地方公共団体に対して公文書管理法制の実効的な体制確立を求める宣言
公文書は,「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として,主権者である国民が主体的に利用し得るもの」である(公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)1条)。のみならず,公文書の適正な管理は,行政が適正かつ効率的に運営されるために不可欠である。つまり,公文書の適正な管理は,民主主義の根幹にとって,また,その担い手である公務員にとってきわめて重要である。
このような公文書の意義に照らし,2011年4月に施行された公文書管理法は,国の公文書管理のみならず地方公共団体における公文書管理の適正化を企図して,「地方公共団体は,この法律の趣旨にのっとり,その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し,及びこれを実施するよう努めなければならない。」(34条)と定めた。ところが,現在でも,ほとんどの地方公共団体が内規で公文書の管理を定めるにとどまり,条例を制定している地方公共団体は全国で20程度しかない。
公文書管理を内規ではなく条例化することの意義は,第1に,行政内部における公文書管理に関する恣意を排除し,行政事務の適正化効率化を客観的に担保することにある。第2に,そうすることにより,議会制民主主義がより効率的に機能することにある。第3に,これと並行して,住民の知る権利に適切に応えることができるようになることである。第4に,地方公共団体にとって歴史的に価値のある公文書を確実に後世に残すことができるようになることである。そして,第5に,文書保存のための複製や住民への提供などが著作権侵害にならないようにすることにある。
このような公文書管理法制の条例化の意義の重要性を踏まえ,関東弁護士会連合会(以下「当連合会」という。)は,地方公共団体の公文書管理について以下のとおり宣言する。
当連合会は,以上の宣言を実現するために,公文書管理や情報公開法制の研究・検討をテーマとする委員会が存在しない弁護士会において,その規模や実情に応じて,新たな委員会の設置若しくは既存委員会内における部会設置など,同テーマを継続的に取り扱うための措置を積極的に検討するよう求めていく所存である。
2018年(平成30年)9月28日
関東弁護士会連合会
以上