関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

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平成29年度 声明

「食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)」に関する意見書

平成29年6月23日
関東弁護士会連合会

 消費者庁及び農林水産省の共催する「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が,平成28年11月29日付で「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間取りまとめ」を公表した。これに基づき,本年3月27日付で消費者庁より公表された「食品表示基準の一部を改正する内閣府令(案)」(以下「本改正案」という。)に関し,当連合会は,以下のとおり意見を述べる。

第1 意見の趣旨

  1. 1 規制対象を22の各食品群及び4品目に限定せずに原材料の原産地表示を義務付けるとの制度枠組み(本改正案第3条第2項)には賛成である。
  2. 2 義務表示の対象とする原材料を,原則として製品に占める重量割合上位1位の原材料に限る(本改正案第3条第2項表1)のではなく,重量割合上位3位かつ5パーセント以上の原材料とすべきである。
  3. 3 特定の原材料の名称を商品名又は商品名の一部として使用する表示方法(いわゆる冠表示)のうち商品を特徴付ける原材料が商品名に含まれる商品については,重量割合にかかわらず当該原材料の原産地を記載するとの規定を設けるべきである。
  4. 4 可能性表示(本改正案第3条第2項表1の五のイ),大括り表示(本改正案第3条第2項表1の五のロ),「大括り表示+可能性表示」(本改正案第3条第2項表1の五のハ)の例外規定を設けることには慎重であるべきである。仮に,例外規定を設ける場合には,客観的かつ具体的な要件による限定を付すべきである。また,その場合には,加工食品に表示された二次元バーコード・三次元バーコードを利用して,消費者が原料原産地を表示した事業者のホームページにアクセスして原料原産地の情報を知ることができる仕組み等消費者が原料原産地に関するより詳細な情報を容易に入手するための情報公開等の仕組みを確保するよう義務付けるべきである。
  5. 5 中間加工原材料について,その製造地のみの表示を原則とする規定(本改正案第3条第2項表1の二のロ)は,原料の原産地と中間製造地の双方の表示を義務付けるべきである。仮に原料の原産地がわからない場合には,製造地表記に加え,「原産地不明」との表示をすべきである。

