戦前の日本の家族は,「家制度」と「男性上位」を基本にしてきたが,戦後,憲法第24条が制定され,個人の尊厳と男女の平等を基本として根本的に改革された。以来,家庭裁判所は,新しい家族法制と少年司法を支え,日本の家族のあり方や少年非行問題などについて,大きな役割を担ってきた。
そして戦後60年経過し,日本の経済・社会・文化の発展・変化を背景に,家庭や子育てのあり方は大きく変わってきた。これまで,家族間の問題は,主として家族内で解決されるべきこととされてきたが,今日,児童虐待・高齢者虐待・DV・成年後見などの問題を通じ,家族・夫婦の問題を,改めて人権の観点から捉えなおそうとする動きが強まっている。
また,社会的に注目された重大な少年事件やその被害者救済の課題を通じて,いま日本の少年司法のあり方が問われてきている。
日本の家庭裁判所は,家事・少年の両面にわたり,司法・行政・福祉の機能を併せ持ち,市民の中に一定程度浸透し,家事・少年問題の重要な担い手となってきた。しかし,今日,新しい情勢と市民の期待に応える,より開かれた家庭裁判所のあり方が検討されるべきに至っているのである。
私たちは,関東弁護士会連合会の平成19年度シンポジウムにむけて,家庭裁判所がこれまで果たしてきた役割を検証し,家事・少年の全般的視点をもちつつ,成年後見など幾つかのテーマを設定して問題点を深めていきたい。
そして,司法改革の下での家庭裁判所改革を踏まえ,今日的な,市民のより一層の利用と参加のある「市民に開かれた家庭裁判所」について提言したいと考える。
そして,司法の一翼を担う者として私たち自身,「市民に開かれた家庭裁判所」をめざし,主体的に関わっていくことを,ここに決意するものである。
2006年(平成18年)9月22日
関東弁護士会連合会
よって,本提案をおこなうものである。
以上