続可能型社会に根ざした「食の安全・安心」の確立には,消費者の自覚と責任ある消費行動を前提に,生産者,流通業者,消費者という関係当事者,さらには行政との協働による施策の推進が重要であることを確認し,次のとおり宣言します。
以上のとおり宣言する。
2005年 (平成17年) 9月30日
関東弁護士会連合会
以上の理由により,平成17年度関東弁護士会連合会定期大会宣言「持続可能型社会における『食の安全・安心』を求めて」をここに提案いたします。
以上