関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成26年 意見書

改正入管法等施行に関するアンケート結果を踏まえた意見書

2015(平成27)年2月24日
関東弁護士会連合会

第1 はじめに

 当連合会は,出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法並びに住民基本台帳法の一部を改正する法律が平成24年7月9日に施行されたことを受けて,新たな在留管理制度及び外国人住民の住民基本台帳制度(以下「新制度」という。)が導入されたことから,新制度の運用の実態を把握するため,当連合会管内弁護士会の協力を得て,平成25年から平成26年にかけて当連合会管内のうち9都県(東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,栃木県,静岡県,山梨県,長野県,新潟県)の市区町村に対し,アンケート(以下「本件アンケート」という。)を実施した。
 ただし,同じく当連合会管内の茨城県及び群馬県については,茨城県弁護士会及び群馬弁護士会がそれぞれ独自にアンケートを実施していたことから,本件アンケート実施対象から除いている。
 本件アンケートの回答は,9都県の全406市区町村のうち,282市区町村(有効回答率69.4%)よりなされた。ただし,この282市区町村の全てが,本アンケートの問いの全てに回答したわけではない。
 以下においては,本件アンケート結果を踏まえて,当連合会の意見を述べるものである。

第2 本件アンケート結果及び同結果の分析に基づく当連合会の意見

  1. 1 職員に対する周知について
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       本件アンケートにおいては,総務省が「住基法の改正によって,非正規滞在者に対する行政サービスの対象範囲に変更が生じるものではない。」との見解を示していることから,同見解が各職員に周知されているかを調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       結果は,周知率が51%とほぼ半数であり(周知方法としては書面配布が最も多かった。),概ね人口が多い自治体のほうが周知率は高かった。人口が多いほど外国人住民の占める割合も高くなることから,当該自治体内の外国人住民の数が周知率に少なからず影響しているものと思われる。
       しかし,人口10万人以上の自治体における周知率は67%,人口5万人以上10万人未満の自治体における周知率は47%,人口1万人以上5万人未満の自治体における周知率は42%と一定数外国人がいると思われる規模の自治体であっても,職員への周知がなされていない自治体が数多く存在することが明らかとなった。
    3. (3) 当連合会の意見
       外国人住民数の多寡に関わらず,自治体内に居住している外国人も日本人と同様に住民である以上,その者への行政サービスを滞りなく実施することが行政機関としての責務であるから,各自治体は,外国人に対する行政サービスの実効性を確保するためにも,すべからく職員に対して「住基法の改正によって,非正規滞在者に対する行政サービスの対象範囲に変更が生じるものではない。」との見解を職員に周知する措置を講ずるのが相当である。
  2. 2 住民基本台帳制度関係について
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       非正規滞在者については,新制度の導入以後も一定の行政サービスの提供を受けられることになるが,住民基本台帳制度の対象から除外されることから,行政サービスを提供する自治体が必要な情報を得ることができず,事実上行政サービスが受けられなくなるおそれがある。
       そこで,新制度開始以後に各自治体において,非正規滞在者の把握ができているかについて調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       これまで非正規滞在者の情報を把握していたと回答した174自治体のうち98%が,当該情報把握を外国人登録票に基づいて行っていたが,208の自治体において外国人登録制度廃止後の非正規滞在者の情報把握に向けた方策を確立できていない現状が明らかとなった。
       一方で,何らかの方策を採っている自治体においてもその情報管理は一元的には行われておらず,部署ごとで管理しているとの回答が大半であった。しかも,このうち半数を超える自治体が,他の行政サービスの担当部署への情報提供をしていないとのことであった。
       また,新制度以後の非正規滞在者の情報把握につき,非正規滞在者本人が何らかの申請のために自治体を訪れなければ,その情報を把握しようがない,実態を把握することが困難であるとする回答もあった。
       なお,地方入国管理局から送付される被仮放免者情報の管理は,住民登録担当部署で一元的に行っており,各部署からの照会,問い合わせ,依頼があれば情報提供するという運用が多くの自治体で行われていることが明らかとなった。
    3. (3) 当連合会の意見
       以上のとおり,新制度開始以後,各自治体において非正規滞在者の情報把握が困難となっている実態が存在している。このままでは,非正規滞在者につき,本来受けることができる行政サービスにも関わらず,それを受けることができないという事態が生じかねない。
