暴力団は,資金獲得を目的とし,その手段を選ばない。暴力団が獲得した資金は,その獲得過程の違法行為自体の問題性もさることながら,その資金が更なる違法行為の再生産のために使用されることの問題性も看過されてはならない。暴力団の資金獲得活動の封圧と,暴力団が獲得した資金(犯罪収益)の剥奪が必要とされる所以である。
政府は,平成18年7月,犯罪対策閣僚会議内に,暴力団資金源等総合対策ワーキングチーム(後に銃器犯罪対策と併せて「暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム」と改称)を設置し,公共事業からの暴力団の排除及び企業活動からの暴力団の排除等による暴力団の資金源の遮断,暴力団犯罪の被害者が行う損害賠償請求を容易ならしめるための暴力団対策法改正による犯罪収益の剥奪,等の施策を進めてきた。
他方で,暴力団による犯罪収益剥奪の切り札となるべき,組織的犯罪処罰及び犯罪収益規制法による,没収及び追徴並びにそれらの保全手続は,当初の予期された成果を十分に上げているとは言い難い。また,諸外国の組織犯罪対策の例から見て,犯罪収益剥奪の有効な手段となり得べき,各種税法に基づく課税措置も,不足なく有効に機能しているとは言い難い。
資金源の遮断と犯罪収益の剥奪によって,暴力団を根絶するためには,あらゆる国家機関が組織的に連携し,可能な限り有効な手段を創意工夫することが必要であることは,諸外国の例を見ても明らかである。
翻って,現在の日本の法制度及びその運用状況においては,関係省庁による資金源対策の諸政策は緒に就いたばかりである。また,警察と国税の連携は,決して万全なものであるとは言えず,その連携を有効ならしめるために,検察が果たし得る役割も種々の工夫の余地があるものと言える。
よって,関東弁護士会連合会は,当連合会管内の各弁護士が,その機会に応じて,上記の改正暴力団対策法を利用するなどして,犯罪収益の剥奪及び暴力団被害の回復に努めることの重要性を認識すると共に,国及び地方公共団体に対しては,関係省庁による更なる資金源対策の推進によって暴力団の資金獲得活動を封圧すること,警察,検察及び国税が組織的に連携して,暴力団が獲得した資金を剥奪するために,あらゆる手段を講じること,並びにこれらの施策を実現するために必要に応じて法律の整備を進めること,を求める。
以上決議する。
2008年 (平成20年) 9月26日
関東弁護士会連合会