本日,東日本大震災及びこれによって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所事故から3年を迎えた。東日本大震災では,当連合会管内の千葉県,茨城県でも津波被害や液状化被害が発生している。当連合会は,改めて,東日本大震災で犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表し,ご冥福をお祈りするとともに,現在も避難生活を余儀なくされている被災者の方々,福島第一原子力発電所事故による被害者の方々に心よりお見舞いを申し上げたい。
ところで,3年を経過した今日でも,東日本大震災による被災者の方々は約27万4000人(平成25年12月現在・復興庁調べ)が避難生活を余儀なくされ,福島第一原子力発電所事故による被害者の方々は約13万6000人(平成26年1月現在・福島県による被害状況速報),その内東京都に約6600人,新潟県に約4600人,埼玉県に約2800人,茨城県に約3700人,千葉県に約3300人,栃木県に約2900人,群馬県に約1500人,神奈川県に約2100人,ほか管内各県に約2300人が避難生活を余儀なくされている。また,復興事業も建設資材の不足などにより,その進捗にも支障が生じており,更に,原子力発電所事故による高濃度の汚染水が溜まり続け,漏出事故も度々発生しており,復興,収束にはほど遠いのが現状である。
当連合会は,平成23年3月23日,東日本大震災への対応として支援統括本部を設置し,被災地に当連合会独自に弁護士を派遣するとともに,原子力損害賠償支援機構の訪問相談に弁護士を派遣し,福島県いわき市で行っている高齢者サポート事業の協力支援に弁護士を派遣し,現在でも原子力損害賠償支援機構の訪問相談に多数の弁護士を派遣している。
また,当連合会は,平成23年度定期弁護士大会における「東日本大震災及び原子力発電所事故の被災者救済と災害復興等に関する宣言」において,国及び各電力会社はすべての原子力発電所を可及的速やかに廃止すべきであり,代替エネルギーについては再生可能な自然エネルギーへの転換を基本原則とすべきであると提言した。
しかし,政府は,本年2月25日,新たなエネルギー基本計画の政府案を了承し,今後,自民党,公明党と協議した上で閣議決定するとされている。この政府案は,原子力を昼夜を問わずに発電する「重要なベースロード電源」と位置づけ,原子力規制基準に適合した原子力発電所は再稼働を進めるとされている。また,発電量のうち原子力発電に頼る比率を可能な限り減らすと明記されているが,その具体的な道筋は全く明示されておらず,エネルギー政策の転換にはほど遠い内容となっている。さらに,原子力発電所で使った核燃料を再処理してまた使う核燃料サイクルも推進するとされており,旧態依然のエネルギー政策を維持していると言わざるを得ない。当連合会は,改めて政府に対し,核エネルギーから再生可能な自然エネルギーへの政策の転換を求めるものである。
なお,当連合会は,平成25年8月30日,「東京電力株式会社の福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権の消滅時効に関する理事長声明」において,福島第一原子力発電所事故による損害賠償請求権に民法第724条前段の消滅時効,後段の除斥期間の規定が適用されると平成26年3月に本件事故による損害賠償請求権が時効消滅することになり,また,早期に除斥期間が満了することになるので,民法第724条の規定を適用しないことを内容とする特別措置法を制定することを求めた。
これについては,昨年12月に特例法が成立し,本件事故による損害賠償請求権については,時効期間が3年から10年に延長され,また,「不法行為の時から20年」とされた除斥期間が「損害が生じた時から20年」と変更された。当連合会は,特例法の成立に努力された各関係者に対し,感謝するとともに御礼を申し上げたい。
当連合会は,以上のとおり,東日本大震災による被災者,福島第一原子力発電所事故による被害者の救済に向けた取組を行ってきたが,これからも被災者・被害者の求めに応じ,訪問相談に弁護士を派遣して継続した支援活動を続けていくとともに,国や関係機関に対し,震災からの復興,原子力発電所事故の収束,被災者・被害者の救済に向けての提言を積極的に行っていく所存である。
2014年(平成26年)3月11日
関東弁護士会連合会
理事長 栃木 敏明