「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」(以下「本法案」という。)は,本年4月19日国会に提出され,6月4日から衆議院での審議が開始されたが,通常国会が6月26日に会期末を迎えたことにより継続審議となった。
集団的消費者被害回復のための制度は,消費者庁及び消費者委員会設置法附則第6項において,同法施行後3年を目途に検討を加えて必要な措置を講ずるものとされ,2009(平成21)年9月1日に同法が施行されて以来,消費者庁の集団的消費者被害救済制度研究会及び内閣府消費者委員会の集団的消費者被害救済制度専門委員会において検討が重ねられた上,2度にわたるパブリック・コメント手続,27件もの都道府県議会の意見書等及び2012(平成24)年の消費者安全法改正の際の衆参両議院附帯決議も踏まえて法案化されたもので,実に丁寧な検討がなされてきたものである。
また,本法案の中身を見るに,実施主体や対象事案の拡大等の課題はあるものの,二段階に手続を分けることで消費者が容易に被害回復のための手続に参加することが可能になるなど,これまで泣き寝入りをしてきた多くの被害者の救済にとって大きな役割を発揮しうる極めて有意義な制度であることは間違いない。
かかる制度の導入を先送りにすることは,多数の消費者被害を惹起した不誠実な事業者に不当な利益を保持させることになり,公正な市場という観念に反する事態になるばかりか,今後の持続可能な経済成長にとっても相当とはいえない。消費者に生じた被害が適正に回復されることは公正な市場の実現に資するものであって,健全な企業活動の観点からも積極的に評価されるべきものである。
よって,集団的消費者被害回復のための新たな訴訟制度の早期創設のため,秋の臨時国会での審議において,本法案について適切かつ迅速な審議が行われ,法律として成立することを強く求める。
2013年(平成25年)8月30日
関東弁護士会連合会
理事長 栃木 敏明