地方議会~議事機関としての原点回帰とさらなる活性化をめざして
地方議会~議事機関としての原点回帰とさらなる活性化をめざして
近時,各地で地域政党が誕生する動きがみられたり,あるいは,地域に密着した課題について住民投票が行われるなど,地方自治の主役である住民の意識に変革が現れつつある。
こうした住民意思を背景に,自治体内外に積極的にメッセージを発信する首長の動向に耳目が集まる一方,二元代表制をとる我が国の地方自治制度において,もう一つの雄である地方議会は,全体的にみると,必ずしもその存在意義を発揮しているとはいい難い。従前の議会において,実質的な討議や議論が不十分であったり,また,住民意思が的確に反映されているとはいえなかったところに,その原因があると思われる。
憲法が地方自治の要として二元代表制を採用しているのは,住民の代表者で構成される議会での議論を重視しているからである。特に,自治体の財政が逼迫している今日であればこそ,議会には,自治体行政の無駄を省くためだけではなく,住民の納得度・満足度を高めるために,充実した議会活動を行うことが求められている。
そこで,地方議会が,住民意思を反映した議事機関への原点回帰を図るとともに,その活動をこれまで以上に活性化させるため,当連合会は,以下のとおり提言する。
- 議会は,議事機関としての本来の価値を発揮するため,まず議員相互間で十分な自由討議を行い,問題点ないし争点を明確にした上で,執行機関との討議に臨み,その過程を通して上記問題点ないし争点を解明して,議会意思を形成すべきである。
- 議会の上記のような審議過程を重視し,かかる過程については委員会や全員協議会も含め住民に対し公開し,また,いかなる議論がなされているかの情報を適時適切に伝えるべきである。
さらに,必要に応じて,かかる審議の過程も含めた議会活動において住民の意見等を吸収するために,議会報告会を開催したり,請願者や陳情者等からの意見聴取を行うなど,議会活動に住民が関与する機会を積極的に設けるべきである。
- 住民意思を議会活動に反映させるための手段として,住民投票をより一層活用すべきであり,また,議会は,住民投票の過程に主体的に関わっていくべきである。具体的には,常設型住民投票条例の制定を進めるべきであり,その制定に際しては,議会において住民意思を効果的に反映させるための適切な制度設計を図る必要がある。議会は,住民投票の実施にあたっては,住民の適切な判断を可能とするため,住民への情報提供及び争点を明確化させるための議会内外における十分な議論の確保に努めるべきであるし,その実施後も,投票結果を議会活動に反映させるとともに,当該施策の具体的実施方法等について十分な議論を行うべきである。
- 議会事務局の政策法務機能の強化が必要不可欠である。具体的には,議員提案の条例案作成の補助業務,適切な質問をするための調査業務などの強化が求められる。限られた人的・物的資源の中で,専門的な知見が必要となる政策法務機能を強化するために,議会事務局の政策法務業務を,弁護士・弁護士会,大学・研究者,専門的知見を有する市民などが外部からサポートすることが検討されるべきである。また,自治体間で政策法務機能等の共有化を図り,より効率的に議会事務局業務の専門性を高め,議員活動を支援できるようにすべきである。
- 各自治体の予算規模や議会の活動実態に応じ,議員報酬のあり方,政務活動費を適正化すべきである。ここでいう適正化とは,単なる経費の削減を意味するものではなく,議員報酬,政務活動費について,議員としての活動内容・量を精査し,その活動実態に応じた議員報酬や政務活動費となるようにし,その根拠を住民に説明し,住民の理解を得られるものにすることである。
以上のとおり宣言する。
2013(平成25)年9月27日
関東弁護士会連合会