将来の災害に備える平時の災害対策に関する宣言
我が国は,世界の中でも,地震,津波,噴火,台風,豪雨等の大規模自然災害の多発地帯に位置し,その災害史はこれを実証するところである。特に,私たち自身が経験した阪神・淡路大震災(1995年),新潟県中越地震(2004年),新潟県中越沖地震(2007年),東日本大震災(2011年),広島豪雨(2014年),関東・東北豪雨(2015年),熊本地震(2016年)及び九州北部豪雨(本年7月)等々は記憶に新しいところである。
また,将来においては,南海トラフ震源域における東海地震,東南海地震及び南海地震,さらには,首都直下型地震の発生も懸念されている。地震だけにとどまらない。我が国には,年平均11.5個の台風が接近し,毎年のように豪雨や洪水をもたらし,活火山の数は110に上り,世界の危険な火山トップテンの中に,硫黄島と阿蘇山の2つがランクインしている。
上記事実から明らかなとおり,我が国では,何時でも,どこでも大規模災害に見舞われる危険があることを十分に認識しなければならない。
関東弁護士会連合会(以下「当連合会」という。)は,基本的人権を擁護し社会正義を実現する見地から,日本弁護士連合会,全国の弁護士会と相協力し合って,災害の被災者の人権を擁護するため,上記大規模災害時においても,法律相談活動を中心とした被災者支援活動に努めてきたところである。
この度,当連合会は,改めてこれまでの被災者支援活動の在り方を検証し,被災地調査を重ねた結果,将来の災害に備える災害対策の在り方として,弁護士会が,平時から,行政,士業団体,社会福祉協議会,災害ボランティア団体,企業,自治会・町内会等の諸団体と連携して被災者支援活動に取り組むべきことが重要であるとの認識に到達し,ここに,各団体との連携の在り方について以下のとおり提言する。
阪神・淡路大震災の大規模火災,そして東日本大震災の大津波を目の当たりにしたとき,私たちは「これは現実のことなのか。」と目を疑った。そして,多くの弁護士が「座してこれを黙認できるのか。」「今動かなくて,何時動くのか。」と立ち上がり,被災者支援に乗り出した。しかし,乗り出して,そこに見たものは,被災地の筆舌に尽くしがたい惨状と被災者の慟哭であった。
弁護士は,その惨状と慟哭に直面し,被災者支援のための知恵を学ばせていただいた。これを,将来の被災者支援活動に生かさなければ,弁護士としての使命を果たしたことにはならない。そうでなければ,災害で亡くなられた方々の魂はうかばれない。今なお胸がはり裂けるほどの悲しみに耐えている被災者の方々の無念は癒されない。弁護士は今改めて自覚しなければならない。弁護士の使命は,被災者支援活動の継続と,将来の災害に備えた平時の災害対策に万全を期することにある。
当連合会は,今後も,基本的人権の擁護と社会正義を実現する見地から,被災者支援活動に総力をあげて臨む所存である。
以上のとおり宣言する。
2017年(平成29年)9月29日
関東弁護士会連合会
4 まとめ
弁護士が,過去の被災者支援活動の中で見たものは,筆舌に尽くし難い惨状と慟哭であった。同時に,自らの力の足らざるところを自覚した。自覚して,これを補うために,意を共にする被災者支援団体の方々と連携することを志向し,その連携関係は平時においてこそ構築しなければならないという知恵を学んだ。今こそ,私たちは,この志向と知恵を,実際に機能する連携関係に発展させることにより現実化しなければならない。
当連合会は,今後も,基本的人権の擁護と社会正義を実現する見地から,被災者支援活動に総力をあげて臨む所存である。
以上