       そこで,政府においては,改正住基法附則第23条においても,非正規滞在者などにつき「なおその者が行政上の便益を受けられるようにするとの観点から,必要に応じて,その者に係る記録の適正な管理の在り方について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」とされているのであるから,直ちに適正な管理の在り方について検討し,全国で画一的な運用ができるよう必要な措置を採るのが妥当である。
  3. 3 教育関連の行政サービスについて
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       まず,外国人の子どもの教育については,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条,児童の権利に関する条約第28条等により,在留資格及び外国人登録の有無にかかわらず,すべての子どもに教育を受ける権利が認められるべきところ,平成23年12月16日付け内閣総理大臣答弁書(平成23年12月16日付け内閣総理大臣野田佳彦の衆議院議員阿部知子提出国際的な人権諸条約の締結及び実施,ならびに外国人の年金や教育等に関する質問に対する答弁書)においても,「我が国の公立の義務教育諸学校においては,在留資格の有無を問わず,就学を希望する外国人児童生徒を日本人児童生徒と同様に無償で受け入れることとしている。」とされている。
       また,同答弁書においては,「各都道府県教育委員会等に対して通知を発出し,外国人児童生徒が公立の義務教育諸学校への就学の機会を逸することのないよう,外国人児童生徒の受入態勢の整備や就学案内の徹底を図るよう周知を行っているところである。この方針は,新たな在留管理制度の導入後も変わるものではない。」とされている。
       したがって,非正規滞在者の子どもは,新制度の導入以後においても,公立の義務教育諸学校への就学,就学案内の送付等の教育関連行政サービスの提供を受けられるのは明らかである。
       しかし,非正規滞在者の子どもは,新制度によって住民基本台帳制度の対象から除外されることから,従前は受けられた就学案内の送付等の教育関連の行政サービスが受けられなくなるおそれがあるため,本アンケートにおいては,新制度の導入後の状況を調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       非正規滞在の児童生徒が就学可能と回答した自治体は58%に過ぎず,不可としている自治体が14%,検討中としている自治体は29%であった。就学不可としている自治体の中には,外国人には就学義務がないと回答する自治体もあった。就学可としている自治体は人口規模の大きいところが多く,規模の小さい自治体ほど受入れが困難である実態が判明した。
       また,新制度の開始以降,非正規滞在の児童の就学を促すために自治体において就学案内通知の送付や戸別訪問など何らかの対応を行うことが「ある」と回答したのは,非正規滞在の児童生徒の就学が可能であると回答した自治体の中でもわずか14%であり,外国人児童生徒の受入体制整備や就学案内の徹底に関する十分な周知がなされていないことが明らかとなった。
       また,非正規滞在児童の就学が可能と回答した自治体においては,児童の居住実態の確認のため,賃貸借契約書,公共料金領収書,個別訪問での確認,民生委員及び住民からの情報提供,教育委員会への在籍照会,郵便物等の確認等の方法が採られていることが明らかとなった。
       さらに,非正規滞在児童の就学にあたっての援助は,53%もの自治体で行われていなかったが,援助の有無は自治体規模に概ね比例していた。
       そのほか,日本人の児童に対して就学促進のためのアプローチを行うと回答した180の自治体のうち,非正規滞在者に対しても同様のアプローチを行うと回答した自治体は,58の自治体(36%)にとどまった。
    3. (3) 当連合会の意見
       たしかに新制度導入によって,非正規滞在者の情報把握が困難となったという現実的な問題は存する。しかし,就学年齢の児童の存在に関する情報提供があった場合には,各自治体は,即座に実態を把握し,在留資格に関わらず行政サービスを提供する努力をすべきである。
       別の観点からいえば,児童に対する虐待やネグレクト等は国籍に関わらない問題であり,これらの問題発見の端緒として就学していない児童や検診未受診等があり得るところである。このような被害に遭う児童を国籍に関わらず救うためにも,行政機関の積極的な働きかけが強く望まれる。
       また,非正規滞在者の就学を不可と回答する自治体も存在したことは看過できない事実である。これは児童の教育を受ける権利を侵害するものであり,上記政府方針にも反するものであるから,政府は各自治体に対する情報の周知が徹底されていないことを真摯に受け止めるべきである。
       もっとも,非正規滞在者の未就学児童の把握が困難という問題は,単に各自治体への周知徹底によって解決する問題ではないと思われる。
       上述のとおり,これまでは外国人登録票にて確認ができていた非正規滞在の児童の居住実態の確認のため,各自治体は,賃貸借契約書を確認するなどしており,新制度導入によって明らかに事務が煩雑化している現状が見てとれた。さらに,アンケートにおいては,自治体から非正規滞在者を把握したときの措置に悩むという声が挙がっていることからしても,政府によって就学促進のために各自治体が行うべきことにつき,早期に何らかの方針が示されるべきである。
