関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

平成29年度 声明

外国人技能実習制度の撤廃を求める理事長声明

第1 声明の趣旨

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律に反対するとともに,外国人技能実習制度の撤廃を求める。

第2 声明の理由

 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(以下「本法律」という。)が,平成28年11月18日に成立した。
 本法律は,外国人技能実習機構を設立するなど技能実習生に対する人権侵害防止策の強化を謳っているものの,現行の外国人技能実習制度の枠組みを前提に,実習期間の上限をこれまでの3年間から5年間に延長するなど,問題を生む構造には手をつけないまま制度をより拡大させるものである。
 外国人技能実習制度は,技術移転による国際貢献という制度目的にもかかわらず,現実には日本国内の労働力不足の解消及び安価な単純労働の供給の手段として用いられている。
 そして,このような制度目的と現実との乖離ゆえに,労働者としての権利保護の視点が不十分である。雇用主が事実上固定され,在留資格自体がその雇用主の下での実習(就労)を前提としているために,職場移転の自由が制限され,対等な労使関係の構築が行われず,残業代未払いや違法な内職,パスポート取上げなどの人権侵害が相次いでいる。
 さらに,送出国側からみれば,外国人技能実習制度は出稼ぎの手段であり,技能実習生はブローカーに対し高額な手数料や違法な保証金を支払って日本に来るため,来日時にはすでに借金に縛られ,技能実習生の搾取を許す原因となっている。
 そもそも,外国人技能実習制度は,労働者であるにもかかわらず職業選択の自由がないという,憲法上ほとんど想定し難い事態を公然と許すものであり,労働搾取型の人権侵害の温床として,国際的にも厳しい批判を受けているところである。特に,全体の95%以上を占める団体監理型受入れ(中間団体が第一次的に技能実習生を受け入れるもの)においてはその弊害が顕著であり,入国管理局の不正行為認定においても約99%をこの団体監理型受入れが占めている。
 私たちは,法律実務家として,人権侵害を受けた技能実習生たちを多数見てきた。外国人技能実習制度の構造的な問題点が明らかになっているにもかかわらず,本法律は外国人技能実習制度を,構造を変えないまま存続・拡大させるものであり,当連合会は,本法律に断固として反対するとともに,外国人技能実習制度の撤廃を求めるものである。単純労働を行う外国人労働者を日本に受け入れるとするならば,その受入れを正面から認め,かつ,外国人労働者の人権に配慮した制度を整備すべきであって,外国人技能実習制度を流用すべきではない。

平成29年6月27日
関東弁護士会連合会
理事長 高木 光春

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