旧優生保護法による被害者への謝罪及び補償を求める決議
旧優生保護法は,1948年(昭和23年),「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに,母性の生命健康を保護すること」を目的として制定された。そして,この法律は,「遺伝性精神病」,「遺伝性精神薄弱」,「遺伝性身体疾患」等を有している者や「癩疾患」(ハンセン病)に罹っている者たちを,強制的な優生手術や中絶手術の対象とした。その後にはさらに,遺伝性ではなくとも「精神病又は精神薄弱」に罹っている者に対する優生手術が可能となる改正がなされた。優生手術とは,精管や卵管を結紮,あるいは切除等することによって,生殖を不能とする手術である。
旧優生保護法の本質は,遺伝性疾患,精神障がい,ハンセン病等を有する人たちは社会の害悪であって,存在すべきではないという価値判断を国家意思として突き付けたことにある。このことは,対象者の自己決定権(憲法13条)及び個人が子どもを産むか産まないか,いつ産むか,何人産むかを決定する,いわゆるリプロダクティブ・ヘルス/ライツを侵害するものであり,また日本国憲法14条の定める法の下の平等に反することが明らかである。またこのような悪法が公共の福祉の名の下に行われ,優生政策を国家的政策として推し進めてきたことには驚きを禁じ得ない。
国は,優生手術の際に身体拘束などの強制手段を使うことや欺罔手段まで認めていた。このような非人道的な法律により,差別を受け,存在すべきではないと価値判断された人たちの苦痛は,想像に絶するものがある。
被害者たちはこれまで,このような不合理な差別的扱いに対して国に謝罪と補償を求めてきたが,これに対する国の反応は,当時は適法だったとの一点張りであった。
当連合会は,国に対し,旧優生保護法に基づいて実施された優生手術及び強制的中絶手術の被害者に対し,早急に謝罪し,被害を補償することを求めるものである。
以上,決議する。
2018年(平成30年)9月28日
関東弁護士会連合会
以上