       以上のことから,政府は,非正規滞在者の児童生徒の就学は可能である点について,各自治体に周知徹底するとともに,各自治体の事務量の増大を回避しつつ該当児童生徒の情報を把握する方策を確立し,就学促進の働きかけについて必要な措置を講じるべきである。
  4. 4 医療関連の行政サービスについて
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       まず,平成12年4月28日付け内閣総理大臣答弁書(平成12年4月28日付け内閣総理大臣森喜朗の参議院議員大脇雅子提出外国人の医療と福祉に関する質問に対する答弁書)によれば,少なくとも入院助産制度,養育医療制度,障害児に対する育成医療,母子健康手帳の交付及び定期予防接種の医療関連の行政サービスについて,在留資格及び外国人登録にかかわらず,これらを受け得るものとされており,また,結核予防に関する健康診断,予防接種及び医療についても同様の取扱いがされている。また,これらの行政サービスについては,前述の平成23年12月16日付け内閣総理大臣答弁書において,新制度によっても変更がないとされている。
       しかし,非正規滞在者については,新制度によって住民基本台帳制度の対象から除外されることから,従前は受けられた母子健康手帳の交付等の医療関連の行政サービスが受けられなくなるおそれがあるため,本アンケートにおいては,新制度導入後の実態を調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       新制度開始後において,非正規滞在者が受けられる医療関連行政サービスとして最も多かった母子手帳交付でさえ,約半数にあたる149(52%)の自治体でしか受けられず,その他のサービスにおいては,提供をしている自治体は半数にも及ばなかった。このように医療関連行政サービスが非正規滞在者に対して十分に提供されていない実態が明らかとなり,特に自治体の人口規模が小さいほど受けられるサービスの範囲が狭い傾向が認められた。
       また,新制度導入によって医療関連行政サービスの援助を行うにあたり,賃貸借契約書や公共料金領収書の確認,居住確認のための個別訪問調査などを行っている自治体もあった。収入を証明する資料の提出を求める自治体も約半数にのぼった。
       そのほか,他の問いに対する回答と同様に,非正規滞在者の把握自体が困難であるという回答が多くなされた。
    3.  (3) 当連合会の意見
       政府は,非正規滞在者を把握した場合には,速やかに必要な医療関連行政サービスを提供する体制を構築し,係る制度を各自治体の関係部署に周知徹底するのが相当である。そもそも,このことは,人の生命身体に関わる問題であるから,自治体の規模にかかわらず,全自治体で医療関連行政サービスの提供が徹底して行われるべきものである。
       もっとも,その前提として非正規滞在者の把握が必須であるが,この情報把握に伴う事務量の増加を各自治体に負担させることは,酷に失する。
       そこで,政府は,直ちに適正な管理の在り方について検討し,全国で画一的な運用ができるよう,必要な措置を採るのが妥当である。
  5. 5 住民税について
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       非正規滞在者については,新制度によって住民基本台帳制度の対象から除外されるが,「外国人等に対する個人の住民税の取扱いについて」(1966年5月31日付自治府第54号)では,住民税の賦課期日(1月1日)まで引き続き1年以上法施行地に居住している,又は,居住期間が1年未満であっても1年以上居住することを通常必要とする職業を有している外国人等には,住民税の課税を行うこととなっている。また,住所を有していない外国人については,賦課期日現在において,法施行地に事務所や家屋敷を有する場合には課税するとある。
       そこで,本件アンケートにおいては,新制度開始後における非正規滞在者に対する住民税の課税実態について調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       165(64%)の自治体は,居住実態が確認できれば非正規滞在者に対しても課税すると回答しており,多くの自治体が上記政府見解に沿った対応を行っていることが明らかとなった。
       また,居住実態の有無の確認方法としては,雇用主からの給料支払報告書によるものが大半を占めているものの,各自治体で異なっている現状も明らかとなった。
    3. (3) 当連合会の意見
       他のアンケート項目に関する調査結果に照らすと,医療サービスなどの行政サービスからは非正規滞在者を排除している自治体が多い。このように非正規滞在者に対して義務は課す一方で,権利は保障しないとする姿勢はあまりに不均衡で問題である。
       また,居住実態の確認作業によって各自治体の事務量が増大していることは明白である。
       そこで,政府は,まず,非正規滞在者に対して義務のみ課す不均衡な状態を解消するため,医療関連などの行政サービスも等しく非正規滞在者に提供できることを各自治体の関係部署に周知徹底すべきである。そのうえで,政府は直ちに非正規滞在者の適正な管理の在り方について検討し,全国で画一的な運用ができるよう必要な措置を採るべきである。
  6. 6 年金について
