関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・声明宣言・決議・声明

平成26年 声明

商品先物取引法における不招請勧誘禁止緩和に抗議する理事長声明

 経済産業省及び農林水産省は,本年1月23日,商品先物取引法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」という。)を定めた(施行は本年6月1日予定)。
 しかし,本省令は,法律の委任の範囲を超える違法なものであり,商品先物取引法(以下「法」という。)が禁止する不招請勧誘を実質的に解禁するものとして法の趣旨にも反するものである。

 現在,商品先物取引の不招請勧誘(顧客の要請がないのに電話・訪問により商品取引契約の締結を勧誘すること。以下同じ。)は,法第214条第9号において禁止されており,同号の括弧書において「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」として主務省令で定める行為に限って除外事由としているところ,本省令は,以下で述べるとおり,「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」の範囲を実質的に逸脱する規定である。
 すなわち,本省令は,業者が勧誘に先立って見込み客に勧誘を受ける意思を確認する際,見込み客に対して,65 歳未満で年収 800 万円以上又は金融資産 2,000 万円以上を有し,かつ,商品先物取引の基本的仕組み等を理解する者等でなければ契約を締結することができない旨を説明する義務を課している。しかし,突然電話又は訪問する相手に,これらの要件をまず確認してから勧誘を始めるなどということは,商品取引契約の締結に至る現実の過程に照らして考えられない。本省令が施行されれば,これらの確認と勧誘が渾然一体となってなされる蓋然性は極めて高く,本省令は,当該要件を満たさない者に対しても不招請勧誘を許容する結果となりかねない。したがって,本省令の定める除外事由は,法第214条第9号にいう「委託者等の保護に欠け,又は取引の公正を害するおそれのない行為」を事実上許容するものであり,法律の委任の範囲を超え,違法と言わざるを得ない。
 また,本省令は,商品取引契約の締結前に,見込み客から年収や資産の確認の方法として本人に申告書面を差し入れさせたり,試験をして理解度を確認することを求めているところ,現在でも商品取引業者が委託者を誘導して真実と異なる申告をさせたり,正答を教授するなどの行為が蔓延し,深刻な被害が生じていることからすると,これらの手法が委託者保護を図るという法第214条第9号の趣旨に照らし,有効に機能すると評価することはできない。
 したがって,このような手法を本省令で規定していることをもって,本省令が法律の委任の範囲を超えないとする根拠とは到底なり得ない。

 そもそも,不招請勧誘の禁止規定は,商品先物取引の勧誘による深刻な被害が長年にわたり発生し続け,商品取引業者に対する他の行為規制では沈静化しなかったことから,2011(平成23)年1月に施行された法で導入されたという経緯がある。そして,不招請勧誘禁止規定の当該施行後は,依然として深刻な被害は存在するものの,被害件数は全体としては減少傾向にあり,不招請勧誘の禁止が消費者被害防止の有効な手段として機能しているということができる。しかし,本省令が施行されると,投資被害が再び増大することが強く懸念され,委託者を含む消費者保護という法の趣旨・観点からも,許容されるものとは到底いえないものである。

 そこで,当連合会は,本省令の施行に抗議し,本省令の施行がなされないよう適切な措置が行われることを求める。

2015(平成27)年3月2日
関東弁護士会連合会
理事長 若旅 一夫

PAGE TOP