第2 意見の理由

  1. 1 原料原産地表示義務を課す対象について
     食品表示法に基づく食品表示基準による表示は,消費者の自主的かつ合理的な選択に資するものである必要があり,消費者に誤認を与えるものであってはならない。また,いずれの国で生産又は加工された食品であるかについての消費者の関心は高く,消費者は食品安全や海外支援など様々な視点から,その加工食品の原材料が国産か否か,輸入品にあっては輸入国名を知った上で選択したいと考えている。かかる観点からすれば,全ての加工食品について原料原産地表示がなされるべきであり,加工食品の原料原産地表示を22食品群及び4品目に限っている現行法が不十分であることは明らかである。
     よって,原料原産地表示義務の対象を全ての加工食品に拡大する本改正案の制度枠組みには,賛成である。
  2. 2 表示すべき原材料について
     本改正案第3条第2項表1では,義務表示の対象を,製品に占める重量割合上位1位の原材料に限っている。しかし,原材料を重量割合上位1位に限ると,糖や食塩などの中間加工原材料についての表示のみとなる食品が生じることが想定され,消費者の選択を確保する目的が達成できない。また,実質的にも,重量割合上位1位と2位,3位の割合が近接している場合には,上位1位のみ表示することでかえって,消費者の誤解を招き,本来の目的に資さないおそれがある。例えば,重量割合上位1位の原材料は国産であるがそれと割合の近接している2位以下の原材料は外国産という場合,実際には製品の重量割合からすると国内産よりも外国産のものが多く使用されているにもかかわらず,1位の原材料の原産地しか表示されないことになると,消費者は国産の原材料が主に使用されていると誤認してしまうことになりかねない。
     そこで,複数の原材料を使用している場合には, 原則として3位までかつ5パーセント以上の原材料の表示を義務付けるべきである。5パーセント未満の原材料については,使用割合が極めて少ないので,義務表示の対象から外しても消費者の誤認を招く恐れは低いからである。
     また,特定の原材料の名称を商品名又は商品名の一部として使用する表示方法(いわゆる冠表示)のうち商品を特長付ける原材料が商品名に含まれる商品(例として,「えびしゅうまい」の「えび」,「ゆずポン酢」の「ゆず」など。)については,当該特定の原材料は消費者の関心も高い原材料である。したがって,消費者の選択を確保するためには,重量割合にかかわらず原産地を記載すべきである。
  3. 3 可能性表示,大括り表示等について
     本改正案は,義務表示の例外として「可能性表示」(本改正案第3条第2項表1の五のイ),「大括り表示」(本改正案第3条第2項表1の五のロ),「大括り表示+可能性表示」(本改正案第3条第2項表1の五のハ)を定めている。
     ここで「可能性表示」とは,使用可能性のある複数国を,使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法であり,過去の取り扱い実績等に基づいて表示されるものである(例「カナダ又はアメリカ」)。
     「大括り表示」とは,3以上の外国の産地表示を「輸入」と括って表示する方法である。
     消費者庁の平成29年3月29日付け「新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)」によれば,これらの例外が認められるためには,可能性表示及び大括り表示については,一定期間における産地別使用実績あるいは産地別使用計画からみて,国別重量順表示を行おうとした場合に,表示をしようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地の切替えが行われる見込みで,国別重量順表示が困難である場合に認められる。また,「大括り表示+可能性表示」については,「輸入」と「国産」の表示の間で表示をしようとする時を含む1年で重量順位の変動や産地切り替えが行われる見込みで,大括り表示のみでは表示が「困難な場合」に認められるとしている。
     しかし,本改正案によれば,結局のところ国別使用実績又は使用計画からみて国別重量順表示や大括り表示のみでは原料原産地表示が「困難」か否かの判断を事業者の主観的判断に委ねることとなる。一方で,行政は事後的に食品表示の適正をチェックするにすぎないため,例外表示が広がりかねず,消費者の選択を害するおそれが高い。
     以上の理由により,原料原産地義務表示に当たって例外表示を認めることには慎重であるべきである。
     仮に,事業者の実行可能性の観点から一定の例外表示を定めざるを得ないとしても,例外規定適用の判断を事業者の主観的判断に委ねるべきではなく,原料原産地の表示原則の趣旨を損なわないように,変動の程度を例外規定の要件とするなど客観的かつ具体的な要件を定めるべきである。
     また,例外表示を認める場合には,消費者に可能な限り詳細な情報が提供される機会が確保されるとともに,消費者が容易に情報を入手できる仕組みを整えることが求められる。
     そこで,消費者への情報提供として,加工食品に表示された二次元バーコード・三次元バーコードを利用して,消費者が原料原産地を表示した事業者のホームページにアクセスして原料原産地の情報を知ることができる仕組み等,消費者に可能な限りの詳細な情報を提供する仕組みを確保すべきである。
     なお,例外表示の適否のチェックを行政がしっかり行うことができて初めて適正な表示が確保できるのであるから,事業者の恣意的な運用を許さないよう食品表示の監視体制を強化すべきであることを付言する。
  4. 4 中間加工原材料について
     本改正案は,使用した原材料に占める重量の割合が最も高い原材料,すなわち重量割合上位1位の対象原材料が中間加工原材料である場合は,原則として当該中間加工原材料の製造地を「○○製造」と表示することとし(本改正案第3条第2項表1の二のイ),中間加工原材料の重量割合上位1位の対象原材料である生鮮原材料の原産地が判明している場合には,「○○製造」の表示に代えて当該原材料名とその原産地を表示することができるとする(本改正案第3条第2項表1の二のロ)。
     しかし,これでは,中間加工原材料の製造地かその生鮮原材料の原産地のうち,消費者にとってイメージの良い方を表示すれば足りることになる。そのため,あえて中間加工原材料につき,国内で製造を行うなどして国内製造との表示を行い,あたかも当該食品の原材料も含めてすべてが国産であるかのように悪用される危険がある。かかる事態は,消費者の誤認を招き,消費者の自主的かつ合理的な選択の自由の確保を害するおそれがある。
     そこで,中間加工原材料の製造地及びその生鮮原材料の原産地の双方の表示を義務付けるべきである。
     また,中間加工原材料の生鮮原材料の原産地が特定できないとする事業者に対しては,消費者の誤認防止の観点から,「原産地不明」との表示をさせた上,その理由を合理的に説明できる根拠資料を保管させるべきである。

以上

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