関東弁護士会連合会は、関東甲信越の各県と静岡県にある13の弁護士会によって構成されている連合体です。

宣言・決議・意見書・声明等宣言・決議・意見書・声明等

平成30年度 声明

公益通報者保護法の速やかな改正を求める理事長声明

 内閣府消費者委員会公益通報者保護専門調査会(以下「専門調査会」という。)は、平成30年12月26日、「公益通報者保護専門調査会 報告書」(以下「本報告書」という。)を公表した。本報告書は、平成27年6月16日から平成28年12月9日まで、計14回にわたって開催された「公益通報者保護制度の実効性向上に関する検討会」での議論を前提に、専門調査会が、平成30年1月26日から同年12月26日まで、計16回にわたる議論を経て取りまとめたものである。
 本報告書では、①不利益取扱いから保護する通報者の範囲に、退職者や役員等を含めるべきこと、②通報対象事実の範囲に行政罰や行政処分の対象となる規制違反行為の事実を追加すべきこと、③行政通報(いわゆる2号通報)における真実相当性の要件を緩和すべきとの方向性を示したこと、④行政機関以外の外部通報(いわゆる3号通報)の特定事由に事業者が内部通報体制の整備義務を履行していない場合を追加すべきとの方向性を示したこと、⑤一定の規模を超える民間事業者及びすべての行政機関に対し、内部通報体制の整備を義務付けるべきこと、他方で、行政機関に対し、外部通報対応体制の整備を義務づけること、⑥行政通報の一元的窓口を消費者庁に設置すべきであること、⑦通報を理由として通報者に不利益取扱いをした事業者に対する行政措置を導入すべきであり、行政措置の種類としては、勧告の他に公表を行うことができることとすべきこと、⑧通報者が、不利益取扱いから保護される要件を満たしている場合、通報したことを理由として損害賠償責任を負わないとする規定を設けるべきであること等が提言された。
 上記の点は、当連合会が平成27年8月3日に発表した「公益通報者保護制度に関する意見書」及び平成30年8月23日に発表した「『公益通報者保護専門調査会 中間とりまとめ』に関する理事長声明」の趣旨に一定程度沿うものであり、公益通報者保護制度を利用しやすくし、通報者の保護を図る方向での改正であることから一定の評価ができる。
 公益通報者保護法は、通報者の保護を図ることによって公益通報を促進し、もって事業者の法令遵守を推進し、国民生活の安定及び社会の健全な発展に資することを目的とするものであるが、平成18年4月1日に同法が施行されてから12年以上が経過した現在も、大企業の不祥事が頻繁に世間を賑わせている一方で、通報者の保護が図られず、公益通報者保護制度が十分に機能していないことから、早急に同法を改正すべきことは明らかである。同法附則第2条において、「施行後5年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされていることや、調査会等において、延べ30回に及ぶ会議を経て議論が相当に尽くされていることに鑑みても、これ以上、同法の改正を先延ばしすることは許されない。
 よって、当連合会は、本報告書により改正すべきであるとされた論点については、速やかに改正に向けた作業を進め、平成31年1月に召集予定の第198回通常国会で成立させることを強く要望する。
 なお、本報告書で引き続き検討すべき課題とされた取引先事業者等を通報者の範囲に含めること、通報を裏付ける資料の収集行為について免責すること、解雇を含む不利益取扱いに関して立証責任を転換すること、事業者が不利益取扱いをした場合に対して刑事罰を導入することなどの重要論点については、不十分ではあるが、今後さらに検討を行い、より実効性のある通報者の保護を図るべきである。


2019年1月18日
関東弁護士会連合会
理事長 三宅 弘

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