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       新制度開始によって,中長期滞在者が在留資格「短期滞在」や在留期間3か月以下の在留資格に変更になった場合であっても,新住基制度の対象外となって住民票が消除されることになるところ,国民年金制度との関係において,この点が問題となることから調査を行った。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       まず,新制度の開始以前は中長期滞在者が在留資格「短期滞在」や在留期間3か月以下の在留資格に変更になったとしても,114(新制度開始以前に在留期間3か月以下の在留資格の外国人も国民年金に加入できたと回答した148の自治体のうち77%,130の有効回答のうち88%)の自治体が脱退の手続を行うことなく,国民年金に継続して加入する取扱いになっていると回答した。一方で,新制度開始以後は110(全体の39%,237の有効回答のうち46%)の自治体において,住民票が消除される結果,国民年金に継続して加入できないとの回答がなされた。
       また,新制度開始以前は,資格取得日など加入に必要な情報を外国人登録証で確認する自治体が大半を占めていたことが明らかとなった。
    3. (3) 当連合会の意見
       住民票から削除されることによって国民年金に加入できなくなるということは,次のような問題点をはらんでいる。すなわち,「日本人の配偶者等」の在留資格を有する者が,一時的に離婚調停中などで在留資格が変更され,その後,再度中長期在留者となる場合である。このような場合には,外国人の居住実態は何ら変更がないにもかかわらず,在留資格「短期滞在」や在留期間3か月以下の在留資格に変更されたことのみをもって国民年金から脱退させることは,中長期的に日本に滞在する外国人の地位を著しく不安定にすると言わざるを得ない。
       また,これまで各自治体は住所確認に外国人登録証を用いていたことから,同登録証が廃止されたことによって,各自治体において事務量が増加している実態が明らかとなった。
       以上のことから,政府は,中長期滞在の外国人が在留資格「短期滞在」や在留期間3か月以下の在留資格に変更になった場合であっても,各自治体が外国人の申告等の方法によって住所の要件を認定し,国民年金への加入が継続できるよう必要な措置を講じるべきである。
  7. 7 新制度の開始等に関する広報
    1. (1) 本件アンケート調査の趣旨
       新制度開始以後は,非正規滞在者が受けられるサービスに変更はない一方,新制度の対象となる外国人が住居を変更する場合,各自治体において転出届を提出する必要があり,これを怠った場合,在留資格の取消しの対象となる。
       また,配偶者の身分に基づく在留資格を有する外国人については,配偶者との離婚・死別の場合には入国管理局に届出を行う義務があるなど,新制度の対象となる外国人に対して新たに届出義務を課していることから,各自治体における広報の実態を調査した。
    2. (2) 本件アンケート結果の概要
       非正規滞在者が受けられる行政サービスに変更がないことについて広報をしていない自治体は191(73%)にも及んだ。その理由としては,従前の取扱いより変更がないことから,広報の必要はないと考えたという回答が最も多かった。
       なお,僅かではあるが,自治体において非正規滞在者は法改正以前から行政サービスの対象外となっているという誤った回答も散見された。
       次に,配偶者関係消滅届出義務について外国人への広報を予定していない自治体は140(52%)にも及んだ。その理由としては,在留資格に関わることであるため入国管理局が周知すべきものであるという回答が数多く認められた。
       さらに,新制度開始以後は,外国人に住居地新規・変更届出義務が課されることについて広報を予定していない自治体は129(50%)にも及んだ。広報をしない理由としては,ホームページの告知や窓口対応で足りるという回答が多かった。
    3. (3) 当連合会の意見
       新制度開始以後,外国人に対して新たに課されることとなった住居地新規・変更届出義務及び配偶者関係消滅届出義務につき,十分な広報がなされていない実態が明らかとなった。
       このような状況が今後も続き,外国人に対して十分な周知がなされない場合,各自治体においても未届けの転出者が続出するなど混乱が生じるほか,外国人も在留資格の取消しの対象となることから,その地位を非常に不安定にさせるおそれがある。
       そこで,各自治体において,住民である外国人に対して新制度開始に伴う変更点につき十分な周知がなされるよう広報を行うべきである。単にホームページの告知や窓口対応のみでは,外国人に対して十分に情報が行き届かない可能性が高いため,多言語のチラシを作成し郵送するなど積極的な広報に努めるべきである。
       一方で,広報には予算が必要となることから,多くの自治体が回答しているように,政府が必要な措置を講じていない段階において自治体独自の判断では対応できない側面もあることを考慮する必要がある。
       以上のことから,政府においては,各自治体の声を真摯に受け止め,チラシやパンフレットの作成,ホームページへの掲載等のほか,関係省庁間の調整を行うことにより,外国人住民に対し,これらの転出届,配偶者との離婚・死別の届出及び住民票の届出,在留資格の取消制度等の広報に努めるとともに,各自治体が広報を円滑に行うことができるよう一定の方針を示すなど必要な措置を講ずるべきである。

