関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

平成27年度 声明

公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会第1次報告書に関する理事長声明

 消費者庁が設置した「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」は,平成28年3月22日,第1次報告書(以下「本報告書」という。)をとりまとめた。
 本報告書では,行政通報窓口として,各府省庁のほか消費者庁にも通報受付窓口を設置し,消費者庁が受理した通報を①調査・処分権限等を有する各府省庁に振り分け,各府省庁での通報事案の調査・対応状況を確認し,適切な通報対応を促す仕組み,②消費者庁が通報事案の調査を実施する仕組みを作ることなどを具体的に検討するとされている。この点は当連合会が平成27年8月3日付け意見書(以下「当連合会意見書」という。)において要望してきた内容に沿うものであり評価できる。今後具体的制度として確実に実現するよう改めて要望する。
 さらに本報告書では,被通報事業者が不利益取扱いの禁止規定に違反した場合に行政的措置を導入することとしており,この点も当連合会意見書の趣旨に沿うものであり評価できると考える。今後,行政的措置に事業者が従わない場合に刑事罰を科すことや,直罰規定の導入等,通報者に対する不利益措置の禁止を徹底するための刑事罰の在り方を具体的に検討し実現するよう強く要望する。
 他方で,当連合会意見書が要求している,公益通報者が行った資料の収集行為に対する民事責任及び刑事責任の免除や,「その他の外部機関への通報」の要件の緩和等については,その必要性について一定の理解が示されているものの,引き続き検討することとされている。公益通報者を徹底して保護するとともに,通報者に通報先の選択の幅を広げることで,内部通報制度の充実もより促進されると考えられることから,制度の実効性の担保のため,是非とも,これらの点も法改正するべきである。
 公益通報者保護法が平成18年4月に施行され,附則にも5年後の見直しが明記されているにもかかわらず,まもなく10年が経過しようとしている。この間,現行法の下で,公益通報者保護制度が,十分機能してこなかった現状に鑑み,国民に利用されやすく,また企業の不祥事を未然に防ぐような制度に,一刻も早く改正されることを改めて求めるものである。

2016(平成28)年3月23日
関東弁護士会連合会
理事長 藤田 善六

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