関東弁護士会連合会は,1994年(平成6年)の定期大会において「弁護士過疎対策に関する決議」を行い,弁護士過疎問題の解消なくして市民に身近な司法の実現は不可能であるとの立場を打ち出し,以後さまざまな取り組みをしてきた。
そもそも,司法が市民にとって身近でなければ,法の支配が及んでいることにはならないのであり,市民に身近で利用しやすい司法の実現は,法曹三者に要請される喫緊の課題である。
この課題に応えるため,日本弁護士連合会は,1996年の名古屋宣言以降,ひまわり基金法律事務所の開設など弁護士過疎・偏在問題解消に向けて意欲的に取り組んできた。関弁連管内にあっても7箇所のひまわり基金法律事務所が開設された。
しかし,弁護士の大都市集中の傾向は依然として続いており,ゼロワン地域は減少しても,弁護士の少ない地域は今なお数多く存在している。弁護士過疎・偏在問題解消に向けた運動は,なお道半ばであると言わざるを得ない。特に,被疑者国選弁護の対象事件が広がる2009年を間近に控え,各弁護士会は適切な弁護体制を敷くことが問われているところである。また,同年に始まる裁判員制度の対応体制の整備も緊急の課題である。
弁護士過疎・偏在問題を解消するには,単に法曹人口を増加させたり,公設事務所を増設することのみで解決できるものではない。各地の裁判所支部,検察庁支部の人的・物的設備が貧弱であれば,そこに集まる弁護士の数も自ずから限界がある。弁護士過疎・偏在の問題は,単に弁護士の都市集中の問題に留まるものではなく,裁判所・検察庁を含めた司法全体のインフラ整備の問題であることを自覚しなければならない。
そこで,関東弁護士会連合会は,日弁連が2007年の第22回司法シンポジウムにおいて弁護士過疎・偏在問題を取り上げたのを受けて,この司法シンポジウムで行われた議論をさらに深めるため,2008年度関東弁護士会連合会定期大会シンポジウムのテーマとして取り上げ,管内の具体的事情に即して調査するとともに,「市民の身近にあって利用しやすい司法」を目指すべく,弁護士過疎・偏在問題の解消に向けて具体的な解決策を検討・提言することとする。
以上の通り決議する。
2007年(平成19年)9月21日
関東弁護士会連合会
以上