第3 おわりに

  1. 1 入管法及び住基法の改正によって,各自治体において非正規滞在者を把握することが困難となり,適切な行政サービスが行き届かなくなるとの懸念が改正前から指摘されていたところ,本件アンケートによってその懸念が現実のものとなっていることが明らかとなった。政府は,このような懸念に対し,従前の取扱いに変更はない旨の周知を徹底すると述べていたが,具体的な対策を講じることのないまま既に2年以上が経過している。政府は,自らの発言に責任を持ち,このような事態を一刻も早く改善するよう各自治体に対し,必要な情報及び事務的負担軽減のための統一的な対応策を提供するとともに,必要に応じて予算的措置も採るべきである。
  2. 2 また,各自治体は,人的・物的な制約の中で工夫をしながら対応している様子が窺えるが,そもそも外国人の権利について正確な知識を有していない部署もあり,これは重大な問題である。外国人も各自治体の住民であるという意識を持ち,不正確な知識に基づいて外国人に対応するようなことがないよう要請したい。
  3. 3 政府は,震災復興や東京オリンピックのために技能実習制度の改正等により外国人労働者の受入れを拡大していく方針であり,これに伴い,今後,国内において外国人が増加する傾向が顕著になると思われるが,外国人労働者を「労働力」ではなく「労働者」として接するためにも,各自治体が外国人の権利に関する正確な情報を持ち,適切な対応ができる体制を速やかに整える必要がある。
  4. 4 外国人にとって,日本は「異国」である。異国である日本に居住する外国人に優しい都市,住みやすい都市になることは,そこに居住する日本人にとっても住みやすい都市となるはずである。そのためには,地域に居住する外国人に近い各自治体の意識,対応が最も重要であり,当連合会は,各自治体に対して必要な支援を行っていくことを表明するとともに,各自治体の今後の対応の改善がなされることを強く期待するものである。

以上

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